2014年07月05日

ぽっちゃんと照枝さん、“おばあちゃん猫との静かな日々”の話



昨日のこと、「おばあちゃん猫との静かな日々」という本を今年3月に上梓された写真家の下村しのぶさんと初めてお会いし何時間も話をさせてもらった。下村さんと愛猫照枝さんのことを知ったのは僕の写真絵本「ひなたのねこ」の刷り出し(印刷所で刷色を調整する最終工程)が完了した4月16日のこと。早朝の確認作業が終わりあとは製本された完成品を待つだけ、というときに市場調査のつもりで大きな書店の猫コーナーをパトロールに行ったのがきっかけ。ファンシーで可愛らしい猫本がスペースを占めるときに1冊だけ下村さんの本は異彩を放っていました。数ページ立ち読みしただけで「これは立ち読みしたらだめなパターンのやつだ…」とレジへ直行、その日の午後には読了し号泣しポチのおなかに顔を埋めたのでした。(その日の日記

それからたった2ヶ月半しかたっていないのに、僕の“猫のいる暮らし”は大きく変わってしまった。ポチを看病しながら疲弊している間、僕はそのことを本当にわずかな知人にしか伝えていなかったけど、「おばあちゃん猫との静かな日々」がきっかけでTwitter上で言葉を交わすようになった下村さんには泣き事のような報告をして、その返信に心底救われた日もありました。少し落ち着いたら会いましょうね、という約束は昨日果たされることになりました。下村さんの愛猫照枝さんはポチと同じ腎不全で、ポチより4年長生きして19歳で逝った。下村さんとは17年くらい一緒だったそうで、本のなかでは書ききれなかった赤裸々な闘病話や裏話も聞くことができたし、僕もポチについてたくさん吐き出せてよかった。ポチも照枝さんも高齢の“おばあちゃん猫”だが、僕は今年に入って「うちの猫は14歳なんで人間だと80歳くらいで…」という言い方をするのをやめて「14歳なんで人間で言う中2です」「15歳なんで今年は高校受験」と言うようにしていました。「大学までは行かせたいんですよねえ。ネコダ大学に」と続けるのがお決まりだったのだけど、照枝さんは大学まで行けたのが羨ましい。お互い悲しみが消えることがないことをわかっているのに、話が向かうのは極めてポジティブな方向であることがとても不思議で、僕は2週間経ってもまだまだめそめそと落ち込んだり呆然としたりしているのだけど、こうやって人と会って話をすることがどれだけ大事な時間か、ということを改めて実感しました。巣巣での「ひなたのねこ」展を楽しみにしていると言ってくれてとても嬉しかったです。

先日お参りした猫返し神社でいただいてきた猫返し絵馬に照枝さんの絵を描いてプレゼントしたらとても喜んでくださった。猫の絵を描くとどうしてもポチに似てしまうのだけど、照枝さんのしっぽとポチのしっぽはシュッと長く縞模様のピッチもよく似ている。僕もポチのことを話すときに「うちの猫が」「ポチが」「ぽっちゃんが」と様々な呼び名で言うのだけど、下村さんも「照枝さんが」「てるちゃんが」「てっちゃんが」と言うのを聞いていると、どれだけ愛された猫かということと同時に人間からの無償の愛の大きさも再発見して静かに感動する。現在下村さんの本はアマゾンなどでは欠品しているらしく、本屋さんを巡って探してみたりするちょっとした手間が必要かもしれませんが、猫好きでもそうでない人でも静かに心震えるような日々が綴ってあります。こちらのブログもあわせて。素晴らしい一日でした。


<ラジオ出演情報>

本日夜23時から新潟FM PORT「PORT Tasting Music」で1時間の山田稔明特集が放送されます。1時間、僕が一人しゃべりで進行する番組です。日記を見てみるとこの放送のための録音を僕は6月10日に自宅スタジオで行っていて、それはポチが病院通いを初めて1週間ほどの頃でした。どんな声のトーンだったかなあ、と振り返っても思い出せませんが、今日僕もオンエアを聴いて6月のある日の風景に思いを巡らせたいと思います。新潟の皆さんはラジオで、全国各地の皆さんもぜひラジコプレミアムやスマートホンアプリなどで聴いていただければ。発売予定のないレアトラックも流しています。そして気づけば明日7月6日夕方頃には全国のレコード店に『緑の時代』が並ぶ、いわゆるフラゲ日です。僕も都内いろいろパトロールしに出かけようかと思います。

本日7月5日(土)23:00〜24:00
新潟FM PORT「PORT Tasting Music」
山田稔明『緑の時代』特集


番組ホームページはこちら



Posted by monolog at 10:48│Comments(0)TrackBack(0)

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