
グラミー賞とアカデミー賞の日は朝から楽しい。こないだのグラミー賞はハイライトらしい見せ場がなくてがっかりしたけど、昨日のアカデミー賞は賑やかで面白かった。受賞者がたくさんの人たちに感謝を述べるシーンを見ると僕はいつも感動して泣いてしまうのだ。どの目線からの涙なのか自分でもわからない。特筆すべきは主演女優賞のフランシス・マクドーマンドの受賞スピーチだった。マイノリティ、ジェンダー、トランプ政権、アメリカが抱える苦悩に向けて毅然と発せられた言葉と笑顔だった。これから日本で公開される映画がたくさんあって楽しみになる。『君の名前で僕を呼んで』が気になる。スフィアン・スティーヴンスやセント・ビンセント、クリス・シーリーの演奏も素晴らしかった。
『シェイプ・オブ・ウォーター』に作品賞の座を譲ったが、とても評価の高かった『スリー・ビルボード』を観にいった。ずっと観たかった映画だったけど予想以上でした。暴力と痛み、悲しみと怒り、後悔、復讐、色濃い影と少しだけ差す光をかき回すような、極めてアメリカ的な物語。エンドロールが終わって深い溜息を吐き出しきってしまうまでしばらく立ち上がれないようなやつだった。架空の町には「エビング(Ebbing)」という名前が付けられていて、それは満潮(high tide)の対義語、「引き潮」という意味だ。この町に、このあと波のように押し寄せてくるのはどんな事件や出来事や感情なのだろうか、と物語の少し先の未来のことを妄想しながら帰路につきました。