2013年02月03日

Song of the Week vol.4 “WITH OR WITHOUT YOU”

マキタスポーツ氏が上梓した「一億総ツッコミ時代」のなかで“メタからベタへ”と標榜される記述があった。俯瞰的に評論するよりがむしゃらに夢中になって出来事に直面しようという意識改革。4回目の“Song of the Week”は僕にとって極めてベタな、1987年のU2を取り上げてみたいと思います。前回のスザンヌ・ヴェガ『孤独』と同じ1987年リリース、この年は僕の人生を変えたR.E.M.の『DOCUMENT』が発表された年でもあり、僕はそのとき中学2年から3年という“中二病”をこじらせている季節である。

先日WOWOWの「洋楽主義」でU2特集をやっていて見入ってしまった。特に1987年の『The Joshua Tree』というアルバムはプレイボタンを教えてから最後の曲がフェードアウトするまですべての瞬間を記憶している(歌も全部歌える)。ある時期からのアントン・コービンが撮ったスチールや粗いフィルム画像は中学生の僕にとって彼らを“神的”なものに見せたそれであった。モノクロのBONOの写真をコピー機で巨大に拡大して壁一面に貼っていた僕の部屋、それを見て「あんたの好いっとっとは“ウニ”っていうグループやろ?」と僕をからかいながらも初めて息子が熱中するバンドの名前を認識したうちの母親、高校をサボって佐賀から大阪城ホールへ来日公演を観にいきたいと訴えた僕の想いをなぜかわざわざわ母は担任の先生のところまで伝えにいき学校公認で出かけていったコンサート。どれも“夢中”のなせる技でした。

今あらためて考えると僕はこのアイルランド出身のU2の『The Joshua Tree』と続く『Rattle and Hum(魂の叫び)』、そして藤原新也の「アメリカ」という本を読んでアメリカという国に強く惹かれていったことになる。久しぶりに爆音で聴いた『The Joshua Tree』は時代を越えて僕の心に“ベタ”に響いてきました。「WITH OR WTHOUT YOU」をアコギで静かに、そして徐々に盛り上がって熱く絶唱しました。弾き語りに合わせて“もう一人の分身”がサイドギターとコーラスを添えるというコンセプトで、freewheel 手塚雅夫氏にミックスしていただきました。





“WITH OR WITHOUT YOU”

See the stone set in your eyes
See the thorn twist in your side
I wait for you

Sleight of hand and twist of fate
on a bed of nails she makes me wait
and I wait without you

With or without you
With or without you

Through the storm we reach the shore
You give it all but I want more
and I'm waiting for you

With or without you
with or without you
I can't live
with or without you

And you give yourself away
and you give yourself away
and you give
and you give
and you give yourself away

My hands are tied
My body bruised, She's got me with
Nothing to win and
Nothing left to lose

And you give yourself away
And you give yourself away
And you give
And you give
And you give yourself away

With or without you
With or without you
I can't live
With or without you

With or without you
With or without you
I can't live
With or without you
With or without you


“WITH OR WITHOUT YOU”

君の瞳に湛えられた石
君のそばで踊るイバラの刺
僕は君のことを待っている

手先の早業、運命のいたずら
針のむしろの上に僕を置き去りにした君を
君のいない場所で僕は待っている

君がいても いなくても
君がいても いなくても

嵐を切り抜けて対岸へ辿り着く
君はすべてを差し出すけど僕はもっと欲しがって
今もまだ君を待ち続けているんだ

君がいても いなくても
僕は生きていけない
君がいても いなくても

君はすべてを投げ出した
君はすべてをさらけ出した
何もかもすべてを
投げ放ったんだ

僕の両手は縛り上げられ
体は傷だらけ
勝つすべもなく失うものひとつ残らないほど
彼女に打ちのめされた

君はすべてを投げ出した
君はすべてをさらけ出した
何もかもすべてを
投げ放ったんだ

君がいても いなくても
僕は生きていけない
君がいても いなくても

(訳 山田稔明)



とても熱心に音楽を聴いていた頃、それこそ“中二病”の頃に夢中になった音楽は今でも歌詞を完璧に覚えていて、この歌もそういう1曲なのだけど、正直言うと僕には「WITH OR WITHOUT YOU」の意味が今でもいまいち掴めない。「君なしでは生きていけない」ではなくて「君がいてもいなくても生きていけない」というのは絶望の言葉なのか、あるいは至上の愛の言葉なのか。それは歌う者と聴く者の心が決めることか。

8ビートで刻まれる「D-A-Bm-G(I-V-VII-IV)」というベースラインが支えるサウンドをロック/ポップスの定番にしたのはこの歌かと思います。静かな立ち上がりから徐々に盛り上がるところはもしかしたら「Smells Like Teen Spirit」に結実したという行き過ぎた考察もできるかもしれません。ウルリッヒ・シュナウスの「...Passing By」、テイラー・スウィフトの新譜にもU2マナーな歌、僕も『pilgrim』収録の「ONE」というでタイトルとサウンドにU2へのオマージュを忍ばせました。『ripple』の撮影でカリフォルニア郊外のデスバレーを彷徨ったときも僕の脳裏には『The Joshua Tree』が流れていたことを憶えています。


Posted by monolog at 10:55│Comments(0)TrackBack(0)

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