
いよいよやってきた年末恒例の“夜の科学”1日目。どれだけ準備しても準備が終わらないといういつもの風景。事前のリハーサルも五十嵐くん抜きで行なっていたので早めの会場入り。福岡のホテルで鍵盤ハーモニカを練習していた彼もようやく楽団の一員となり、今回のクリスマス曲合奏はとてもいいものになるという確信が。リハーサル途中で大きな地震、演奏を中断してラジコを起動したりTwitterで情報収集したり緊迫する。不謹慎かもしれないが選挙を前にして喝をいれられたような、大きな揺らぎ。
電車のダイヤの乱れもあり少し遅めの開場と開演。スクリーンにはずっとポチのどアップの映像。寒くてこわばった皆さんの緊張を少しでも解きほぐせたかしらニャ?とは日向で寝そべるうちの猫の弁。オープニングの出囃子はザ・ハウスマーティンズの「Happy Hour」、今回のイベント副題を思いついたときから頭の中で鳴っていた歌。幸せな時間は何度でもやってくる(If you want it)。


「他愛のない幸せがクリスマスの夜みたいに」誰の街にもやってくると歌われる「どこへ向かうかを知らないなら...」で始まった演奏は年末恒例のおしゃべりで合間を埋められながら進行。「光と水の新しい関係」の安宅くんのソロにはしびれた。恒例の感謝祭くじ引き最初の賞品は僕の部屋から飛び立った「Bob Dylan賞」「読書賞(アップダイクの本と詩集「今日は死ぬのにうってつけの日」)」など。
『Christmas Songs』からの楽曲をバンドでセッション。一人で音を重ねた音源に新しい命を吹き込むような作業。一人で演奏するより何百倍も楽しい。聴いている皆さんもそう感じただろうか。いい年をして一生懸命クリスマスの祈りの歌を奏でるのもなかなかいいものだ。まだ年内に何度も歌えると思うと今年の冬はいつもよりも楽しいな、と思う。
くじ引き。エビちゃんはリップクリームを塗りながらいつものお笑いDVD(今年は「すべらない話」を2本)をエビちゃん賞として出品、そして後々まで語り継がれることになる五十嵐賞は福岡で買ってきたマルタイラーメンプリッツ。楽屋で「一個あけようぜ」とみんなで食べてみて「うん…普通のプリッツやんね」と微妙な反応だったものが5人に当たり、配給に並ぶ市民たちのような原風景を垣間見た。レアアイテム賞として夏にトラベラーズノートに作ってもらったオリジナルノートとひとつしかないクリスマスコーヒー缶の色違いサンプルを。


それにしてもこの日の演奏、僕は終始気持ちがよくて実はひどい風邪を引いたあとだったのでノドのことが心配だったんだけど全然気にならなくて心と声が一致するような夜だった。「the first noel」を歌うと自分が聖者かなにかになったような気がしたし「やまびこの詩」ではみんなを光の射す方へ連れていく羊飼いのような気分にもなった。安宅賞はなんと“鯛焼き”という、クリスマスを度外視した実用的なもの。ライブ当日になにかいい賞品がないかとレコード屋を物色していたときに「・・・贈り物をあげる相手がお客さん以外にいるじゃないか」と僕にレコードを差し出してくれた。今年最初の誕プレは安宅くんからの“ハニードリッパーズ”。この日は山田と書いて「サンタ」と読む、奉仕の気持ちでいたので思わぬサプライズに歓喜。
会場入りしてすぐ「ハンダごてありますか?」とゴソゴソやり始めたイトケンさん、賞品に持ってきたアイテムが故障していたのを完璧に修理するその理系ぶりに“らしさ”を感じました。イトケン賞はカエルのマッサージ機など。配信リリースなどでお世話になっているVAPからも賞品を。そして僕が絵付けした“だるま”、猫だるま賞も1名様にも。この頃には五十嵐くんのいつものプリッツの味がするマルタイラーメンプリッツは記憶の彼方にあって、それを引き戻そうと必死な彼を片目の猫だるまがそっと眺めていました。


「光の葡萄」を歌っているときが個人的にこの日のハイライトだった。とても大きな愛しい歌になりました。「hanalee」もそうだけど、嗚呼よくこんなすごい歌がかけたものだな、と人事のように思ってしまう。早くみんなにいつでも聴いてもらえるようにしたいです(神様!)。バンドでやる「あさってくらいの未来」もすごくいい。一等賞の賞品は今年もウクレレ。幸運を掴んだ人ひとりのために「きよしこの夜」を朗々と演奏しました。


そしてこの季節恒例の「sweet december」はそのまま山下達郎「クリスマスイブ」へ。「聖者の行進」で喜びも悲しみも見送って「ハミングバード」で終演する完璧な夜でした。この日はswitchを辞めたスタッフたちも勇んで参加してくれてPAと照明で力を貸してくれた。同窓会のような雰囲気。忘れられない38歳最後の演奏となりました。ご来場の皆様に心から感謝を。
