もう1週間経ってしまいましたが、昨日のことのように鮮烈な楽しい夜でした。GOMES THE HITMAN13年ぶりのレコ発ライブを振り返ります。前日の『新しい青の時代』アナログ盤レコ発が終わって、僕はかなり疲れてしまって珍しく打ち上げもせず帰宅。泥のように眠って朝を迎えました。自分でも不思議なくらい気持ちの切り替えができて、昨日とは別の自分のような感覚でステージに登ることができたことが驚きでした。1週間のタフなロードで疲労も最高潮のはずだったけど一番いい歌が歌えた気がする。梅雨明けからずいぶん経って、むせ返るような湿った夏の空気。吐息のような重苦しい夏をにらみつける「way back home」からライブはスタートしました。『SONG LIMBO』を象徴するオープニングナンバーです。
『SONG LIMBO』は13年ぶりの新録音盤でありながら僕にとってはGOMES THE HITMAN裏ベスト盤のように感じる。時代時代の思い出が蘇るのです。「way back home」のくぐもった雲を蹴散らすように「虹とスニーカー」と「晴れたの日のアスリート」が光の輪をふりまく。「最後の晩餐」は2000年代前半に頻繁に演奏されたポップソング。今年の春に僕によって再発掘された歌です。「東京の空の下」は堀越ボーカルの未発表曲、「お別れの手紙」から続くストーリーと言えるでしょうか。「hello hello」も改めて良い曲だなあと思い直し。「ハミングバード」へと繋がった曲でした。
「世紀末のコロンブス」ではギターソロを失敗した僕がくやしくてリベンジする(そしてまたなんとなく失敗)というシーンでみんな笑った。「晴れ男と雨女」は「饒舌スタッカート」キャンペーン中の九州で書いたことを思い出します。「黄昏・夕暮れ・夜明け」はポップなメロディの影に隠れて歌の真意が伝わりにくい曲だと思っていたんだけど、もうそれもどうでもよくなった。長い時間が経ったのだなあと思う。
村田和人さんの『ド・ピーカン』のために録音した2曲をこの日演奏できてよかった。僕(僕ら)が歌い継いでいかないといけない歌だという自負がある。湯川トーベンさんが地方でのライブで「村田の新しいアルバムのなかで、ゴメスの2曲が抜群に良いんだよ」と言いふらしてくれていたらしい。そういう伝聞は嬉しいし励みになる。「恋の見切り発車」も「桃色の雲」も『omni』の頃の空気を纏っている。「fielder's choice」もその頃の曲。カスタネッツを招いて企画した自主企画「fielder's chice」のために書いた。「笑って泣いて暮らしてんだ/ふわっと浮かんで暮らしてんだ」と殊更な思いと祈りをこめて歌いました。
「スミス」はGOMES THE HITMANの最初期から演奏してきた曲。2016年に『pale/みずいろの時代』にソロでの演奏で収録したけど、僕にとってはこのバンドで歌うのが本筋だと思っている。「北の国から」も「スプリングフェア」も同じ。黎明期のGOMES THE HITMANの定番曲、これらの歌を演奏するときはいつも自信満々で誇らしかった。「山で暮らせば」は本当は山でなんか暮らしたくない僕の天の邪鬼のなせるわざだ。本当のことも小さなウソも織り交ぜて、僕は25年歌を歌い続けている。ありふれた言葉でかためられた歌が街じゅうに流れても気にしない、聞こえない、と思いながら。
2018年に『SONG LIMBO』というCDをリリースできたことに大きな意味があります。この作品のおかげでまだ見ぬ未来への希望とか夢がむくむくと入道雲のように浮かんできたのです。7月25日に全国リリースになる『SONG LIMBO』、オフィシャル通販STOREではすでに連日発送作業を行っています。ぜひすべての皆さんに聴いてもらいたい。懐かしくて新しい、とても不思議なレコードです。立ち見も含めて満員御礼、たくさんのお客さん。ご来場ありがとうございました。8月にまた会いましょう。
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