2012年04月24日

わたしとTHE WHO




昨日のこと。ロジャー・ダルトリーがTHE WHOの1969年『TOMMY』を完全再現するというコンサートを観に出かけました。数年前のシガー・ロス以来の国際フォーラムに着くと齢を重ねたモッズの方たちやユニオンジャック柄の服を来た人たち、そして仕事帰り風の中年男性の姿が多くてなんだかワクワクして楽しくなってきた。音楽っていいものだな、いつもあの頃に引っ張り戻してくれる魔法の振動なのかもしれないな、とか思いながら。

僕がTHE WHOを始めて聴いたのは中学生のころで、「ふーくん」というニックネームの、やんちゃで不良なクラスメートが「おい山田、ばりかっこよかCD買うた!」と興奮して貸してくれたのが『Who's Better, Who's Best』というベスト盤だった。きっとふーくんも「ざ・ふー」という名前の響きに惹かれただろう。僕にとって“ふーくん”が貸してくれた“The Who”という記憶の始まりを25年経っても忘れない。中学生の僕らは「これもしかしたらビートルズよりかっこよかっちゃなか?」と宝物を見つけたように大騒ぎしたのだった。

果たして始まって繰り広げられたのは、まごうことなきロックコンサートでちゃんとやかましくて68歳になるというロジャーの派手なアクションとダブルタンバリン、『TOMMY』をMCなく完全再現した後はTHE WHOのヒットナンバーを惜しみなく披露、僕の好きな「Kids are Alright」も聴けました。去年の震災を気遣うMCもとても心のこもったものだった。

九州の片田舎でThe Whoに耳を澄ましていた中学生の僕がその25年後に東京でその歌を聴くことになるとは思わなかっただろう。最近歌うたいは本当に体が資本だと痛感する。もはやThe Whoの半分が亡くなって、ピート・タウンゼントもずっと耳の病気を患っているなかでマイクロフォンをぐるぐる回しながらお客さんの期待に応えるロジャー・ダルトリーの姿を見て背筋の伸びる思いがしました。ロジャーはお客さんに向かって言った。「Who are You? We are You!」と。そのときの会場の盛り上がりがクライマックスだった。

この4月、僕のカバンのなかにはずっとオペラグラスが入っていて、熱唱する小沢健二を見つめ、安波山から気仙沼の街を、そして陸前高田に立ち残った一本松と流された5万本以上の松を凝視し、そして昨晩はロジャー・ダルトリーの勇姿を眺めたのでした。期せずして、写真には留まらない、映らないものを目で見る一ヶ月となりました。

Posted by monolog at 10:58│Comments(0)TrackBack(0)

この記事へのトラックバックURL