オーチャードホールは一昨年のKIRINJI以来だが、心地の良いホール。年齢層はやっぱり高い。ジャクソン自身が66歳(うちの母親と同世代)だから客層のメインは50歳代?女性コーラス2名含む8人でのステージ。とにかく音が良くてびっくりした。ジャクソンのアコギ、グレッグ・リースのスライド、ヴァル・マッカラムのテレキャスターの音のアンサンブルよ…。歌声も素晴らしい。年季の入ったヴィンテージの陶器みたいだ。前半の個人的ハイライトは時を越えて共鳴する「The Long Way Around」と「青春の日々」の並びでした。
客席からの怒号のようなリクエストに積極的に応えて進むステージ、「キーはなんだったっけ?」と確認しつつ完璧に演奏するのがすごい。来日公演のセットリストを見て諦めていた「Late for the Sky」が始まったときは息を飲んだ。ピアノに座っているジャクソンはその角度によるのか急に若く見えて『孤独のランナー』のブックレットのなかのジャクソンみたいだ。コンサートはギミックなく圧倒的に“音楽”でしかなくて、これが本物だ、と背筋の伸びるような思いでした。去年出た新作からたくさん(10曲中8曲!)演奏したのが印象的で、「Doctor My Eyes」も「Take it Easy」も「Running on Empty」ももちろんよかったんだけど、最新作『Standing in the Breach』に初めて正規録音として収録された、ジャクソンが若かりし18歳のときに書いたという「The Birds of St. Marks」が瑞々しくて一番グッときました。中学生のトシアキ少年に教えたい。「おま、大人になったらジャクソン・ブラウン、生で観るばい」と伝えにいきたい。
ところで、オペラグラスを持っていくとコンサートが何倍も楽しくなる。軽くて小さくて明るく見えるやつがいいからAmazonじゃなくて実店舗で買うのがいい。カフェライブでは必要ないけど、少しサイズの大きな会場では武器になる。ギターリストの手元も見えるし、暗がりのボブ・ディランの表情も見えるし、さいたまスーパーアリーナみたいなところでもテイラー・スイフトの額の汗まで見えるのだから。昨日もどきどきしながら覗き込んオペラグラスのなかにはジャクソン・ブラウンと僕しかいなかった。感動した。春のオペラグラスで胸の奥を覗けばいつもより素直な僕がいました。僕がカバーしたジャクソン・ブラウンの「青春の日々」はここで聴けます。