



先週末からのライブを振り返ります。1年の総まとめのような濃厚な数日間でした。12月8日、44歳の誕生日当日がGOMES THE HITMANのライブとなり、朝からお祝いの言葉をたくさんいただきながら恵比寿へ。今年で結成24年となるGOMES THE HITMAN、メンバーみんなと大学のキャンパスで出会った1992年、僕はそのとき18歳だったはずです。長い長い時間が経ったのだなあ。今回のライブ、本番前のリハーサルをあんまりやらないようにしよう、という裏テーマがありました(いつもギリギリまで練習してしまうのです)。その約束がステージ上でのフレッシュな気分の立役者だったかもしれません。満員御礼のなかライブがスタート。
冬恒例、PEANUTSの「Christmas is Coming」が鳴り響いてステージへ駆け込むはずが流れてきたのは夏のライブで使った「サマージャム」インスト、僕の確認ミスで季節感のまるでないオープニングに。本番前のリハーサルをやらないとこういうことになることを思い知るのです。謝罪とやり直し、グダグダのなかで始まったライブでしたが、なんだかGOMES THE HITMANっぽいな、とも思いました。「北風ロック」「北風オーケストラ」と夏の名残を吹き飛ばすようなウィンターソングでスタート。「サテライト」も冬の星空の彼方にある衛星のようなイメージで。


この日僕は10月に買った新しい古いギターを弾きました。普段だったらアコースティックギターを使う曲も全部エレキで(「寒い夜だよ」「会えないかな」だけプレゼントとして用意したギタレレを弾きました)。思えばGOMES THE HITMANは結成初期からCDレコーディングを経験するくらいまでずっとエレキギターしか使っていなかった。いいギターを持っていなかったから「僕の鳴りの悪いこのギターは」で始まる歌があるのです。「星に輪ゴムを」は、この1964年製のギターを買うきっかけとなったジャクソン・ブラウンの「The Road」という曲にインスパイアされて書いた曲。「シネマ」も昔より上手に感情を乗せられるようになったなあ、といろんなことを考えながら演奏しました。良い曲を書いた過去があって、そして今があって本当に嬉しい。
新曲「baby driver」は演奏するたびに楽しい。今年書いた曲をこうやってバンドで鳴らす幸せ。「ブックエンドのテーマ」は2014年のバンド再始動のあとに書いてソロで歌ってきた曲。GOMES THE HITMANに似合うなと思ったのでセットリストに載せました。「寒い夜だよ」と「レモンひときれ」は最初期の楽曲、冬の歌が多いバンドですね。「お別れの手紙」と「train song」は姉妹のような、言うなれば組曲。歌詞を噛み締めながら歌う。この日、会場までの道程を2002年作品『mono』を爆音で聴いてきた、という話に導かれて当時の心細さや不安、いらだちについてのMC。「情熱スタンダード」には一層の優しさが付帯したと思うし、「夜明けまで」は希望の色が濃くなったように感じる。


「愛すべき日々」も2003年当時は本当に演奏するのが大変な曲で難儀したんだけど、今こういうふうに思ったように歌えるのって不思議。余計な力が抜けたのだろうか。「手と手、影と影」はもはや僕の手を離れて勝手に先へ先へと先導してくれる力を持つ曲。僕はただ歌が進んでいくのについていけばいい。「memoria」は会場みんなの声でネクストレベルまで昇華する感じがしました。「雨の夜と月の光」はできれば秋のスターパインズカフェみたいにギターを放り出して両手を広げて歌いたいな。本編が終了。
年末恒例の景品大会、旅先で買った塩(ふたりも)とか健康グッズとか力の抜けたものばかりでしたが楽しんでいただけたでしょうか。僕は今年25周年を迎えたR.E.M.『Automatic for the People』限定木箱エディションを。そう、今年で僕は上京してきて25年。東京最初の1年僕を支えて救ってくれたのがこのアルバムでした。特等賞はギタレレ。あちこちいろんな街へ連れていった可愛いやつでした。「会えないかな」演奏とともにプレゼント。1年のご愛顧に感謝して。応援ありがとうございました。来年も再来年もよろしくお願いします。
アンコールで「sweet december」、この曲もソロバンド編成とGOMES THE HITMANとでは少しずつ解釈が違って、それぞれ面白い。エンディング、あれ?エンディング?と思っているところで誕生日サプライズをかけられて、嬉し恥ずかしケーキのキャンドルを吹き消す儀式。いくつになってもこういうのはありがたいものです。最後は20年前に初めて出したCDのオープニングトラック「僕はネオアコで人生を語る」、最高に鳴りのいい1964年のMartinのギターで弾いてやった。「僕の鳴りの悪いこのギターは/長く短い本当の愛を歌う」。自分のキャリアの始まりがこの歌で本当によかったなあと思います。
人生は続くのです。カレンダーのように。

遠くから近くから、ご来場ありがとうございました。