2017年10月26日

ジャクソン・ブラウンと横書きのままの歌と言葉

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先日24日の広島公演でジャクソン・ブラウンの2年半ぶりの来日公演がすべて終了した。僕は東京の追加公演のチケットが取れて、幸運にも10列目という至近距離でジャクソンの歌を聴くことができた(2年半前は1階の最後列だった)。ジャクソンは観客のリクエストに応えるので毎晩セットリストが変わる。セットリストがSNSで流れてくるたびに「わああ」とか「えええ」とかため息をついたが、僕が行った日も一期一会の夜だったはずだ。聴きたい歌のいくつかが聴けて、叶わなかった曲はそれより多かったけれど、ジャクソン自身がドリームバンドと呼ぶプレイヤー陣の演奏も含めてとにかく至福の3時間。しびれた。

僕がジャクソン・ブラウンを初めて聴いたのはアクシデントのようなものだった。親類から段ボール数箱分もらった輸入レコードのなかに『孤独なランナー』が紛れていた。僕はその名前からファンキーでごきげんな音楽を想像してプレイヤーに乗せる(ジェイムス・ブラウンと勘違いしていたのだ)。聞こえてきたのはクセのない、憂いと陰りを湛えた真っ直ぐな歌、ギターとピアノとバンドサウンドだった。このレコードから受けた影響は計り知れない。「遅れてきた青春」も「星に輪ゴムを」もこのレコードがなければ生まれなかった。ライブツアーをしながら作られた変則的なアルバムで、僕はそのオリジナル・スタジオ・バージョンを探したのだけど、はなからオリジナル・バージョンが存在しないと知ったのは数年後のことだ。

さかのぼって聴いたレコードのなかに『Late for the Sky』があり、その表題曲は20世紀のアメリカン・ロックの代表曲。僕が目撃したコンサートでも演奏された。69歳になってもこの歌を歌うとき時間が巻き戻ってジャクソンは見目麗しい青年に変身する。この「Late for the Sky」というフレーズの真意を僕は中学生の頃からずっと理解できないでいる。今でもそうだ。正確に言うと、日本語にパラフレーズできない。「空に遅れる」とはどういうことか、それが朝なのか昼なのか夜なのか。横書きの歌を縦書きに変換するのはなかなか難しいが、この日の素晴らしい歌と演奏を前にしたらどうでもよくなった。2017年の長雨が続いた秋の夜に僕はこの「Late for the Sky」を言葉そのままに全身で受け止められたような気がする。

ライブが終わって興奮さめやらぬまま、ジャクソンが使っていたのと同じギターを勢いにまかせて買ってしまうというサブストーリーも付随して、忘れられないジャクソン・ブラウン来日公演となりました。「Load Out/Stay」で締めくくられるステージを観るまでまた何度でもコンサートへ出かけていきたいと思います。

Posted by monolog at 14:56│Comments(2)
この記事へのコメント
私も憧れのJBの大阪公演行って来ました。スーパーセットリストにいまだに興奮していますJBの「one for you」「one for me」という感じにしよう、と言うJBを無視するかのような怒涛のリクエストの声。凄い熱気でしたそしてとうとう「Load Out/Stay」。私もこれを聞くまでは何度でも行くと決めていましたがこれからもずっと行くことを改めて決めました。山田さんのオールリクエストライブも凄いみて見てみたいです。
Posted by masayoshi masui at 2017年10月27日 09:18
ほんと大阪のセットリストは奇跡みたいで羨ましかった!
いい大人、人生の先輩たちが声を荒げてリクエストするのも微笑ましかったです。
Posted by ymd at 2017年10月27日 09:38