
11月3日に『猫と五つ目の季節』が発売になってから2週間が経ちました。東京から始まって新潟、福岡、佐賀、大阪、兵庫と回ってたくさん本を手にしていただいて、感想もいろいろいただいて嬉しい限りです。本屋に足を運んで様子を伺ってみると、音楽コーナーに置いてあったり、動物コーナーに置いてあったり、文芸書に名だたる著者の方々と並んでディスプレイしてあったり様々ですが、とにかく話に聞いていたとおり「小説」を売るのは難しいのだなということがわかってきました。街の小さな本屋には基本的に話題の作品しか置かれないし、ここに並びたい!という本屋に入荷がないことも多いし。日々精進の気持ちを胸に、小さなきっかけを祈る日々ですが、ライブ会場の物販で飛ぶように売れていく『猫と五つ目の季節』を見ていると誇らしい気分になります。
予算がないためにさしたる宣伝活動をしていないこの本が日経新聞の夕刊に載ったときも驚きましたが、先日はPECOという国内最大のキュレーションプラットフォームサイトにとても情報が掲載されたことにびっくりしました(こちら)。「山田さんの知り合いがいらっしゃるんですか?」とミルブックスから尋ねられましたがその存在すら不勉強で知らなかったのですが、とても丁寧に詳しく多面的に紹介していただいてとても嬉しかったです(どなたかファンの方が関わってるのだろうか、関係者の方いらっしゃったら連絡をください!)。こういうふうに紹介されたり、誰かが本についてコメントをしてくれると通販の注文が増えたりアマゾンのチャートが動いたりするから面白い。口コミっていうのはすごいのだな、と思います。
ペットロスの渦中だったり、家族を亡くしたときのことを思いだしてしまうからという理由で「読むのがつらい」と言う友だちも少なくなかったし、尊敬する作家先生から「猫がどうなるのか心配で心配で3章から先を読めない」と手紙をもらったときには自分自身がびっくりしてしまって、いろんな反応があるのだなと感じて、客観的に俯瞰的に物語を眺めることができるようになりました。猫を飼っていない人の感想も面白いし、猫がきっかけで仲良くしていただいている女優の川上麻衣子さんは「私もポチちゃんと一緒に過ごしたような読後感」とメッセージをくれた。犬派のライター赤尾美香さんも「家族となった動物を大切に思う気持ちは同じ、しかしながらその気持ちを全うするのは簡単なことじゃないと改めて思った」という感想を。うちの父親と小説のことで話をしたとき、僕が「猫好きの人の間で話題になったらなあ…」と言うと、すかさず父が「いや、これは猫でも犬でも人間でも、何にでも当てはまる話やで」と言い切ったのには驚いた(「いや、本心ではオレもそう思っとるっちゃけど…」と心の声で返したのです)。
2013年の『新しい青の時代』収録の「予感」でアイリッシュ・ハープを弾いていただいたtico moonの吉野友加さんは猫アレルギー、しかしとても素敵な感想を送ってきてくれた。ずっと思っていたのだけど、友加さんがハープを弾く仕草は(とても優雅なのだ)猫が毛繕いしている仕草に似ていて、「予感」を録っているときも「猫みたいだ」と考えて声には出さなかったことをさっき思い出しました。感謝。
山田さんの小説を読む。
山田さんから生まれた言葉を、
山田さんの声で脳内再生しながら。
それは山田さんの音楽を聴くように、
山田さんとお話しをするように、
軽やかな風を感じる時間でした。
音に乗った言葉も、紙に載った言葉も、
真っ直ぐな山田さんから溢れ出す言葉は、
変わることなく真っ直ぐに響いてきます。
アレルギーがあり猫を飼わないタイプの私は、
猫を飼う人たちの繋がりや、猫が傍にいる人生を羨ましく思いながら、
少しだけ身近に感じることが出来た作品でした。
吉野友加(tico moon)