
一昨日のこと。打ち合わせから戻り自宅スタジオで作業しつつ、ふと手のひらのiPhoneでインスタグラムを眺めていたら「これからイヴァン・ダンドのライブ」という知り合いの投稿に目が点になる。は!?レモンヘッズのイヴァン・ダンドの来日公演!?全然知らなかった、そんなこと。調べてみるとその日の18時半開場、19時半スタートとウェブサイトに書いてある。時計を見たら19時15分、会場は渋谷区代官山。僕はコンピュータをシャットダウンし車に飛び乗り走り出していた。30分後には僕は当日券を買ってライブ会場のフロアにいた。最初の何曲かを見逃したけど、イヴァン・ダンドはずっと慣れ親しんだ歌を次から次に歌っていた。
1993年にレモンヘッズが来日したときのことを忘れない。大学2年生だった僕はなけなしのお金で買ったレモンヘッズとU2とプライマスのチケットが入った封筒を紛失するという失態をおかした。特に人気絶頂だったレモンヘッズを観れなかったのは悲しかった。レモンヘッズのTシャツにまつわる甘酸っぱい思い出も定期的に思い出す。GOMES THE HITMANは当初レモンヘッズのコピーバンドだったし、青春とレモンヘッズは切っても切れない関係だ。四六時中SNSの情報にアクセスできる時代にレモンヘッズ=イヴァン・ダンドの今回の来日公演の情報をどうして事前に手に入れられなかったのか不思議でならないが、とにかく僕は初めて彼の生の歌声を聴くことが叶って嬉しかった。
本当に次から次に、MCらしいMCもなく歌が溢れ出していく。レモンヘッズもソロも、全キャリアを惜しげもなく。「It's a shame about Ray」を早急なテンポで終わらせて、アコギからエレキへ持ち替えて歌われた「Into Your Arms」「Hanna &Gabbi」、またアコギに戻ってプラグを引き抜いて生音での演奏。聴けなかった「My Drug Buddy」と「Down About It」は最初のほうにやったのだろうな。奔放で好き放題、心の準備もできていなかったし、ゆったりと感傷に浸る余韻もすぐに次の曲が押し流していって、気がつけばあっという間の、1時間ちょっとのステージでした。
ソロ弾き語りでの演奏だったけど、バンド編成のレモンヘッズを観たくなったかというとまたそれは別の話で、きっとリズム隊を従えて大きな音で演奏しても、このルーズさや気まぐれさ、スリリングな不安定さは変わることがないのだろうなと感じたから、イヴァン・ダンドが思いのままに歌う歌が聴けてよかったなと思う。ライブへ行き帰りの車のなかでは自分にとっての最重要盤である『It's a shame about Ray』を何回も聴いた(30分にも満たないアルバムなので)。ここに封じ込められたきらめきはまったく色褪せない。気付けば25年が経っている。
ちょっとでも迷ったら行ったほうがいいな。ライブでも映画でもパーティーでも同窓会でも、なんでも。他の何かで埋め合わせることができないことを僕らはもう嫌というほど知っているし、次の機会はたいていやってこない。思いが強ければ瞬間移動に近いことができるということがわかった日でした。

