


昨日のこと、三軒茶屋の昭和女子大学人見記念講堂で行なわれた「Dear BEATLES 2016」を観に出かけた。杉真理さん、アルフィーの坂崎幸之助さん、REVOLVERのRICKYさん、チューリップの上田雅利さん、伊豆田洋之さんらビートルズを愛する音楽家たちが集いビートルズ楽曲を演奏するコンサート、今年で14回目。本当なら村田和人さんも出演する予定だった(村田和人さんのこと)。僕は2013年以来2回目の「Dear BEATLES」で、前回観たときは1966年の『REVOLVER』完全再現ライブだった。そして今回は、昨年リリースされて話題になったTHE BEATLES『1』全曲を演奏するという内容。これだけのキャリアのある出演者にも関わらずビートルズ楽曲以外は演奏しない。
老若男女(いや、若者は多くなかったかな...)で大盛況の会場が暗転して始まったのは、しかし「The Long and Winding Road」だった。『1』を頭から順番にやってもつまらないから最後の曲から遡る、という意表をつくセットリストでした。いきなりグッとくる歌が続いて、村田さんへのレクイエムにも聞こえた。「Let It Be」のギターソロは杉真理さん。杉さんがこんなにキュンキュンとソロを弾くようになったのは村田さんと二人で回る還暦ツアーがきっかけだったはずで、真剣な眼差しで弦をかき鳴らすその姿を村田さんはにやにや笑いながら見ていたのではないかな。『1』に収められたのはすべて全米ナンバー1になった曲たちなので全部よく知っている定番曲なはずなのに、コード進行やドラムのパターンやフィルイン、ハーモニー、いたるところに新しい発見があるから不思議だ。
ゲストの新山詩織さんが凛とした声で歌った「Across the Universe」がとてもよかった。先月僕が村田さんの新作『ド・ピーカン』のために書いた歌詞の一節と共通するフレーズを見つけてハッとした。最後の最後、アンコールでステージ中央に村田さんの写真とヴァイオリンベース(代役のBOX小室和之さんが弾いた)が置かれて、初めて村田さんの話。ジョンが遺したデモを完成させた「Real Love」と、「In My Life」が捧げられた。「Some are dead and some are living/In my life, I've loved them all」。旅立った者も生きている者も繋がっている。音楽が媒介する。
大団円して終演後にスピーカーから流れてきたのは村田さんが歌った「NOWHERE MAN」だった。「ひとりぼっちのあいつ」という邦題で知られるこの曲は意訳すると「どこにもいない男」、しかし「NOWHERE」を「NOW」と「HERE」に別けて読むと「今、ここにいる男」になる。先月村田さんのために書いて送ったもうひとつの曲(村田さんの感想が聞けないままの歌詞だ)に僕が「EVERYWHERE MAN」というタイトルをつけたのは偶然か必然か。当然「どこにもいない男」の反対の「どこにでも現れる男」という意味をこめた。杉さんに「山田くん、村田が歌う『NOWHERE MAN』聴いたことある?すっごい良いんだよー」と聞かされていたその歌を、僕は椅子に座ったまま耳をすまして聴いた。とても感動した。終演後のロビーには村田さんのいきいきとした写真が飾られていました。
帰ってきてからもビートルズを何枚も聴いている。