1964年大御所ジョン・フォード監督最後の西部劇となった「シャイアン」を観た。これまで勧善懲悪(白人が善で姑息なインディアンが悪)の名作を作り上げてきたフォードが晩年に撮ったのは横暴な白人によって滅ぼされようとする少数派民族の悲哀だった。
「合衆国のインディアン政策によって、シャイアン族は居留地に押し込められていた。だが合衆国の約束した物資は一向にとどかない。餓えと病で多くの仲間を失った彼らは、元のイエローストーンへ戻ることを決意する。しかしその行動は反乱行為とみなされ、騎兵隊による討伐の目標となってしまう...」というあらすじ。
史実に基づいた大枠とインディアンが英語で話さない(交渉時だけ英語が使えるものが代表でしゃべる)というリアリティと時代を超越したアメリカの荒野の風景が相まって2時間半の長尺も気になりませんでしたが、とにかく圧倒的に悲しくなる映画でした。
インディアンの子供にアルファベットから英語を教える親先住民派クエーカー教の女性教師にインディアンが「白人はウソばかりつく。嘘つきの言語を子孫たちに教えてほしくない」と登校を拒否させるくだりがあって、それに対し女教師は「言葉じゃなくて、心の問題なのよ!」と言い返すのですが、「言葉は心を越えられない/言葉より先に心がある」というのはいつの時代も変わらないなあ、と思った。