鎌倉在住のミュージシャンとまそんくんから北鎌倉の寺院を使ったフェスの構想を聞かされてお誘いを受けたのは今年はじめのことだった。彼からは2年前の夏にも円覚寺でのライブを誘われたのだけど、そのときは(正直言うと)ポチを亡くして意気消沈の頃でやむなく辞退したという経緯があって、今回は二つ返事で「出たい!」と答えた。北鎌倉の3ヶ所の会場とその経路を問題なく取り仕切るために彼と相棒の小川コータくんそして有志スタッフ皆さんの尽力は大変なものだっただろう。当初「雨、風、荒天」と予報された天気が風薫る快晴になったのは想いと念の強さのせいかもしれない。
去年同じ鎌倉のJAMJAMJAM音楽祭に出たときに連休の渋滞の凄さを味わったので東京を早朝に出たのだけど気持ちいいくらい空いていて、僕は7割完成した『みずいろの時代』を爆音で聴きながら、横浜横須賀道路(ヨコヨコ)を海まで走ったのだ。浄智寺は竹林の中にあり日差しのないところではひんやりと涼しく、太陽が照らす場所では汗ばむくらいの陽気でとても良いバランスでした。とにかく新緑の色が美しかった。時間に余裕があったので円覚寺まで歩いてtico moonのお二人のリハーサルを眺めた。PAを担当していたのは友人の古賀くん(2014年のプラネタリウムや高野寛トリビュートを担ってくれた同郷の後輩)、こういうお祭りの場所で知人に会うと嬉しい。安宅くんは家族で電車でやってきたが、電車の混雑もなかったそうでみんな機嫌がいい。
僕らが演奏するのは普段内部公開されていない浄智寺の書院。畳敷き、窓の外には緑が光と風に揺れていてとても心地がいい。ここからはきっと四季折々の風景が眺められるのだろうな。音響機材やスタッフさんも素晴らしく、何のストレスもない環境。リハーサルでは本番ではやらない「glennville」を演奏した。鎌倉近郊に住む友人知人たちも駆けつけてくれて、会場はたくさんのお客さんでいっぱいになった。安宅くんとふたりで演奏するのは前回の鎌倉以来かな?よしもとの芸人コンビ「ねたのおにいさん」が僕の猫偏愛ぶりを面白くいじって紹介してくれて雰囲気良く始まったステージ、「太陽と満月」「猫町オーケストラ」、そして古都の風景と似合うと思って選曲した「光と水の新しい関係」はやっぱり気持ち良く響いていました。
ここまで歌って「ん?」と思いつつ、次の「光の葡萄」にも“猫”が登場して、「my favortie things」にも当然“猫”が出てくるわけで、最後の「small good things」まで含めて意図せずしてすべて猫が登場する歌となりました。近藤研二さんと歌ったminneのハンドメイドマーケットでは意識的な猫選曲だったんだけど、気づかないうちにこういうセットリストになっていた。「ねたのおにいさん」が「演奏される半分は猫の歌らしいですよ」とボケたのに僕がそれを越えてしまって「勘弁して下さいよー」とあとで呆れられた。楽しいステージ、終演後もたくさんの人と話してサインを。
自分の出番が終わったあと早足で円覚寺の沸日庵まで移動して浜崎貴司さんのライブに間に合った。「風の吹き抜ける場所」「幸せであるように」と名曲を堪能。弾き語りの力強さよ。期せずして「ウィスキーがお好きでしょ」を聴けたのも嬉しかった(CMが始まったばかり)。前日にこの曲の作詞者田口俊さん、作曲の杉真理さんと会ったのも何かの縁か。その後また浄智寺へ戻ることには結構ヘトへトに。iPhoneの万歩計を見たら15000歩、10キロくらい歩いた計算になる。
ステージを書院から曇華殿に移して朝比奈住職のありがたい御説経、そして宮田和弥さんのライブは「歩いてゆこう」から始まった。控室で初めて宮田さんとお話させていただいたがとても優しい方だった。ボ・ガンボスの「トンネル抜けて」のカバーがその場の雰囲気に完璧にマッチしていて感動した。風が騒ぐ夜はうちへ帰りたくないよ。きたかまフェスのトリをつとめるのは主催者である小川コータ&とまそん。地元愛にあふれる歌たちはどれもキャッチーで彼らが愛される理由がよくわかった。打ち上げも楽しく終始笑顔あふれる一日となりました。
せっかく鎌倉に来たのだから、と東京に帰る前にモルンに寄って、五十嵐くん宅でわいわいと夜中まで騒いで楽しかった。また来年もこんな春の日が過ごせたらいいな。