もう入りきらないくらいパンパンになった巣巣、草とテンシューズの演奏で最後の夜は始まりました。飛び入りで高橋徹也さん、高橋久美子ちゃんもパーカッションで加わりました。なんだかいっぱしのバンドみたいに見えたな。2016年に僕の前座としてデビューしてから2年、今年はCDまで出してしまう、機関車のごとく突進する草テンは来年の干支のイノシシのようにたくましかったです。
僕はさだまさしカバー「Birthday」からスタート。誰かがリクエストしてくれたのですが、巣巣ではさだまさしさんの歌を歌うことが多かった(岩崎さんがさだファンなのです)。「ONE」もリクエストに応えて。「1+1が2」以外の答えがあることを巣巣で何度も経験しました。遊びにきていた近藤研二さんを急遽呼び込んで先週完成したばかりの共作曲「Coffee & Christmas」をイブの夜に再演できました。佐々木真里さんを呼び込んで「月あかりのナイトスイミング」「星降る街」「セラヴィとレリビー」とピアノが美しい曲を。巣巣にアップライトピアノがやってきてからはここで鳴らされる音楽のレンジが広がったのです。草テンから五十嵐くんにお手伝いいただいて「やまびこの詩」、これも巣巣がなければ書かなかった曲。みんなの輪唱がきれいに響きました。



高橋徹也さんを呼び込んで「幸せの風が吹くさ」。僕のライブを観に遊びにきたタカテツさんがどんどん巣巣に馴染んでいくのを僕は不思議な気持ちで眺めたのです。高橋久美子ちゃんもチャットモンチーをやめてすぐに巣巣での作詞ワークショップにゲスト講師として来てくれたことが付き合いの始まり。「my favorite things」を久美子ちゃんのカホンで演奏することになるなんてあの頃は思いもしなかったな。みなさんから手拍子をいただいて盛り上がりました。岩崎さんが大好きなものと人とをかきあつめた巣巣に似合う曲だったと思います。
特別ゲストとして迎えられた福田利之さんは、過酷な公開絵付けの冷遇を楽しく面白く演出してくれました。福田さんとも巣巣で「CDジャケットのためのイラストレーション講座」という面白い試みをやりましたが、本当に巣巣というのは出会いと交流のサロンのような場所だったと思います。ヒックスヴィル中森さんにも登場してもらって永井宏さんの展示ライブでずっと歌ってきたボブ・ディランの「くよくよするなよ」。歌う前に片桐はいりさんからいただいたメールを読み上げました。草とテンシューズと合体して「冬の日の幻」、そして店主岩崎さんの著書『小さな巣をつくるように暮らすこと』からタイトルを借りて巣巣のために作った曲で締めくくり。自分にとってもとても大切な歌になりました。



この空間がなくなってしまうことが実感できないままライブからしばらく経ってしまいましたが、また新しい旅の始まりなのだな、とも感じています。それぞれが放射線状に解き放たれていって、またいつかどこかでめぐり合うのでしょうか。2018年は記憶に残る年になりますが、来年がどんなふうに展開していくかもとても楽しみです。巣巣等々力での16年間、僕は2010年から9年間、岩崎さん、巣巣で出会った皆さん、巣巣に来てくれた皆さん、本当にお世話になりました。
巣巣は年明け1月14日と19日に店内売り尽くしの最後の2日間があります。ぜひとも。
