2008年06月05日

長谷川きよし公開レコーディング

abs雨降る渋谷へ。そういえば渋谷パルコで「ナンシー関 大ハンコ展」がそろそろ、と覗くも翌日からの開催で残念。人が溢れるハチ公口で待ち合わせて恵比寿へ。

京都神戸名古屋とさんざん歌を歌って東京に帰ってきた次の日、知人の誘いで長谷川きよしさんの、観客を招いてのコンサートレコーディングを観にいく。

降り止まぬ雨のなか会場へ。その会場となるのはかつてBMG時代のある時期すべての録音を行っていた地下のスタジオに隣接する小規模なホールで、ライブパフォーマンスの苦手だった僕の特訓の場だったり、その音の響く環境を利用して「ねじを巻く」を録音したセッションだったり、いろんな思い出が渦をまくシチュエーション。

長谷川きよしさんは1960年後半から活動されているシンガー。定刻を少し過ぎてあらわれた長谷川さんはフォークギターではなくナイロン弦のガットギター。音叉を膝でポーンと打って丁寧にチューニングをして始まった音楽はとにかく芳醇で、弾き語りの独奏なのにベースとリズムとメロディとがすべて鳴っている。

オープニングはジャズスタンダード「Fly Me to the Moon」。歌も力強く歌い出しの「Poets often use many words to say a simple thing(詩人はときにシンプルなことを言うためにたくさんの言葉を使うのだ)」という僕の大好きな詩が聞こえてきて少し震えた。テープが回っている!というピンと背筋の伸びるような緊張感が会場を包んでいました。

昔を振り返って「'70年代のフォークブーム以降、ギターを弾いて歌う人はみんなフォークシンガーと言われて僕もそうでした。フォークはほとんど歌ったことないんですけどね」と穏やかに話す長谷川さんの音楽は“シャンソン”というカテゴリーに当てはまるのだろう。僕が長谷川きよしさんについて事前に知っていたのは40年のキャリアを誇る全盲のシンガーソングライターであるという情報だけだったのだけども、この日僕が初めて聴いた歌とギターが奏でる音楽は、もうシンプルに“うた”と呼べばそれで済むくらい説得力のあるもので、空気のヴァイブレーションをライブ録音でCDに閉じ込めようというこのライブは必然的な試みなのだな、と思いました。



この日を含めて2日間行われたライブレコーディングは9月に小西康陽氏のコロムビア*レディメイドレーベルからリリースされるそうです。ステージの様子を小西さんも見守っていらっしゃった。1990年代に僕はピチカートファイヴをたくさん聴いて様々な音楽を知り、そして90年代の終わりにはこのホールと同じフロアにあるスタジオで自分のCDを作ってキャリアが始まったのだ、ということがとても象徴的で、2時間のライブの間、音楽に集中しながらも目をつぶっていろんなことを考えたり思い出したりしていた。

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Posted by monolog at 00:02│Comments(0)TrackBack(0)

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