
この、「実感がわかない」という言葉にはネガティブな意味だけではなくて、とてもいろんな感情と印象が含まれる。そもそもの始まりが『home sweet home』に収録されている「星降る街」がエンディング曲として採用される予定が急遽書き下ろしの新曲を、ということになったから僕はこの曲を12月の「夜の科学」終了後に2日かけて書いたのです。ここ最近でここまで書き始めから完成までが短かったのは稀なので“実感”がない。
そのときは「魔法(仮)」と呼ばれたピアノとギター、ドラムとベースに歌とコーラスを3つ入れた簡単なデモを『pilgrim』『home sweet home』の共同プロデューサーであるYamachiさんに託した。僕は並行して劇中音楽の作業もしていたからYamachiさんに「僕のアコギもなにもかも全部塗り替えてもらって結構です」と丸投げした。相当の信頼関係がないとできないことだが、この歌はそういうプロダクションにするのが最適だという予感があったのです。
果たして数日後、カンヅメ作業でクタクタの僕のところへYamachiさんから途中経過が届きます。「なんか、すごく“山田稔明”って感じじゃない?」という言葉通り、『pilgrim』『home sweet home』を経たその先の音が。自分がひとつも楽器を演奏していない歌はこれが初めてじゃなかろうか、というところでも“実感”が不思議な転調を起こしているのです。
Yamachiさんのスタジオで若干風邪気味の声で歌入れをして完成したのはクリスマスイブのことでした。今回は配信リリースなので詳細なクレジットなどがつきませんが「ひそやかな魔法」は僕とYamachiさんの3年目の新しい化学反応です。
iTunes storeなどで発売される「ひそやかな魔法ep」には劇中音楽が3つ入っています。どれもアコースティックな響きの可愛らしい音楽たちです。「dragonfly」という曲を監督さんにとても気に入っていただき追加録音再編集してあります。もう一曲「beat it black」という、一番時間のかかった劇中歌があるのですがそれは「ひそやかな魔法ep」に含めるのは本意ではない、という僕のわがままを聞いていただきました(映画のなかだけでお楽しみください)。
いつか「ひそやかな魔法」もCDやレコードなどかたちあるものにして手で触れたいですね。それまではデジタルデータでみんなのパソコンや、もっと身近にiPodやiPhoneや携帯にいれて持ち歩いてください。春のライブではこの歌を歌いますのでライブ会場で、「手に入れました!」とiPodや携帯を僕に提示して見せてください。ハイタッチで応えます。
iTunes
mora
「ひそやかな魔法ep」(配信限定)
2011年3月9日(水) Digital Release
1. ひそやかな魔法 [映画「ナナとカオル」主題歌]
2. after school(ナナのテーマ)
3. C major instrumental(カオルのテーマ)
4. dragonfly(ナナとカオルのテーマ)
3/9から「ひそやかな魔法 ep」4曲 iTunes、moraにて配信
3/9から「ひそやかな魔法」着うた(R)、着うたフル(R)レコチョクにて配信