2017年09月16日

猫町旅日記ーバリ島編1



夏が始まる頃に思い立って旅の予定を立てたのは、今年もいつものようにCDをリリースした後に慌ただしい日々が続くことがわかっていたからだ。ここ数年、息をつく暇もなく季節を駆け抜けて年末を迎えて、気づいたら一つ歳をとるというのがお決まりのパターンだったから、2017年はいつもと違う1年にしたかった。インドネシアのバリ島を選んだことは偶然でもあり必然でもあった。心強い友人の手助けもあって事前の準備なしでも旅をするのにうってつけの環境だったし、航空券の値段も予算に見合っていた。僕にとってはどこにあるのかもわからない未知の場所だったのだけど。

出発前にポップスの大先輩でありシンガーソングライターの杉真理さんに会いにいった。杉さんは神々の住む島に魅せられた人、とても詳しくバリ島に通じている。思えば20年前にGOMES THE HITMANのプロデューサーとして初めてお会いした頃からバリの話は小耳に挟んでいた。これまでまったく興味を示すことがなかった僕がガイドブック片手に押しかけたものだから、杉さんも前のめりになってその魅力を面白おかしく説明してくれた。その時点で僕には良い予感しかなかったのだ。印象的だったのは杉さんが40代から50代へと変遷していくなかで、いかにバリが自分に影響を与えたかという話。バリ旅行を経てから、自分が普段やっていること、すなわち音楽が仕事なのか遊びなのかわからなくなって、それからずっと夢中で走り続けている、という言葉。僕には彼の地がどう作用するか。準備完了、いよいよ僕の旅の始まり始まり。

早朝の飛行機で出発するため、寝ないで成田空港まで走った。うっすらと明けていく朝、海外渡航は実に2005年のカリフォルニア旅以来となる(『ripple』のジャケット写真の撮影のためのハードな旅だった)。バリ島までは7時間のフライト、時差は1時間。腕時計の短針をひと回し巻き戻す。英語ではない外国語での機内放送、簡素でスパイシーな機内食、浅い夢、肩こり、ガイドブックをめくる指、窓から見下ろすどこかの島国。果たして僕の乗った飛行機はインドネシアはバリ島、デンパサール空港に辿り着いた。街の土産物屋から流れてくるガムランの音楽(目が覚めるような金属音より柔らかい竹ガムランの“ジェゴグ”のほうが僕は好きだ)を聞いてすぐに頭に浮かんだ曲があった。スザンヌ・ヴェガの大好きな曲、それが「Pilgrimage」というタイトルだなんて、なんてできすぎた話だろうか。それは果てなき「巡礼」を歌う歌だった。(不定期に続く…)

旅と到着を繰り返しながら
源へ向かって一歩一歩進む日々
彼方へ辿り着こう
時間に間に合うように





Posted by monolog at 09:41│Comments(0)