2015年06月12日

時を越えたジャケ買いと定額制音楽サービス



昨日のこと、下北沢風知空知で親しくしている高橋徹也さんとfishing with john(以下fwj)の共演ライブというのがあり、出かけた。五十嵐くんが独演するfwjを初めて観たが、ちゃんとfwjらしさがあって興味深く、ソロで3回目くらいだというその新人っぽいフレッシュさもあって次が楽しみになった。タカテツさんは相変わらず独特で圧倒的な世界観があり不穏で、なんでおれはこの人と仲良く飯食ったるするようになったのかな、と不思議な気分になる。夏の終わりごろリリース予定だという彼の新作が今から楽しみだ。

久しぶりにフラッシュ・ディスク・ランチで中古レコードをぱたぱたと眺めていたら群を抜いて目を引くジャケットがあった。フランク・シナトラが指揮をとったインストゥルメンタル、『TONE POEMS OF COLOR』というレコードで1956年にリリースされたものだった。A面に6曲、B面に6曲、トラックには《白、緑、紫、黄、灰、金、橙、黒、金、青、茶、赤》とそれぞれに色の名前がついている。僕の目を奪ったそのジャケットはいくつもの名作映画のタイトルバックで有名なソール・バスが手がけたもので、約60年の時を越えてもその美しさにはひとつの曇りもなく、レコード磨き用の洗浄液で濡らした布でジャケットを軽く拭いたらさらに活き活きと鮮明に見えた。その流麗なオーケストラを聴きながら、ここ最近で続々とサービスをスタートさせた定額制音楽ストリーミングサービスのアプリに触れてみた。

5月末に提供された「AWA(アワ)」というサービスにGOMES THE HITMANの歌も入ってるよ、と友だちに教わって急いでアプリをダウンロードしてみると、iTunes等で配信しているBMG時代の作品がすべて(権利上の関係で配信していない曲は聴けない)聴くことができた。しかし『ripple』や『omni』などVAP時代のものはカタログにはない。もちろんソロ名義での原盤とレーベルが僕自身の作品もなし。いろいろ検索してみると大抵のアーティストの歌が聴ける。僕の好きなR.E.M.もすべてのカタログが揃っていて、iTunes Storeで去年発売された『Complete Warner Bros. Rarities 1988-2011』という171曲セット(12,000円するから買わなかった)も全部聴ける!と興奮した。

で、昨晩は「LINE MUSIC」というのをダウンロードして、GOMES THE HITMANを検索してみたら「検索結果がありません」と出て、嬉しいような?悲しいような?なんだかとても複雑な気分になったのだけど、どうやら検索機能の不具合だったらしく、今朝あらためてAWAと同じアイテムがLINE MUSICにあることを確認した(AWAと同じくVAP時代の作品はない)。多分この感じだとアップルがスタートさせる「Apple Music」も同様のことになるだろうと予想する。今となってはなかなかフィジカル(実物のCD)で手に入れにくい旧譜がこういうふうに自由に聴かれる機会が増えるのは単純に嬉しい(15年の時を経て初期カタログのデジタル配信が実現した昨年の達成感を思い出すと少々肩すかしだが、その配信手続きが完遂していなければきっとGOMES THE HITMANはAWAにもLINE MUSICにも名前がなかっただろう)。こういったサービスにより偶発的な音楽との出会いもどんどん増えていくのだろうなと思います。

これが近年の自分のソロアルバムや来月発売になる新作について考えると「うむむ…」と唸ってしまう。GOMES THE HITMANのアルバムと比較すると、すべての制作費を自分で捻出しているという点で作品の成り立ちが違うわけだけど、定額制音楽ストリーミングで聴かれるよりも、偶発的な出会いよりも先に自分のレコードを自分の手の届くところには丁寧にちゃんと自分の手で届けたい、というナイーブな気持ちがどうしてもわいてくる(流通に頼らずに初回プレスを手売りと通販で売り切った最初のソロ作と2枚目のときと同じ気持ちだ)。『pilgrim』と『home sweet home』はリリースからもう5年以上経つからそろそろ配信に出してもいいかなーという気持ちになったかというと意外とそんなこともなくて、この自分の感情、気持ちはどういうことなのだろうか、とあれこれ考え中。

AWAもLINE MUSICも無料お試し期間中なのであと数ヶ月GOMES THE HITMANをはじめいろんな国内外の音楽が聴き放題です(R.E.M.の聴き始めには『Out of Time』という1991年作を推します)。これを機会に初めて触れる素晴らしい歌もたくさんあると思いますので試してみることをお薦めします。僕の新作『the loved one』は今のところiTunes等での配信の予定はありませんが、来週いよいよ製品版CDが到着します。6月20日に先行レコ発、そして25日の木場 EARTH + GALLERY、27日の鎌倉moln、7月3日の吉祥寺スターパインズカフェ公演で一般発売前の購入が可能です。カラフルなパッケージとブックレット含めての自信作、実体のない空気の振動である音楽を封じ込めたパッケージが大好きな僕はもうちょっと時代の流れに抗おうと思います。




Posted by monolog at 15:39│Comments(0)TrackBack(0)

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