with kickingbirdsというソロ初期のバンド編成で、キセルとの2マンだった。初めて会ったときに「今度安宅くんがうちに歌いにきてくれるんですよ」という岸本さんに「それ、僕も行ってもいいですか?」と直訴して2008年の2月に安宅くんとふたりでライブをしたのがチャッツワースとの始まりでした。だからそれから10年のお祝いに関しては安宅くんにも感謝しないといけない。
10年とは長い道程だ。奇しくもこの日は東日本大震災から7年目の日、そして今年は『新しい青の時代』から5年。来年になるとソロ第一作の『pilgrim』からも10年ということになる。とにかく加古川という、どこにあるかも知らなかった街に年2回くらいのペースで通うようになるとは思わなかった。縁ってすごいなあと思う。いつもお客さんがいっぱいで、それは店主である岸本さんの人徳がなせるわざだ。ライブ前日に加古川入りした僕は池田聡さんのライブを観させていただき、打ち上げまでご一緒させてもらった。チャッツワースがこれだけ音楽イベントをやるようになったのは逆に自分のせいだ、ということも僕にはわかっている。この2日間、岸本さん夫妻はずっと楽しそうでした。


この日のライブはリクエストをメインにセットリストを組み立てました。オープニングで歌った「歓びの歌」は初めて加古川に来るまでの道程で歌詞を書き上げて初めてこの場所で歌った歌。チャッツワースと密接に結びつく歌になった。「カフェの厨房から」もこのお店がなければ作り得なかった歌。リクエストをいただいた「SING A SONG」はいつもライブ終盤を盛り上げる曲だったけど序盤に演奏することでまた新鮮な響き。「euphoria」のようなレア楽曲に光を当ててくれるのがリクエストのいいところで、久しぶりに歌ってみたこの歌も時間を巻き戻すような感慨がありました。
HARCOとの共作「春のセオリー」へのリクエストがあったので、そこからカバー選曲コーナーへ。スピッツの「猫になりたい」は好きになりなおした曲。この日は去年名古屋で初めてスピッツのライブを観させてくれた恩人の娘さんと旦那さんが来てくれて嬉しかった。小沢健二楽曲のリクエストには最新曲「アルペジオ」を。僕がオザケン大学について語るのに対し、アンケートには「山田学園の生徒です」と書く人が何人もいて面白かったな。「アルペジオ」からメドレーで「どこへ向かうかを知らないならどの道を行っても同じこと」へ続いて『新しい青の時代』についての話。
10年前に出会って岸本夫妻とは一緒にいろんなところを旅したけど、尾道に一緒に行ったことがきっかけで完成したのが「平凡な毎日の暮らし」だった。そのあとすぐに大きな地震が起きたのだ。7年前のブログを朗読。「2011年3月11日のことを」という文章。そこから「ハミングバード」、これもライブの最後に歌うようになった曲だけど、静かな想いをこめて歌うとまた違う印象がありました。「春のスケッチ」も少し様子の違うスケッチだったと思います。


古い曲から新しい曲まで10年を振り返るような内容の夜になりました。泣いてる人が何人か見えてもらい泣きしそうになったけど、「punctual punk song」でみんなオイオイ拳をあげてニコニコで、それだけでもこの曲を作ってよかったなあと思った。やっぱり新しい季節の出発点であるチャッツワースは特別な引力のある空間、今までで一番いいライブができたような気がしました。また新しい5年や10年の始まりになりますように。ご来場の皆さん、駆けつけてくれたPAのさなださん。そしてチャッツワース岸本さん、はつ江さんありがとうございました。



