2月になりました。ちょうど一年前の今頃は『ripple』のジャケット写真撮影のためにカリフォルニア撮影旅行だったわけです。ジャケット写真に採用されたのはLAから4日のドライブで辿り着いたバララット(Ballarat)というゴーストタウンでした(人がひとりだけ住んでいる)。この日の日記には以下のように書いてあります。
『夕方前にBallaratに到着。お店が一軒、星条旗がはためいている。恐る恐る近づくと大きなおじさんがかなり訛りの強い話し方で「温かいコーヒーはないが冷たいドリンクならある」。コーラを1ドルで買ってトイレを借りる。怖そうに見えたおじさんはこの町の歴史やこの町より山ひとつ向こうにあるPanamint Cityというゴーストタウンの話や水害でたくさんの人が死んだ話をした。孤独に暮らしていて、たまの来客が嬉しくて饒舌になっている感じだ。統一感のないがらくたに見えるようなものを陳列して売っている。銃弾がたくさんあってそれを僕らの手のひらに乗せ、今度はショーケースのなかに入っている一番大きな銃を触らせてくれたがひんやり重く気分が悪くなる。おじさんの店から少し離れたところに放置されたピックアップトラックを指差して「あれはチャールズ・マンソンが乗り捨てていった車だ」という。映画「イージーライダー」の冒頭シーンにこの町は登場するらしい。僕らは喋り足らなそうなおじさんを背中に感じながら撮影場所を探した。』
結局『ripple』というアルバムは表面がこのバララットの看板がわりの道しるべにたたずむ猫、裏面が街を背にするとどこまでも続くドライレイクで風に飛ばされそうな猫、という装丁になりました。僕は小さな目標として『ripple』のCDとポスターを持ってもう一回バララットに挨拶に行くのを夢見ています。そして明日にでも叶えたいのはあの日の、夢のようなフレンチトーストの朝食を食べたい、ということです。