2017年09月18日

猫町旅日記ーバリ島編2

バリ島デンパサール空港に到着、入国手続きを済ませてロビーに出るとさっそく熱気と街の喧騒が僕の目の前に押し寄せてきた。日本から朝8時の飛行機に乗ってバリは15時、まだまだ太陽は高いところにある。ホテルのネームプレートを持った大勢の群れ、タクシーの客引き、日本語も巧みに話しかけてくるのを「こっちにフレンドがいるから」と断りながら歩く。むっとした湿気にわくわくしてしまうのは日常を離れた異国にいるからだ。そうこうしているうちに運転手のエヴァンさんと落ち合うことに成功、荷物も運んでくれた。この旅の移動はずっとエヴァンさんにお世話になることになる。ハローとサンキューくらいで、エヴァンさんはほとんど英語を話さないから、ずっと僕らはニコニコと笑顔でお互いの気持ちをあらわした。バリ島ではサヌールとウブドゥの間にある小さな村にあるトシコさんのお宅に泊めてもらうことになっていて、まずは空港から40分ほどのお宅へ向かう。

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ものすごい数の車、バイクに圧倒された。走り出してすぐにバリ島独特な石造りの寺院やシンメトリーの門、彫刻の数々が流れていく。僕はずっと窓を開けて眺めていた。都市部を離れると信号がほとんどなくなって、車同士はクラクションを鳴らしながら走っている。普段の暮らしで聞きなれれたヒステリックな警告とは違って、まるで路上での会話のように感じる。だんだん黄昏れていく空を見上げると鳥の群れが旋回、と思ったらそれはいくつもあがった凧だった(インドネシア語では Layang layang ラヤン ラヤンと呼ばれる風物だそう)。バリでは乾季(5月から10月)にたくさんの凧揚げ大会が開催されるらしいので、その練習に余念がないのかもしれない。息を大きく吸い込むと街独特の甘い匂いが胸いっぱいになる。学生時代によく友だちが吸っていたガラムの煙草を思い出した。



トシコさんとは日本でも何度もお会いしているのだけど、春以来の再会が嬉しい。噂に聞いていた以上の素敵な邸宅でため息が出る。リビングから見える庭、プール、その向こうの空は夕焼けに染まっていた。まずはなにより腹ごしらえ、夕飯を食べにいこうということになりウブドゥの街へ。ウブドゥ村はデンパサール空港から北に20キロ、小さな村をひとまとめにした地域全体が「ウブドゥ」と呼ばれることが多い。バリの芸能・芸術の中心地として急速に観光化が進んできた街。杉真理さんからも「ウブドゥは最高」と聞いていたが、その何とも言えない、懐かしいような、実は見たことのないような風景は僕を一気に旅人気分にさせた。

アヒルを食べましょう、と向かったお店はBebek Tepi Sawah(ベベク テピ サワ)。広大な敷地のなかに田んぼがあり、薄明かりの雰囲気もバリで最初の食事には打ってつけだった。カリカリにあげたクリスピーダック、焼き鳥のようなサテ、一気に口の中の世界を塗り替えるサンバル、何もかもが美味しい。とっぷりと暮れた夜空にはきれいな星が見えた。インドネシアならではのビンタンビールも最高。「ビンタン」とはインドネシア語で星を意味するのだった。バリ島の街は夜遅くまで店が開いていて明るいが、それでもトシコさんの家まで戻ってくると漆黒の闇のなかで懐中電灯で照らして扉を開ける。寝室から見えるのは手の先も見えないくらいの夜の風景だ。それでも怖くないのが不思議だった。なんの虫だか分からない鳴き声、そして時折聞こえてくる獣の遠吠え。バリ島で最初の夜、僕はいつの間にか眠ってしまっていた。(気まぐれに続く)

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Posted by monolog at 09:02│Comments(0)