2013年04月13日

袂を分かつ野良の虹



昨日のこと、夕方から渋谷へ出かけた。堀込兄弟=キリンジとしての最後の夜。キリンジの初めてのCD(キリン柄の)を聴いたときの衝撃は忘れられない。奇跡のような日本語ポップスに打ちのめされた。その後GOMES THE HITMANでインディーズで初めてのアルバム『down the river to the sea』をリリースした一ヶ月後の1998年5月にキリンジ、Swinging Popsicleを誘って“3 label one night only”というライブを企画、それが僕にとって初めての渋谷クアトロのステージだったのだけど、兄弟ふたりが手練なサポート陣を背負ってレコードを再現しようとする緊張感のあるステージをリハも本番もずっと観ていたことを憶えている。

当時ライブでの舞台監督さんが同じだったということもありキリンジの20世紀の終わり頃のライブを何度も観させてもらった。MCで話すべきことを紙に書いてあって泰行くんがそれを「あー、」と言いながら読むというシーンも懐かしい。15年くらい前の話。気づけば随分と長い時間が経った。4時間にも届きそうなあれもこれも全部入りのキリンジの歴史は圧倒的で、そのメロディと言葉の“幸せな結婚”を見せつけられて「ああ、やっぱり奇跡的だ」と思い知る。

僕が好きな、思い入れのある歌は初期の頃に集中するのだけど「さよなら また会おうね」と歌われる「野良の虹」のときに胸にキュッときて以降はもうただ楽しくて、耳が幸せで、2階の真ん中あたりくらいの席からオペラグラスの右側に高樹さん、左に泰行くんをスコープして眺めたり、突然柑橘類に物申し始めたりするMCも可笑しくて、バンドスタイルも完成形、純粋にとても素晴らしいコンサートだった(なにより満員のお客さんの反応が美しかった)。

終演後の挨拶では高樹さんも泰行くんもニコニコしていて、センチメタルの欠片もなく、それも含めてとてもキリンジ的だなと感じる。会場で久しぶりに会った知人が「ずっと終わらないものっていうのはないのかねえ…」と溜息をついたが、終わったらまた新しいことが始まっていくのだろう。物語の始まりにはちょうどいい季節が。袂を分かつ二人と照れくさくも硬い握手を交わしてNHKホールを出たのは23時半、僕は久しぶりに新しい歌を作りたくなっていました。

Posted by monolog at 10:13│Comments(1)TrackBack(0)

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この記事へのコメント
二人が真摯に音楽とファンに向き合って、
ファンもそれに答えたいと思ったからこそ
あの美しい空間が出来上がったんでしょうね。
私もあの場にいられて本当に幸せでした。

二人のひょうひょうとした態度に脱力しつつ、らしさに安心もしました。

山田さんの新しい歌も楽しみにしています。
Posted by みや at 2013年04月14日 00:41