
去年のフジロックで偶然出会い、大好きになったむぎ(猫) という天国帰りの猫がいて(2月にちよだ猫まつりで“対バン”します)、こないだライブを観にいって、やっぱり素晴らしかった。終演後に一緒に写真を撮ってもらうときに「山田ちゃんのインスタ、ポチ実ちゃんもチミママちゃんもいつもいい写真ばっかりで、毎日見ちゃう。むぎも猫町が羨ましい!」と、むぎちゃんの口から猫町とかチミママの名前が出てくるのが嬉しくて「むぎちゃんも東京来るときには猫町に泊まったらいいよ!」とかなんとか興奮してしゃべったんだけど、今日はそのチミママの話。
夏になると蚊アレルギーで耳が真っ赤に腫れ上がって痒くなってしまうチミママは、蚊のいない冬のほうが快適そうにしてて、うちに通ってたくさんご飯を食べるもんだから冬毛も相俟って丸々と健康そうなのだけど、やっぱり冬は冬、どうしたって寒い。だからプラスティック製のコンテナケースのなかに段ボール箱を仕込んで毛布を敷いて、寒い夜はここで寝てくれないかなと思って庭の隅に置いたんだけど、元野良の地域猫であるチミママが思い通りになるわけはなくて、ここ最近はポチ実が別荘感覚なのかなんなのか、そのなかで昼寝をしたりしていて、そろそろ片付けないとなあと思っていた。

昨日の真夜中過ぎに鎌倉から帰ってきて、ふと庭を見たらチミママがその“シェルター”からぴょんと飛び出すのが見えて、「わ!」っとなった。いつものようにご飯をあげたらチミママはペロリと平らげて、また箱の中に戻っていったのだ。ポチ実はすぐそばにチミママがいることに興奮して鼻息をフハフハ言わせながら気が気でない様子だったけど「ちょっとこのまま過ごさせてあげようよ」と2階の寝床に無理やり連れていった。夜が明けて、そっと庭に出てみるとチミママが少し焦って、しかし眠そうにシェルターからまたぴょんと飛び出したので「いいよ、ママン、そこにいていいよ」と、雪が降り出した空の下でなんとかこちらの意図を伝えようとゆっくり話しかけた。するとまたママンは箱の中に戻ったから、彼女にはその箱の意味が「わかった」と思った。
雪はどんどん降ってきた。ポチ実はずっとそわそわしている。この庭はほかでもないポチ実の庭なのだから当然だけど、この雪がどうにかなるまでいさせてあげようよ、と背中をさする。どんどん吹雪いてきて、シェルターに雪が吹き込むのが見えたので段ボールとビニール袋で作った“ひさし”を取り付けようと思ったのがいけなかったか。僕がひさしを持って庭に出るとチミママは警戒してさっと木に登り塀を伝ってあっという間にどこかへ行ってしまった。だから、こんこんと雪が積もったうちの庭に、今はチミママの姿は、ない。チミママは最近態度が軟化したとはいえ、やはり触らせたり手からご飯を食べたりしてくれない気高き猫なのです。みんなインスタグラムを見て安心したり喜んだりしてくれているところに申し訳ないのですが。
それでも心がほっこりするようなことがいくつかあった。雪の降るなか、通り一本向こうの西山さん(仮名)だと思しき方が栄養のあるフードを「チミママとチミちゃんへ」とポストに直接届けてくれているのに気付いた。お隣のノアちゃんちからは使い捨てカイロがママンへのメッセージとともにドアノブにぶらさがっていた。僕は箱が少しでもあたたかくなるようにお湯をいれたペットボトルを置いたり、乾いた毛布のなかにホッカイロを仕込んで、庭のライトをつけてチミママが帰ってくるのをポチ実と一緒にずっと待っているところです。猫町にこの冬初めて雪が積もった日。またいろいろ報告しますので。
猫騒動日記の第7シーズンはこれにて終了、春の訪れとともに第8シーズンとしてまた新しい季節を更新していきます。
