
2019年12月31日(火)@ 吉祥寺スターパインズカフェ
太陽と月のメロディー
1.ブックエンドのテーマ(『memori』)
2.夢の終わりまで(『memori』)
3.houston(『memori』)
4.ホウセンカ(『memori』)
5.baby driver(『memori』)
GOMES THE HITMAN『memori』発売によせて
2018年の八月、京都恵文社での『GOMES THE HITMAN × 山田稔明 × 高橋徹也リリース記念ライブ』にゲストとして呼んでいただき、僕はゴメスの皆さんと何曲か共演しました。慌ただしくも楽しいイベントが終わり、参加した打ち上げを途中退席する僕を山田くんが駐車場までお見送りしてくれました。
蒸し暑い京都の夜、駐車場までの道すがらいろんな話をしました。そのとき山田くんは「来年はGOMES THE HITMANのアルバムを作るんです。テーマはネオアコ。その辺のネオアコバンドがぎゃふんと言うようなのを作ってやろうと思ってて」と豪語してました。
山田くんはよく「他人の良い作品には嫉妬する」と言っているけど、僕も他のアーティストが良い作品を作ると「素晴らしい!」と思うと同時に「なんか悔しい…」となるタイプ。その夜、「それはいいねー、楽しみやわぁ」とか適当に返しながら、山田くんをはじめとするゴメスのメンバーの皆さんのことやから、きっと凄いの作っちゃうんだろうなと、まだ見ぬ作品に対してその時点で早くも“嫉妬予約”してしまう僕がそこに居ました。そしてその1年4ヶ月後、予約通り“聴くのが嫌になるほど(笑)”の作品が上がってきました。
僕と山田くんは10歳も年齢の差があるし、「ネオアコ」という独特のジャンルの捉え方にもジェネレーションギャップのようなものがあるかもだけど、この作品には音としても姿勢としても僕にネオアコやギタポを強く感じさせてくれる要素があります。ただ、そういうジャンルがどうこうという小さなスケールの話ではなく、これはもう2020年のポップスの王道だわね。誰よりも“歌”を書けるソングライターがそれに相応しいバンドと一丸になった上、さらにゲストミュージシャンをも巻き込んで2020年の日本に鳴らすべき音楽を鳴らしたと言うことか。その証拠に、世界的盛り上りを見せる日本の“City Pop”のジャンルのサブスクのプレイリストやFMラジオのAirplayにも引っ張りだことか(僕なんかがここで下手な推薦文を書かなくても、自然と多くの人に沁みていくのは間違いないです)。
14年ぶりのアルバムがここまでバンドとしてしっくりと一体感のあるサウンドに仕上がっているのは、山田くんもバンドの皆さんもずっと東京の街の空気の中で真摯に音を奏で続けてきたからなんだろうなと確信します。
さて…最後に、悔しいけど言わざるをえんか…。
「ぎゃふん」
b-flower 八野英史
こんなにも長い間、隣でただ一緒に歩いてくれる友人を、犬と猫とGOMES THE HITMANの音楽以外、僕は知らない。
幸せなことに、こうして続けてくれたことで、GOMES THE HITMANの音楽との付き合いはもう約20年以上なのかと驚いている。1997年のCDショップで最初に出会った時、ジャケットにメンバー写真がない中、バンド名は腕っぷしが強そうで、曲目を見ても “僕はネオアコで人生で人生を語る” と頑固だったので、「ハードコアバンド!?」と戸惑って視聴してみると、それとは真逆の繊細で優しい音楽性にまず驚いた。その後のメジャーデビュー作は、平坦な日常に斜めからライトを照らし七色に乱反射させたようなシティポップで、大学時代の退屈をずいぶんと救ってくれた。レコード会社移籍後は、音楽性は世界の外へより広く、世界観は自分の内面と向き合うように深くなり、まるで旅するような音楽は、社会人になった僕の心細さに「ひとりじゃないよ」と寄り添ってくれた。
そこから14年、何事もなかったように涼しい顔で届けてくれた新作。収録曲「魔法があれば」で謳われるように、あれからどれくらい生命線を歩いてこれたのか、この目盛りで計ってみよう。メモリーを語り合ってみよう。先のことは心配ない。魔法がなくたって、僕らの暮らしにはいつも隣にGOMESがいてくれるのだから。その心強さこそこれまでとの明らかな違い。空白の14年間それぞれのソロワークスを経た屋台骨の太さは、もはやほんとうにハードコアではないか。
イラストレーター・中村佑介
メンバーの4人は今頃きっと、こういうのがやりたかったんだよ、と思っているんじゃないだろうか。
アルバムの3曲目が終わり、そろそろバラード?と思っていると、違う。次の曲はバラードだろう?また違う。次の曲は?え?また違うの?というアルバム。GOMES THE HITMANの新作『memori』でバラードらしき曲が聴かれるのは、ラストから2曲目、その1曲だけだったりしている。そこで僕は思うのだ。こういうGOMES THE HITMANが聴きたかったんだよ、と。
14年前にレコーディング活動を休止する以前の彼らは、青春期からオトナへの階段を昇る青年そのままだった。“青春期”を言い換えるなら、バンド・サウンド。“オトナへの階段”は、シンガー・ソングライター的な佇まい。端的に言うと、山田稔明がオトナへの階段を昇り切った時に、バンドはその活動を休止せざるをえなくなった。
でも彼らは、オトナになった今でも、少年の心を忘れてはいなかった。少年性を取り戻すのではなく、いま現在の心持ちでかつての瑞々しさを表現できるようになった。『memori』の美しさや麗しさは、その点にこそあるのだ。
須藤のベースはかつてのレコーディングよりグンと前に出ているし、高橋のドラムスは無数のセッション活動の経験が存分に生かされている。堀越のアコーディオンが聞こえてくると、ちょっともう、涙腺が緩みそうになる。
メンバー4人の誰も、この14年の間はGOMES THE HITMANのような音楽を演奏していなかった。5年前にライヴ活動が再開され、以降は旧作の実り多いリイシューが進んだ。機が熟した時点で放たれる『memori』での躍動は、4人の清々しい想いがその輝きの背景にあることは間違いない。こういうのがやりたかったんだよ、という清々しい想いが。
宮子和眞
レコーディングに参加したGOMES THE HITMANニューアルバム『memori』いよいよ発売です!アッキー参加の2曲とタカタ参加の2曲を含む全12曲。という訳でGOMES THE HITMANとPLECTRUMの20年の長きに渡る記憶の物語をここに書き記してみよう。
出会いは最悪。
プレクトラムが『COLOMBIA』を出した2000年。確か宣伝文句に「トラッシュ・キャン・シナトラズばりの清々しさ!」みたいなことが書いてあって、それに釣られてライブにきたネオアコファンが「キミたち、全然トラキャンじゃないよね」と一言残して帰っていった。
その男こそ山田稔明!
ゴメスのボーカルだ。
悔しいがそのとき置き土産に貰ったGOMES THE HITMANの音楽を聴くと、確かにステキで私的で詩的なネオアコバンド。そりゃ指摘もするわな。ワテらナニワのギターポップバンドやさかい都会の洗練された音楽はよう出来ひん。といってもタカタは九州もんばってん。調べたら山田も同じ佐賀出身で、少し親近感が湧いた。
同郷ってことで過去は水に流し、話の流れで2001年にユニットを組むことに。ゴメス山田、プレタカタにセロファン高内シロウ&溝渕ケンイチロウ、そして名前が似てる(山田稔明と誕生日が一緒!)ということで風俗ライターの山田ゴメス氏が加わり、Mac&Wendy'sというバンド結成!山田ゴメス氏の本業多忙によりライブ2、3回で消滅したが、これが後にGAPCに繋がるのだ♩
GOMES THE HITMAN
advantage Lucy
PLECTRUM
Cellophane
それぞれの頭文字を取りGAPC(ギャーペーセー)、この4バンドでスプリットツアー開始!この時からアッキーがゴメスでサポートギターに加入。ゴメスの堀越さんがプレで鍵盤を弾いてくれたりもした。ステージの最後は4バンド総勢16人で「Roof Top Star Tripper」演奏。
GAPCがひと段落ついてまたそれぞれ自分の道へ。離れたり、近づいたり、お互いの動向は気にしつつ。山田君がレコーディングで使いたいからアコギを貸してといってきた。快く貸したら「このギター、ピックの音しかしないよね」って返された!そういう奴だ^_^
そのCDが出た後ゴメスは長い休みに入る。
須藤君、堀越さん、ケッチャンは別の現場で会ったり見たりして、ゴメスって各々すごいメンバーが集まってるんだと再確認!沖野俊太郎レコーディングでケッチャンにパーカッションお願いした時、クレジットどうする?って話になり、肩書きに「GOMES THE HITMAN」と入れる、という事でなんだか嬉しかった!
ソロ活動の時もヤマチンはたまに連絡をくれた。「いい曲できたから」とドライブに連れ出されカーステレオから出来立ての新曲を聴かせてくれる。「落ち込んでる」と言ってきた時は思う存分褒めてあげた。ネコってこんな感じなんだろなぁ。ネオアコなネコ。
今回もそんな感じでいきなり連絡が。
「ゴメスのニューアルバムで数曲プロデュースお願いできる?」
ドキドキした、が「喜んで♩」即答。その後の事はツイッターでも日々レポートしてたが「夢の終わりまで〜daydream session」は先行シングル「Baby Driver」のカップリングとして、「houston」「魔法があれば」は12月25日発売の『memori』に晴れて収録。
そういやプレとゴメスが出会うきっかけになったPLECTRUMの2000年リリースのアルバム『COLOMBIA』最後の曲は「Bookend」。そしてGOMES THE HITMAN「memori」最後を飾るのが
「ブックエンドのテーマ」これまた不思議な一致♩しかもどちらも同窓会をテーマとした曲というおまけ付き。
そんなこんなでこれまでのゴメスとプレの歴史をつらつらと書いてみました。
いろいろあったけど来年は『memori』をひっさげたツアーもあるし、これから一緒にたくさん“memory”を作って行こうぜ!なんにせよGOMES THE HITMANアルバム発売おめでとう!
完全に余談だが2009年のトラッシュキャンシナトラズ来日公演の際、タカタはローディーをやる機会がありツアーに帯同させていただいたのだ!そのとき山田との出会いの、あの言葉を思い出した。あとアコギを1965年製エピフォンコルテッツに買い換えた時も山田のあの言葉を思い出した^_^
高田タイスケ(PLECTRUM)
今年の春頃だったか。僕らがよく行くごはん屋さんでお互い構想中の新作について話をした。僕はすでにタイトルまで決めていて、それを最初に打ち明けたのが山田くんだったと記憶している。そこは負けず嫌いの山田くん。すかさず「俺もタイトルもう決めてるよ!」とくる。うわぁこいつホント負けず嫌いだなぁ(笑)と思いつつ「えっ、なになに?」と俺。「メモリ。定規とかアンプのツマミとかの目盛り。アルファベットで "memori" なんだ」と確かそんなやり取りだったと思う。
その後、お互いレコーディングが始まってからは、自信満々の日もあれば弱気な日もあったり。ただ近況報告を聞くたびに ''memori" への充実ぶりがひしひしと伝わってきた。正直ソロシンガーの自分としては、バンドをやっていることが凄く羨ましい。色々とめんどくさいこともあるだろうけど、ある種のバンドマジックというか、そういうものがあるのだと思う。マスタリング前のアルバム全曲を聴かせてもらってつくづくそんなことを感じていた。
年齢やキャリアからすればベテランバンドと言って間違いないはずのゴメス・ザ・ヒットマン。なのにこの音楽サークルの延長線上のような、知られざる80'Sネオアコバンドのようなフレッシュ感は一体何なのだろう。軽やかさと洗練さ。饒舌と沈黙。始まりと終わり。このバンドが刻んできたであろう膨大な "memori" を、少しだけ嫉妬しながら楽しみたいと思う。ヴォリュームを上げて。
14年振りのアルバム完成、おめでとうございます。
高橋徹也(音楽家)
自分や大切な誰かに良いことがあった時、何か大きな事をやり遂げた日、大好きなひととおしゃべりが弾んだ後、嬉しくなって街を歩くと足が浮いたように軽くなる時がある。風景が全て愛おしくなったりして。
世知辛い世の中で生きているとそんな気分はもちろん長く続かないのだけど、できれば一秒だって長い時間を歩幅のメモリを広くしてスキップして歩きたい。
そういう意味で、10月のGOMES THE HITMANのライブの帰り道のむぎの歩幅はだいぶ広かった。『memori』リリースの第一報を直接聞いて、ライブハウスから駅に向かう道ではその日むぎに響いた「houston」のサビを口ずさんでいました。
あれから2ヶ月経ってGOMES THE HITMANからのクリスマスプレゼント『memori』がいよいよみんなの手元に届く日がやってきました。むぎは山田ちゃんから一足早くいただいて聴くことができたんだけど、どの曲も大好きだなぁ。聴いてると歩くスピードが自然に変わるんだもん。
明日からきっと歩幅の広い人が街に増えるんだろうとむぎも今からワクワクしています。みんなで街にメモリを刻もうぜ!メリークリスマス!
むぎ(猫)