昨日のこと、ドアーズのレイ・マンザレクの訃報を聴いたあと、ポストにR.E.M.『GREEN』25周年記念盤が届いていた。『GREEN』のオープニングトラック「POP SONG 89」はドアーズ「Hello I Love You」へのオマージュだと中学生の頃から信じていたので(調べていたら2つの歌のマッシュアップを作っている人がいた)その偶然に感じ入って、『GREEN』より先にドアーズを聴く。僕と同じ誕生日のジム・モリソンと僕の誕生日に死んでしまったジョン・レノンとリアルタイムヒーローのR.E.M.、どれらも中学時代に僕を真夜中に奮い立たせる音楽だった。25年とはとても長い長い時間だが強靭な音楽の魔法には賞味期間がない。
夕方から渋谷へ移動してサラヴァ東京でヒックスヴィル、Small Circle Of Friends、高橋徹也さんのライブ、“HOLIDAY”へ。思えばいつも楽しみに通っていたこの“HOLIDAY”というイベント、もう10年以上前のころの話なのだ(今回の開催が10年ぶりとのこと)。渋谷クアトロでのイベント、1階のエントランスで出待ちしてSCOFの東さんに楽曲内でのリーディングでのオファーをしたのは2001年だったか(その後それは『mono』のなかの「言葉の海に声を沈めて」になる)。10年前くらいの季節のこと、その頃の風景などをいろいろ思い出した。
アルバムでもギターを弾いていただいた中森さんをはじめヒックスヴィルの御三方とは去年から繋がり直しというか、いろんなところで頻繁にお会いするようになったのだけど、この日もヒックスヴィルにしかできない伝統芸のようなステージ、木暮さんがギターを真城さんに渡してドラムを叩きまくるトリッキーなシーンで涙が出た(楽しくて可笑しくて)。Small Circle Of Friendsのライブを観るのはそれこそ10年ぶりくらい。期せずして大好きな「LOOP SONG」が始まって時間がキュルキュルと巻き戻った。SCOFの新しい言葉を垣間見ることができて嬉しかった。来月対バンする高橋徹也さんとも久々の再会。前回お姿を拝見したのはアコースティックの弾き語りだったと思うのだけどこの日は菅沼雄太さんのドラム(『幻とのつきあい方』のあの音だ!)、荒馬のようなビンテージシンセを乗りこなす上田禎さん、そしてイベントの大黒柱とも言える鹿島達也さんを従えて迫力のあるステージでした(タイトロープを渡り歩くようなスリリングな曲調にも磨きがかかっていた…)。とても久しぶりに会う人が元気でかっこいいと自分も改めて頑張らなくてはな、と思う。会場では辻香織ちゃん、ARCHの中村さんなどとも久々に再会。
ダニエル・ラノワがプロデュースしたボブ・ディラン作品は『Oh Mercy』ばかり聴いていたのだけど、ラノワ自伝を読み進めるうちに久しぶりに手を伸ばした『TIME OUT OF MIND』がしびれるほど素晴らしくて「うむう…」と唸って耳を澄ましながら、僕の手は忙しく『新しい青の時代』をCDRにひたすらコピーしているという事務仕事の土曜日。さらにはCDがプレス工場から到着する来週のことを考えてGTHC本部の納戸を断捨離し整理整頓して在庫倉庫をシステマチックに。準備は万端である。
インディアンのラコタ族の言葉に「Mitakuye Oyasin=ミタケ・オヤシン」というのがあって、それは「All are related=すべては関連している」という意味なのだけど、この言葉を知ってから僕は点と点が繋がる不思議を心から楽しめるようになったところがある。たとえば「一角獣と新しいホライズン」に「届け冥王星の向こうまで」という歌詞を書いた後で、かつてNASAが打ち上げた冥王星探査機が「New Horizon」という名前だったということを知って、「ミタケ・オヤシン、だ…」と興奮したり。この日もそうだった。一角獣をきっかけに観にきた展示の終点の絵のタイトルは「我が唯一の望み」で、これは『新しい青の時代』に収録される「日向の猫」のなかで僕らが問い続けるフレーズであった。すべては繋がって連鎖するのだ。
SOLE CAFEに12時にイン。演奏者でぎゅうぎゅうのステージ、ボーカルだけPAしてベースはアンプから薄っすらと。ほぼ生音の演奏は僕らにとってもとてもやりやすくて快適。昨日の40分のステージとは打って変わっていつものゆったりとしたペースも心地よく、いつもはひとり語りのMCもメンバーがいると一段と楽しい。来場の皆さんにはSOLE CAFE名物の天然酵母パンをプレゼント(僕がリクエストしてナッツとオレンジピールを混ぜてもらった)。13時15分過ぎに開演。いつもはペダルスティールやエレキギターで鳴らしている歌を安宅くんのマンドリンでリアレンジ。イトケンさんもスネアドラムと小物パーカッションだけで対応。しかしそこで響いた音はとても豊かな表現にあふれていて自分でも感動するほどでした。いつも東京でやっているような五十嵐くんとえびちゃんとのやりとりなども。京都だけ特別に弾き語りで「あさってくらいの未来」を演奏しました。
“THE BANDWAGON”ツアーと題して土曜日から帰京する月曜日までの3日間。MCでも言いましたが本当ならレコ発ツアーになるべくして企画された旅でした。今から10年前に「この雨がやんだら新しい季節が傘のない二人に虹をかけてくれるかな」という歌を描きましたが、まさにこの旅は新しい季節の始まりにふさわしい、とても充実したものとなりました。一日ずつ振り返って行きたいと思います。
タイムスケジュールに余裕があったのでじゅうぶんな時間をかけて確認と準備ができたが雨はまったく止むことはない。風がないので寒くはなかったが、お客さんたちはきっと冷えた身体を抱えていたことだろう。あじさい広場から移動してきたお客さんが増えてきて16時半に山田稔明と夜の科学オーケストラの演奏スタート。「glenville」のゆったりした弾き語りから始まって「SING A SONG」まで一瞬一瞬が忘れがたく、ステージの屋根から目の前に糸をつたって降りてきたケムシとその向こうで雨を延々と降らせる灰色の空を、そして花畑のように色とりどりのレインコートを眺めながら歌いました。終演後の物販でたくさん交わした冷たい濡れた皆さんの手との握手を忘れることはないでしょう。
伊勢湾岸自動車道でふと気づくと雨はやんでいて、進行方向の空は真紅の夕暮れ。寝ていたメンバーも起きだして「すごいね」と見入るほど。10数分ほどのマジックアワーだっただろうか、世界の終わりみたいな空。そのとき偶然R.E.M.の「Half the World Away」という歌がカーステレオから。「これは僕が今まで見たなかで一番哀しい夕焼けだ」と歌われる曲。僕はひとりふるふると感動していた。そこにイトケンさんの「地震雲っぽいよね」という言葉。
すぐ京都へ移動。ものすごい夕焼けに遭遇。カーステレオからR.E.M.「Half the World Away」という歌が流れてきてひとり感動。それは「これは僕がこれまで観たなかで一番哀しい夕暮れかもしれない…」と歌われる歌、みんな車中にいて哀しくはなかったのだけど。京都の旅館は100年以上前の建物。日付が変わるくらいまで温泉でみんなでダラダラ。
ドラムのitokenさんは相対性理論、トクマルシューゴと大活躍、自身のharpy、d.v.d.も素晴らしいマルチインストゥルメンタリストです。同じ町内会というご近所さんなので普段僕がツアーに出るときはポチの世話をしてもらっているナイスガイ。安宅浩司くん自身も優れたシンガーソングライターでワールド・スタンダード、ハンバートハンバート、羊毛とおはな、中村まり等素晴らしい歌に音を添えている弦楽器奏者です。今回はペダルスティールとマンドリン含めたセットを持っていきます。五十嵐祐輔くんはfishing with johnというインストゥルメンタルユニットの主催、鍵盤ハーモニカとギターで音を添えてくれます。普段は張り子職人で可愛い招き猫を描き、名コラムニストでもある彼は今回のツアーで販売する冊子MONOLOGにも長く楽しいアルバム全曲解説を書いてくれました。ベースの海老沼崇史くんは最年少で「えびちゃんえびちゃん」と年下いじられキャラなのですが、坂本真綾、古内東子をはじめ数々のサポートをこなす頼れる屋台骨です。
ゴールデンウィークは終わってしまいましたが輝かしい春は盛りを迎え初夏に向かっています。山田稔明 with 夜の科学オーケストラが初めて東京から外に出て音を鳴らす旅、いよいよ今週末は“THE BANDWAGON”ツアーです。まず5月11日の愛知県蒲郡市での野外イベント“森、道、市場2013”は事務局販売によるチケットがすべて完売、残すはプレイガイド分のみとのことであとは天気が晴れるだけ、という感じ。遠方からいらっしゃる方も多そうです。楽しみですね。
お世話になっている家具と雑貨のお店巣巣の10周年を祝うイベントを作家・作詞家の高橋久美子さんと。僕は1月以来の、そしてアルバムが完成してから初めてのライブでした。巣巣に着くと消しゴムはんこ作家のnorioさんの実演で賑やか。イベント直前の夜に朗読の合唱をしよう、ということになってその練習を久美子ちゃんと僕、dans la natureなっちゃんと巣巣岩崎さんで。まずは僕の弾き語り、“10年”ということを脳裏に置いて眺めながらの2時間。
一般発売に先駆けて6月2日の恵比寿天窓switchのライブから会場での先行発売を行います。オフィシャルサイトでの通販もプレオーダー受付を近日中には準備したいと思っています。僕のことをずっと知っている人、このブログを読んでくれている人、前2作をわざわざ会場まで足を運んでくれたり通販で手続きして買ってくれた人は新作『新しい青の時代』も同じように一般発売よりも先にGOMES THE HITMAN.COMからの直販で買ってもらえたら嬉しいです。恵比寿の公演はソールドアウトしていますが6月後半に東京ではライブが決まっていますのでこちらの会場でもご購入が可能です(イベント詳細は4日に公開します)。