僕はリアルタイムで杉さんの音楽を聴いていないので、30周年を迎えた『SYMPHONY#10』をとても新鮮な気持ちで受け取った。いつだったか、仕事帰りの車のラジオから「Key Station」という曲が流れてきて(そのとき初めて聴く曲だった)その歌詞に心震え、すぐに杉さんにメールをしたことを憶えている。「ラジオ」をテーマに作られた作品はそのまま「音楽」への愛に直結し、さらには「コミュニケーション」をも包括している。総立ちで盛り上がる会場を眺めながら、お客さんたちの青春に対しても杉さんは責任を持って歌い続けるのだなと感動した。素晴らしかった。
すべての楽曲が演奏された後、名残惜しそうに杉さんが大瀧さんのことを話し始めて、僕の隣でライブを観ていた息子の未来くんがいつの間にかいなくなっていたので「なんだよ、みーくん。お父さんがいい話してるのに」と思った次の瞬間に彼はステージに呼び込まれ、「君は天然色」のカウントを始めた。去年、今年と杉祭りでも演奏した永遠のクラシックはこの日もカラフルに乱反射していました。良い夜だった。20年先を行く優しき大先輩の背中を見失わないように僕も歌を鳴らし続けたいなと思いました。