2017年09月27日

ジャクソン・ブラウンと秋の夜長



一昨日のこと、武蔵野での打ち合わせが思ったより早く終わったので武蔵小山のアゲインまで音楽評論家 天辰保文さんのトークイベント「Talking Man」を聞きにいった。今回はジャクソン・ブラウン特集、来月の来日公演を控えて、天辰さんの解説つきのジャクソンの歌を聴きたかったのだ。月曜日の夜なのに会場はぎゅうぎゅうの満員でびっくりしたのだけど、きっとリアルタイムでジャクソンを熱心に愛聴してきたのであろう年配の(という言い方も失礼だけど)ファンの方が多くて音楽を好きでい続けることって素晴らしいなと思った。聞き手となったペットサウンズレコード森陽馬さんと僕は同い年だけど、我々が最年少だったのではないだろうか。

天辰さんの言葉でなるほどと膝を打ったのは、ジャクソン・ブラウンというのはロックンローラー然とした破天荒さやほころびがなく、均整の取れた真摯な音楽家だということ。個人的にはジェームズ・テイラーよりも断然言葉に比重を置く語り部だと感じる。なにか、一点を見つめながら熟考した歌を歌う人という印象をパラフレーズするならば「優れた観察者」とでも言えるだろうか。研ぎ澄まされた歌詞はとにかく美しいし、ビブラートしない声のおかげですっと心の奥のほうへ届く。

僕が中学生の頃、段ボール数箱分もらった親戚のレコードコレクションのなかから掘り当てたのがジャクソン・ブラウンの『孤独なランナー』という1977年の作品だった。ジェームズ・ブラウンと混同してファンキーな音を期待して針を落とすと、僕の耳に予想外の音楽が流れ入ってきたことを思い出す。それがジャクソン・ブラウンとの出会い。『孤独なランナー』はライブ音源を集めたアルバムだったので、僕はそのオリジナルバージョンを欲して過去のカタログを辿っていくわけだけど(結局『孤独なランナー』収録曲のスタジオ録音盤は存在しない)30年近く経っても僕にとって一番のジャクソンは『孤独なランナー』ということになるから、出会いというのはかくも決定的だ。天辰さんが選ぶジャクソンの1枚が『ファースト』なのも同じ理由だろう。

天辰保文さんはGOMES THE HITMANが2000年に『cobblestone』をリリースするときに文章を書いていただいた。自分が思春期から聴いてきた洋楽のレコード(の日本盤)みたいに差込みのライナーノーツをつけたかったのだ。天辰さんはTHE BANDの『Last Waltz』を目撃したり、1970年代からロックの変遷を見つめ続けてきた尊敬する音楽評論家だ。数々の名作のライナーノーツや、著作『ゴールド・ラッシュのあとで〜天辰保文のロック・スクラップブック』でその筆致を味わうことができる。久しぶりにお会いできて、来てよかったなあと思いました。イベントは23時近くまで続いた。ペットサウンズの皆さん、アゲインの石川さん、古い知り合い、村田和人さんファンのお客さん、元CDジャーナル編集長の藤本さん、丸山京子さんにご挨拶できたのも嬉しかった。写真は同じくお話を聞きにこられていた堀江博久さんと天辰さんと。来月の来日公演がとても楽しみ。

4年前にカバーした「These Days」、記事もあわせてぜひご一聴ください。






Posted by monolog at 10:22│Comments(0)