2015年03月14日

春のオペラグラス|ジャクソン・ブラウン来日公演

昨日のこと、ジャクソン・ブラウンの東京公演最終日をオーチャードホールで観てきた。チケットを取ってなかったのだけど「何で観にいかないの?観にいかない理由があるのか?」と友だちに言われて「そうだよな。なんでオレはジャクソンを観にいかないのか…」と自問自答して次の瞬間にはインターネットの海でチケットという魚を釣り上げていました。中学生のときに親戚から譲り受けたレコードのなかに『孤独なランナー(Running on Empty)』と『NO NUKES』(1979年3月に起きたスリーマイル島の原発事故のあとにジャクソン・ブラウンやジョン・ホールらが中心になって企画したコンサートのライブ盤)があって、中二病真っ只中の僕は辞書を引きながら耳をすまして、『孤独なランナー』のなかの「The Road」という曲をモチーフに僕はその後「遅れてきた青春」と「星に輪ゴムを」を書くことになります(その曲が実はダニー・オキーフのカバーだということを後で知るのですがダニー・オキーフのバージョンでは中学生の僕の心には響かなかったでしょう)。



オーチャードホールは一昨年のKIRINJI以来だが、心地の良いホール。年齢層はやっぱり高い。ジャクソン自身が66歳(うちの母親と同世代)だから客層のメインは50歳代?女性コーラス2名含む8人でのステージ。とにかく音が良くてびっくりした。ジャクソンのアコギ、グレッグ・リースのスライド、ヴァル・マッカラムのテレキャスターの音のアンサンブルよ…。歌声も素晴らしい。年季の入ったヴィンテージの陶器みたいだ。前半の個人的ハイライトは時を越えて共鳴する「The Long Way Around」と「青春の日々」の並びでした。

客席からの怒号のようなリクエストに積極的に応えて進むステージ、「キーはなんだったっけ?」と確認しつつ完璧に演奏するのがすごい。来日公演のセットリストを見て諦めていた「Late for the Sky」が始まったときは息を飲んだ。ピアノに座っているジャクソンはその角度によるのか急に若く見えて『孤独のランナー』のブックレットのなかのジャクソンみたいだ。コンサートはギミックなく圧倒的に“音楽”でしかなくて、これが本物だ、と背筋の伸びるような思いでした。去年出た新作からたくさん(10曲中8曲!)演奏したのが印象的で、「Doctor My Eyes」も「Take it Easy」も「Running on Empty」ももちろんよかったんだけど、最新作『Standing in the Breach』に初めて正規録音として収録された、ジャクソンが若かりし18歳のときに書いたという「The Birds of St. Marks」が瑞々しくて一番グッときました。中学生のトシアキ少年に教えたい。「おま、大人になったらジャクソン・ブラウン、生で観るばい」と伝えにいきたい。

ところで、オペラグラスを持っていくとコンサートが何倍も楽しくなる。軽くて小さくて明るく見えるやつがいいからAmazonじゃなくて実店舗で買うのがいい。カフェライブでは必要ないけど、少しサイズの大きな会場では武器になる。ギターリストの手元も見えるし、暗がりのボブ・ディランの表情も見えるし、さいたまスーパーアリーナみたいなところでもテイラー・スイフトの額の汗まで見えるのだから。昨日もどきどきしながら覗き込んオペラグラスのなかにはジャクソン・ブラウンと僕しかいなかった。感動した。春のオペラグラスで胸の奥を覗けばいつもより素直な僕がいました。僕がカバーしたジャクソン・ブラウンの「青春の日々」はここで聴けます。






Posted by monolog at 11:00│Comments(1)TrackBack(0)

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この記事へのコメント
山田くんの曲にはジャクソン・ブラウンを彷彿とさせるものがあるなぁとかねてより思っていました。
なんだか答え合わせができたようで嬉しいです。

ジャクソン・ブラウンの声は、最初の一音を発しただけで、即座にその場をまるごとジャクソン・ブラウンの世界にしてしまう。
とても魅力的です。
最新作を聞いて、見た目はさすがに歳を重ねているけれど、声は若いなぁと思いました。生で聞いて、どうだったかしら?

行きたかったなぁ・・・生のジャクソン・ブラウン世界に浸りたかった。
Posted by りーな at 2015年03月16日 23:25