しかし改めて「家路」の楽曲たちに手を加えていると音楽の優しさに心が柔らかくなっていく。自分が作った曲なのに、だ。イトケンさんのドラムと安宅くんの弦楽器が足されたぶんだけ“まろみ”のようなものが増えたのかもしれません。これは予想以上に大きくあたたかいアルバムになるような気がします。
先日のライブのアンケートに「『pilgrim』のなかの楽器は全部山田さんが演奏されたのですか?」という質問があったのでお答えすると、ほぼすべての楽器は自宅作業部屋で録音され、ほぼすべてのプログラミングも同様に僕が四苦八苦しながら打ち込んだものです。
それをベースに共同プロデューサーのYAMACHI氏の作業場で音色を差し替えたり足したり引いたりボーカルを再録したりエレキをダビングしてもらったりしています。「ONE」に関しては俯瞰的客観性が必要だと感じたのでアコギ以外は全部YAMACHI氏に託したサウンドになっています。これまで『pilgrim』ほどコーラスを重ねたレコーディングはありませんでした(楽しく苦しい作業だった)。「harvest moon theme」と「ユートピア」で聞ける皆さんの大合唱以外はすべて僕の声です。
夜、NHKを観ていたら国際宇宙ステーションきぼうから生中継をつないでいた。とても鮮明な映像。窓からの景色が美しくて太陽光線がさして船内に光と影ができているのが印象的でした。「風のない世界には/ほら、答えがないみたいだ」という歌詞を聴いて「ボブ・ディランだね」と長門芳郎さんは目を細めて笑ってくれました。