




昨日のこと、暑い暑い日。お昼過ぎから渋谷へ趣き、パルコミュージアムの「ピカソ 愛と芸術の版画展」を観にいく。今年が没後40周年とのこと。奔放で無邪気なリトグラフは情熱的であると同時にとてもポップで“かわいい”とすら感じる。ピカソのなかの“永遠の子ども”の感性が描き散らす落書きのよう。予想以上の数の版画を楽しみました。『新しい青の時代』というアルバムタイトルにはピカソの「青の時代」を下敷きにしていることもあって、今年の夏のステージで僕は青のボーダーシャツを着てピカソへのオマージュを敢行中。とにかく暑い日で渋谷公会堂の気温計も35度。アイスコーヒーが命の水。パルコのなかで聴いたサイレンが緊急地震警報(の誤報)だったことを後で知る。とても不穏な心がざわざわする音だった。
目黒に移動してお誘いいただいた佐野元春「フィルム・ノー・ダメージ」を公開に先駆けて目撃する。佐野元春27歳、80年代初期の若き情熱を映した1983年に数度上映されただけの奇跡のドキュメンタリーがレーベル倉庫から発見されデジタル・リマスタリングで9月に全国ロードショーされる。とにかく効きのいいバネのように、早回しのように跳ねまわる若いボーカリスト、それを全力で支え刺激しあう雄弁なバンドメンバー、途中で挿入される道路の映像と重なって全員でまだ見ぬにどこか向かって一心に進む旅団のように荒々しく見えた。5.1chに編集されたサウンドもとても“ライブ”で圧倒的だったのは、そこが音の良さで定評のある試写室だったことだけが原因ではないだろう。息もできないくらいの、30年の時を越えたステージがスクリーンで繰り広げられ、僕は心から感動したのです。
その日は音楽関係者のみの試写だったようで狭い部屋には伊藤銀次さん、ダディ柴田さん、古田たかしさん、里村美和さんと当時のバンド THE HEARTLANDの面々、ナイアガラ繋がりの杉真里さんもいらっしゃって錚々たる先輩方を前に上映が終わってもぴりっとした緊張感を感じつつ、僕もいつまでも若く長く音楽をやめないで続けていこうと静かに誓った夜でした。つまらないオトナにはなりたくない。9月7日から全国で公開されます。