



春からずっと楽しみにしていた8月16日。作曲期間という名の1ヶ月のさぼりシーズンを過ごしたここ数年と異なり今年の夏は毎週末にライブ、並行してレコーディングとバタバタ動き回っているので一日だけ夏休みを満喫するのはこの日だと決めていました。お盆休みの都内の道路は空いていて首都高も快適、夏を折り返した青と白のマーブリング模様の空。千葉幕張のQVCマリンフィールドまでアメリカとビーチ・ボーイズを観にいきました。
まだ日差しの強い夕方にスタジアムに着くと星野源くんの気持ちのいい歌が風のように流れていて、とても気持ちよく「くだらないの中に」という僕の好きな曲がレコードで聴くよりももっとスケールの大きなラブソングに昇華する風景を目撃する。僕の席はうまいこと西陽の日陰だったので椅子に深く沈み込んで贅沢な音楽の振動を青空を眺めながら聴いていました。
中学1年のときに親戚から段ボール数箱のLPをもらった。それは70年代後半アメリカに留学していた人から譲り受けたものだったのだけど、その箱のなかにPOCOやSTEVE MILLER BAND、JACKSON BROWNEなどと一緒に入っていたAMERICAというグループの『アメリカの歴史』という邦題のベストアルバムを文字通り擦り切れるほど聴いた。その後もずっと、大人になってもずっと思い出したように聴くほどだから、今回のビーチ・ボーイズ公演のゲストがAMERICAだとアナウンスされたときに卒倒しそうになった(長門芳郎さんの提案が実現したとのことでした)。
果たして始まったAMERICA。ダン・ピークは去年亡くなってしまったけれども、颯爽と登場したジェリー・ベックリーとデューイ・バネルは若々しく、なんというか、とても現役感があってワクワクする。1曲目「Tin Man」からずっとシンガロング。わりとセットリスト早めに「風のマジック」という曲が演奏され、これは『アメリカの歴史』には収録されていない、僕にとっては馴染みの薄い'80年代の佳曲なのだけど、僕より世代が上の加古川チャッツワースの岸本さんと話したときに「アメリカと言えば『風のマジック』だよね!ジェフ・ポーカロとかスティーヴ・ルカサーが参加してて..」と盛り上がっているのを見て、キャリアのなかでいくつものハイライトを作りながら長く活動するということの力強さを感じたのでした(で、岸本さんに「今まさに『風のマジック』やってますよ!」と報告)。
そしてやはり生で聴く「Ventura Highway」は感動的で、初めてロサンゼルスに行ったときにヴェンチュラ・ハイウェイを見たいとコーディネーターの方にお願いして車を走らせてもらったこととかをスクリーンの映像を眺めながら思い出して聴いた。「黄金の髪の少女」なんかもそのエバーグリーンさは出色、ああオレもうこれで今日は満足だなあなどと思いつつ、ベトナム戦争やフラワーパワー、公民権運動などの映像を背景にレコードよりもハードに演奏された「Sand Man」に今までに感じたことのなかったシリアスさを感じたり。途中突然クリストファー・クロスが登場して「Lonely People」を歌うシーンもあり、あっという間の90分でした。気付くと夕暮れ。いよいよ次はビーチ・ボーイズの登場。この続きは次回に。(続きの記事はこちら)