




辿り着いた広島空港、多分僕がこの空港を利用するのは初めてだろう。風が心地よく暑くもなく寒くもない快適な気候。今回の旅は加古川の英国紅茶のお店チャッツワースの岸本夫妻が車でアテンドしてくれることになって、空港で合流。岸本さんたちは6時半出発、僕も5時半起き。まず向かうのは尾道を一度通りすぎてから鞆の浦(鞆地区)という街。



鞆の浦は最近「ウルヴァリンSAMURAI」のロケが行われたそうで、映画館の予告を見て「なんだこの騒々しい映画は」と思っていたのが俄然興味が出ました。そして何よりこの街は「崖の上のポニョ」の舞台の街のモデルになった場所なのですね。いたるところにポニョ?金魚?がいました(なんと宮崎アニメに疎い僕よ!)。そして猫にもたくさん遭遇。水面と地面が近い街、どんどん天気が良くなってきて光が乱反射する様は目に鮮やかで、また改めて「光と水の新しい関係」を更新させることになるかもしれません。龍馬が乗っていた「いろは丸」もこの辺りに沈んだのか資料館などがあり、かなり楽しい街歩きができました。鞆の浦は船の街。今回尾道でのライブには“BON VOYAGE!”というイベントタイトルがついていたのだけど、その言葉の意味が繋がってハッとしました。



鞆の浦から尾道へ向かいます。尾道は2010年の初夏に広島でのライブの後にふらっと遊びにいったのが初めての訪れで、そのときもチャッツワース夫妻と一緒だった。あてもなく細い坂道を登って「時をかける少女」のロケ地に遭遇したり、僕はその日の記憶がきっかけで「平凡な毎日の暮らし」を書いた。そのときにはまさかチャッツワースで原田知世さんと伊藤ゴローさんのライブをやることになるなんて思いもしなかったな。
前回来たときはノーチェックで(しかも疲れすぎてて)登ることができなかった千光寺山へ。もちろんロープウェイだ。山の高さはたったの144メートル、頂上への所要時間も3分と短いが、千光寺山ロープウェイは急勾配の具合がすごい。良い角度。古い街並と船工場と海、瀬戸内海の多島美を愛でながら登る。「曲がりくねった坂道、石畳。振り向けば海を見下ろす月明かり」自分で書いた歌がぐるぐると頭で鳴る。頂上では猫が2匹、愛らしい顔で迎えてくれた。やあ、君はさっき会った猫。









やたら長い貨物列車に何度も出会うなあ、と思ったときにハッとして、そういえば同じようなことを3年前に感じて「遠く離れた真夜中の線路の/寂しげに響く貨物列車の音」という歌詞を書いたのだったと気付く。まるで「平凡な毎日の暮らし」の答え合わせのようで。尾道プリンが名物の「おやつとやまねこ」、細い路地を登っていったところにある「ネコノテパン工場」など散策(パン屋には営業時間に間に合わなかった)会場となるJOHN burger & cafeは港沿いの洒脱なハンバーガー屋さん。美味しいハンバーガーをいただいてライブの準備。
この日のライブを実現に導いてくれたのは旧知の音楽仲間、カメラマンズというバンドで歌っていた永田くん。PE'Zのディレクターとしても活躍した彼は去年から地元三原に帰って地元を音楽で盛り上げる活動をしている。照明、PAとがっちりサポートしてくれてカフェライブとは思えないしっかりした設備での演奏になりました。19時半に開場し20時からとゆったりしたスタート。ライブはいつものようにニューアルバムから「どこへ向かうか」で始まりました。



やはりこの街で歌う「平凡な毎日の暮らし」はとても感慨深いものがありました。この歌は大地震の数日後にデモを公開したこともあって震災以降の日常とリンクするという感想を聞くことも多いのだけど、その誕生の起源となった場所へ里帰りしてひとつの形が完成したように感じた。僕のライブを初めて観る人も多い会場でたくさんしゃべってたくさん歌いました。惜しむべくは猫のブルーの踊りのキレの悪さ(電池が…)。広島や岡山はもちろん、東京、山口、九州と駆けつけてくれた皆さん、そして心強いサポートのボンボヤージュ!スタッフの皆さん、そして岸本夫妻に感謝。
夜は永田くんも含めてスペインバルでお疲れさま。朝早くから起きて道中しゃべりとおした僕はさすがにくたびれて知らないうちに次の朝になっていました。ああ、ここは迷路の街。また来ます、尾道。




