僕が好きなアメリカの音楽や映画のなかでもたびたび表される“Christianity(キリスト教信仰)”には前々から興味があって、今年は特に映画「イントゥ・ザ・ワイルド」を観たときに感じた精神的ギャップを埋めるものが“それ”なのではないかと考えていたので、初めて足を踏み入れた教会には何とも言えない空気が漂っていました。
賛美歌、オルガンの音、参列者の声。35年も生きてきて知らなかった、おそらくずっと変わらず連綿と続いてきたであろうしきたりに厳かな気持ちになったのです。司祭のお説教、「ギブ&テイクではなく、ギブ&ギブなのです」という言葉が印象的でした。
テレビが「不景気だ不景気だ」と繰り返しているうちになんとなくニュースを見るのがつらくなってきて、この“不景気”が自分自身とどれほど直接的に関係あるものなのかを考えている。僕は大学を卒業してついた映像の仕事は自分の意志で辞めているし(メジャーデビューするから退社させてくれ、という僕に社長は2年間の休職でもいいじゃないかと留めてくれようとした。2年間のメジャー契約だったからだ)、アルバイトだって自分勝手な理由で辞めてきたから解雇という言葉とは無縁のような気がしていた。
けれども全然そうじゃなくて、はて、この10年の間に僕はいくつのレコード会社に採用されて解雇されてきただろうかと考えると上昇と下落の連続だったような気がします。パーフェクトに景気の良い季節はなかったしピークがどこかもわからない。残ったのは人との繋がりと自分の音楽に対する10年分の自信と確信です。
この繰り返し鳴らされる“不景気”という警鐘は、これまでのほほんと「なんとかなる」と思っていた気分を「なんとかする」という気分にシフトするための、いくつものタイミングのなかのひとつなのだな、と強い風が吹くのに心は静けき真夜中にぼんやり思ったのです。2008年という1年を振り返ってもきっとそういうタイミングなのだろうな。