
一昨日のこと。今年前半からあたためてきた高橋徹也氏との2マンライブの日。ドラムのitokenさんの不在をsugarbeans佐藤くんにサポートしてもらう。大雨の降るなかお昼からスタジオに集まって3時間のリハーサル、長いタフな一日の始まり。『the loved one』レコーディングでは3曲のドラムを叩いてくれた佐藤くんは今回もすんなりと夜の科学オーケストラに馴染んでくれました。僕がエレキギターを忘れるという大失態、スタジオ内で選曲の変更というハプニングもありましたが、全曲エレキギターを弾く高橋徹也さんと対照的なコントラストになって結果オーライだったような気がしています。
リハスタからスターパインズカフェへ。今年もお正月からずっとこの会場にお世話になっている。観にくるのも演奏するのも好きなハコ。セッションのリハーサルでついさっきスタジオで仕上げたアレンジをタカテツさんに披露。ニヤっとしながらファルセットのコーラスを乗せてくるところが彼らしい。高橋徹也バンドのリハを観て、やはりこの人はただものではない、と思う。山田稔明バンドは足し算の発想で現在のフォーマットになっているが、彼のバンドは必要最小限の音で研ぎ澄まされている。自分にない才能を見ると羨ましく思う。
雨は小降りになったものの止まず。開場、そして開演。リリースタイミングの僕が後攻め、先攻は高橋徹也。鹿島さんのベースと脇山くんのドラム、そしてこの日八面六臂のシュガーくんもいい。「爽やかにいくよ」と宣言していたが結局いつもの異彩を放つタカテツワールド。セッションで呼び込まれステージへ。今年のはじめタカテツさんと一緒に武蔵小山でラーメンを食べていたら有線から流れたThe Smiths「Cemetry Gates」、無言で聴き終えた後お互いのスミスNo.1ソングであることが判明。GOMES THE HITMANの「平和なるサバービア」、あるいはそのまま「スミス」という未発表曲は「Cemetry Gates」へのオマージュ。タカテツさんにも影響を受けて書いた曲がある、という話で盛り上がり、その流れからこの日の「星空ギター」という選曲になりました。一聴すると全然似てないんだけど個人的には「わかるわかる」という記号が散りばめてある。とても楽しく演奏できました。鹿島さんのベースの上で歌うのは初めてで、それがとても嬉しかった。シュー(Sure)。

そして山田稔明バンドがステージへ。先月の恵比寿でのレコ発をダイジェストにしたようなセットリスト。「my favorite things」はもっとバンドで演奏してもっとステージ上で大きくしたいなあと思う。いきなり1曲目で弦が切れて「ああ、おれ力が入ってるのかなあ」と一度冷静に。去年のGOMES THE HITMANのライブ以来。バックステージで安宅くんとハックルたけ兄が暗躍して弦を張りなおしてくれました。「予感」を演奏しているときにとても穏やかな気分になったのはクラリネットとフルートの重なりのせいか。「些細なことのように」から「月あかりのナイトスイミング」の連なりはバンド編成のときならではのハイライトになる。『新しい青の時代』と『the loved one』が繋がっている、と感じる。


そして高橋徹也氏を招いてのセッションは「僕たちの旅〜自己嫌悪'97」。これは去年の夏にお互いソロで共演したときにもセッションした歌。時代を遡ること1997年、映像制作会社勤務をしてた僕がADとして「真夜中のドライブイン」PV撮影に関わったことが高橋徹也との出会いになるのだけど、この「真夜中のドライブイン」に影響を受けて作ったのが「僕たちの旅〜自己嫌悪'97」なのだ(もっと言うとアウトロはMEXICO70の「Drug is the Love」という曲のオマージュでもある)。この日は作った当時のイントロを再現した“真夜中のドライブイン”バージョンで演奏。感慨深い瞬間でした。
最後にMCで「《ここではないどこか》と山田くんがいうのを聞いてメモした」という初めて聞く話を語ったタカテツさん。帰宅後ぼーっと考えていたらそれは去年の春のプラネタリウムでコンサートをしたときの朗読だ、と気付いた。「妄想のあやとりの時間/想像力は僕をここではないどこかへ連れてゆく」というフレーズ、それを書きとめていたなんて全然知らなかった。そういえばこの日最後に演奏した「hanalee」も《ここではないどこか》についての歌だった。果たして、「猫とコヨーテのオーケストラ」とタイトルをつけたこの日のライブ、僕は演奏した歌のうち半分に猫が登場し(いつもより少なめ)、高橋徹也はついにコヨーテが登場する曲を演奏しなかった。また違う季節に共演できたらいいな、と思う。