2018年07月23日

『omni』を回想する・前編【00-ism】

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GOMES THE HITMANの『omni』が発売されたのが2003年7月24日。15年前の今日はちょうど店着日、いわゆるフラゲ日なので、当時の記憶をたぐりよせて回想してみようと思います。今週発売になる3枚組ボックスセット『00-ism [mono/omni/ripple] 』のガイダンスにもなるかもしれないので他の2枚についても追って試みを。順序が変則的になりますが、まず『omni』について。GOMES THE HITMANにはインディーズ時代にもミニアルバムとフルアルバムがあるのでどう数えるのかが難しいんだけど、『omni』は『mono』に続く“4thアルバム”ということにしたいと思います。

2002年2月に『mono』をインディーレーベルからリリースしたバンドは6月に渋谷クラブクアトロでのレコ発ライブを筆頭にたくさんのライブを重ねた。メジャー時代よりも演奏活動に力を入れるようになったのは、所属事務所からの給料がなくなって些少でもバンドへの収入を欲したという理由もあるけれど、メンバーが5人から4人に減ったバンドの“ライブ体力”をとにかく養いたかったのだ、と今から振り返るとそう思う。その年の10月に渋谷クアトロでのイベント「in the city 2002」へのオファーがあり、ドラム高橋の都合が付かなかったにも関わらず出演を決めたのはクアトロのステージで演奏する機会を逃したくなかったからで、サポートに盟友 溝渕健一郎(セロファン、カスタネッツ)を迎えた編成で出演した。

このライブが文字通り転機になった。たまたまそこに居合わせたVAPというレコードレーベルのディレクター氏が僕らの演奏に感銘を受けて『mono』に辿り着き、その翌日からはもう次作のリリース契約の話し合いが始まったのだから出会いというのは予期せず突然なもの。再びメジャーレーベルに戻れるというのがその時はとても嬉しくて、制作意欲も湧きたくさんの歌が浮かぶのを書きとめたことを思い出します。年をまたいでミーティングは続き、僕はアルバム制作費でアップルPower Mac G4とDTMソフト ProToolsを買ってもらった。制作環境に大きな変革が訪れたわけです。

『omni』というアルバムタイトルは最初から決まっていた。前作『mono』完成時には「次のアルバムは『mono=ひとつ』と呼応する『omni=すべて』」と僕が言い切っていたのです。収録曲についてはすでに書かれた曲が半分。「20世紀の夏の終わり」「day after day」「千年の響き」はもう存在していて、「carolina」と「happy ending of the day」は楽曲提供用に僕がコンペに出して採用されずに戻ってきたのをGOMES THE HITMAN用に歌詞を書きかえた。続いて、R.E.M.の「E-BOW THE LETTER」という曲から発想を得て「それを運命と受け止められるかな」が完成する。E-BOWとはエレクトリック・ボウの略で振動電流によってギターのサステインを演出するホッチキスみたいな形のもので、R.E.M.のサウンドに触発されるようにギタリストのアッキー(藤田顕)はレコーディングでE-BOWを導入することになる。この「E-BOW THE LETTER」はボーカル マイケル・スタイプが友人故リバー・フェニックスに捧げた歌、ゲストボーカルとしてパティ・スミスが参加している。パティ・スミスというカリスマは10年に一度くらいの割合で僕にひらめきをくれるのですね。

時間と予算をかけて『omni』構想はバンドとレーベル、スタッフで練り上げられていくことになる。(後編へ続く)




Posted by monolog at 11:52│Comments(0)