2018年05月07日

巣巣15周年WEEK “詩と音楽と珈琲”(2018年5月5日 @ 等々力 巣巣)【ライブ後記】

巣巣の15周年記念のお祝いイベントが5月5日に開催されました。僕が巣巣に初めて訪れたのは2010年。それから長い時間が流れ、8周年、10周年、そして今回の15周年に辿り着いたのです。今回のイベントは「時、とき」をテーマに詩を書き朗読することが出演者に課せられました。第一部は店主岩崎さん自身の朗読からスタート。珈琲焙煎人アアルトコーヒー庄野さんの男っぽい詩の披露も“らしい”なと感じました。ヒサマツエツコさんは妖精のような人、水滴が落ちる音に耳を澄ますようにその言葉を聞く。イシカワアユミさんはピアノと声が一体になったよう。キッチンシスターズのお二人は永井宏さんの意思を継ぐ凛とした佇まいで。

第二部は高橋徹也さんから。タカテツさんは音楽と朗読の境界をすでに越えている人、この日も異空間を醸し出していました。近藤研二さんは唯一詩を詠まず、ギターの音で表現。高橋久美子ちゃんはさすがの貫禄、その声の背景に様々な風景が浮かぶ。僕も1つ、「春」という詩で共演しました。僕は「きれいな言葉で」という詩を読みました。もともとメロディがついている歌詞なのだけど、言葉だけを抜き出して詩として読むときの響きがとても気に入っています。

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春の巣巣では永井宏さんの展示ライブが恒例だったのが、今年はおやすみ。なので代わりに永井さんが歌詞をつけた「くよくよするなよ」を歌いました。「小さな巣をつくるように暮らすこと」はもちろん巣巣がなければ、岩崎さんがいなかったら書かれることのなかった曲。「my favorite things」には好きなものことがたくさん詰め込まれているけれど、巣巣は間違いなく“大好きな場所”。最後にリクエストを受けていた「Birthday」、これはさだまさしさんのカバー(「鶴瓶の家族に乾杯」のテーマソングですね)。遊びにきていた岩崎さんのお母さんが泣いて喜んでくれたのが僕のこの日のハイライトでした。

けものの青羊ちゃんがギターを弾きながら歌うのがすごくオルタナな感じで新鮮、とても良かった。トリを務めたのは草とten shoes、店主が始めたバンドはどんどん成長して堂々としたステージを見せるようになりました。五十嵐くんの詩は焦燥感があって力強く、綾ちゃんの詩も羽根を持った言葉。最後に岩崎さんの15年を振り返る詩もスケールが大きくて素晴らしかったです。3時間越えの長丁場、しかし濃密な時間であっという間でした。ご来場いただいた皆さまに感謝。そして巣巣の15周年に心からおめでとう。

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きれいな言葉で/山田稔明

何から話せば 僕らの時間と距離が溶けてゆくんだろう?
巻き戻りはしないんだろう?
暑いか寒いかのこの世界で 気の利いた挨拶もできないで
嗚呼、僕は相変わらずさ

手紙でも書けば素直に 思いの丈を伝えられるかな?
日に焼けた その便箋で
夜に書いて朝に読み返して 首を傾げてまた書きなおして
ほらね 君も相変わらずだ

遠回りして 壁打ちテニスみたいな 面倒くさいやり方で
答えあわせをする前に

きれいな言葉で 美しい日本語で
君はその愛すべき日々の機微を 書きとめて 繋ぎ止めて
小さな灯りと穏やかなシナリオで
ほら 夜がまた新しい一日のページをめくるように


いくつになっても僕らは 思い描いた大人にはなれないし
地図を読むのもへたくそだ
でも 今が一番楽しいし 曲がり角の先も面白くて
「昔はよかった」とは思わない

想像してみて 天国も地獄もないって ジョン・レノンが歌うように
匙を投げるその前に


きれいな言葉で 新しい日本語で
名前のない この五つ目の季節を 僕は今なんと呼ぼう
静かな祈りと緩やかなスピードで
ほら夜がまた色とりどりの光で まばたきをするよ

目を凝らして 耳を澄まして
真夜中の猫のように
ため息をつくその前に

きれいな言葉で 美しい日本語で
君はその愛すべき日々の機微を 書きとめて 繋ぎ止めて
声を弾ませて よく笑う唇で
また朝が来て 新しい一日のページをめくるように
Posted by monolog at 14:05│Comments(0)