2018年08月02日

『ripple』を回想する・前編【00-ism】

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GOMES THE HITMAN2000年代『00-ism』がリリースになって1週間が過ぎました。レコードショップでは3枚のCDすべてを試聴機に入れてくださってるところもあったり、発売から15年近く経っている3作品が今このときに新鮮に聴かれている(かもしれない)状況をとても嬉しく誇らしく思います。2003年の『omni』、そして2002年の『mono』と記憶を巻き戻してかき集めて文章を書いてきましたが、今回は2005年『ripple』を回想したいと思います。2004年のシングル2作から振り返る必要があるので、少し長くなるかもしれない。個人的には一番混沌とした数年間の季節だったような気がするな。

『mono』、そして『omni』をリリースしてからGOMES THE HITMANの00年代前半の活動状況は少し安定したものになっていた。「猫町オーケストラ」と題したバンドでの企画が恒例化し、2002年に始まった山田稔明ソロの実験的イベント「夜の科学」、そしてライブハウスでの自主企画もたびたびおこなわれ、CDリリースとライブ活動という2つの柱のバランスがうまく釣り合うようになった時期だ。それでも僕は2002年頃から始めた深夜シフトのコンビニでのアルバイトをやめられないでいて、昼夜逆転した生活をずっと送っていたから00年代の曲には夜に物思いして朝を待つ歌が多い。『omni』の次のリリースに関してのミーティングで、僕はレーベルに『mono』からの楽曲のリテイク(再録音)を希望した。もう2003年末には希少盤として入手困難になっていたアルバムのなかの歌を大きなスタジオで録りなおしてみたくなったのは、『mono』のバージョンが気に入らなかったからではなくて、メジャーレーベルを経由してもう一度その言葉とメロディを世に問いたかったから。「夜明けまで」「情熱スタンダード」「忘れな草」がもう一度俎上に載せられ、「男なら女なら」という20世紀からある曲を加えたCDとしてリリースされたのが2004年1月21日。奇しくも「饒舌スタッカート」からちょうど5年の節目だった。「夜明けまで」は西田尚美さんと若かりし斎藤工さんによって映像化された。



活発なライブ活動も継続、シングルリリースに伴うインストア、キマタツトム(ex.シャーペン)を迎えた自主企画「Fielder's Choice」の3回目(スカート澤部くんはこのライブを観にきたらしい)、そして盟友HARCOの企画への出演。そんななかで迎えた春、僕は肺気胸という病気でリハーサル中にうずくまり入院と手術、4ヶ月間の予定をすべてキャンセルすることになった。思い出すことと言えば、この静養期間にアップルのiPodを購入したこと。そのなかに正式リリースより少し早く手に入れたWILCOの『A Ghost is Born』というアルバムと、作りかけのデモの断片を入れて入院中ずっと聴いていた。そのなかにあった「holy tree」という仮タイトルデモは「手と手、影と影」に昇華した。「bluebird swing」という曲は「bluebird」へ、タイトルのなかった曲は「RGB」になった。

静養期間中、僕が書いた曲たちは動けない本人を尻目にひとり歩きしてくれた。SDガンダムというアニメーションのオープニング曲に「太陽に焦がれて」という曲が抜擢されたのもその時期だった。「RGB」は映画「タナカヒロシのすべて」のなかで使われることになりベース須藤さんの家で映画バージョンをレコーディングした。「明日は今日と同じ未来」という曲を書いたとき僕は本当にくたびれていたけど、そのくたびれた感じが楽曲に心地いい達観と諦観を付帯させたと思う。レーベルのディレクターとドライブしながらこの曲のデモを聞かせたとき、なんだか車中を静かな感動のようなものが満たしたことを憶えている。そしてその「明日は今日と同じ未来」はプロダクションIGが手がける地上波アニメ『お伽草子』のオープニング曲に抜擢された。

僕の復帰後最初の作業が「明日は今日と同じ未来」のレコーディング。メンバー4人とPLECTRUMアッキー、いつものスタッフでスタジオに戻れたときは嬉しかったけど、とても不安だった。僕はそれまでずっと吸っていた煙草をやめて、声も以前とは変わったと思う(それがいいことなのか悪いのか当時わからなかった)。今でも2003年までの作品とそれ以降では“同じだけど違う自分”が歌っているような感覚があるが、僕は今の声がどの時代よりも好きだ。この曲は好評をもって迎えられ、『omni』に続く新しいアルバムの構想が練られ始めた。2004年は病気静養がありながらもシングルを2枚リリースした不思議な年になった。

僕が自宅スタジオに籠もってPowerMac G4とProtoolsで作り込んだデモを制作するようになったのは2004年の静養期間がきっかけだ。今回の3枚組ボックスセットのリイシュー作業のために当時のデモをすべて聞き返す機会があったけれど、執念というかなんというか、ほとばしる情念や感情の渦みたいなものがそこにはあって、とても感慨深かったし何度かため息をついた。今日はそのなかから「bluebird」のデモを紹介します。前作収録の「愛すべき日々」でけっちゃんが叩いたドラムをサンプリングして作ったデモだったような気がするけど、もう忘れたこともたくさんある。すべての瞬間を忘れないようにしたいと願うのに、やっぱり少しずつ欠け落ちていく記憶があるのは残念だ。今憶えていることは書き留めたいし、いつか思い出すこともあるのだろうな、と思う。ああ、やっぱり『ripple』については長くなりそうだ。(続く)






Posted by monolog at 11:04│Comments(0)