2019年01月21日

猫騒動 8thシーズン(6) 猫町相関図

猫は毎日かわいいし、かわいいことに慣れない。それは本当のことなのだけど、毎日を忙しく過ごしているとかわいいと思ったことを「かわいい」とおざなり言って済ませたり、言葉にさえしないで(かわいい)と心で思うだけになったりするものである。この忙しい数年を思い返してみると、愛猫についての文章を丁寧に書き記してこなかったなあと反省する。インスタグラムでは毎日猫の写真を投稿しているのだけど、新しく僕と猫を知った方たちに「チミママちゃんはポチ実ちゃんの本当のお母さんなのですか?」等と問われることも多くて、そのたびにハッとする。当たり前だと思っていることが誰かにとっては新鮮なのだ。久しぶりにとある出版社から猫についての原稿依頼があってあたふたしていることもあって、今年はなるべく普段から猫についての記事を書こうと誓ったのです。

ポチ実は2014年、先代猫ポチを失った2ヶ月半後の秋に突如うちの小さな庭に迷い込んだ野良猫。ポチと同じ縞三毛模様、生まれ変わりだ!と信じて疑わない僕が1週間ご飯をあげて手なずけて、えいや!っと捕まえてうちの猫にしたのです。それはそれはかわいい顔をしていて、そのかわいさは4歳になった今も変わりがありません。ただ、僕らがベタベタとくっつき合って暮らしているかというと実はそんなことはなくて、あくまでもポチ実にとって僕はあの日以来「あたしを捕まえて自由を奪った飼い主」という認識らしく、かなりドライな、たとえば思春期の女の子とそのお父さんくらいの緊張感を持って生活を共にしているのです。だから4歳になっても落ち着かずにいたずらするし、僕が思わず「ちょっとチミちゃん…やめてー」とあたふたしてしまうようなことを、する。毎日する。

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僕らが住む街をいつからか仮名で猫町と呼ぶようになった(近藤研二さん宅も2ブロック先の同じ猫町)。この猫町には猫がたくさんいる。飼い猫も、地域猫も、野良猫も。ポチ実がうちの猫になってからすぐ、とてもきれいでクールな眼差しの猫が庭先に現れたのだけど、それがチミママだ。その容姿からポチ実のお母さんかなあと想像していたらご近所の情報で裏が取れた。チミママはこの町界隈でどんどん猫を産み増やしている野良猫だったのだ。チミママはその後むさしの地域猫の会のボランティアスタッフの方に捕獲器で捕まえられて不妊手術を受けて元いた場所に戻されて地域猫になり、今でもほぼ毎日うちにご飯を食べにくる。だから、チミママとも僕は4年の付き合いになるわけだ。

今年に入って、かつてクマと名前をつけていた野良猫が数年ぶりに我が庭に現れた。この猫はチミママが最後の子供(チッチとミンミと名付けて、この子らも保護されて今2匹一緒で元気に暮らしている)を産んだときの父親、警戒心の強い猫ですぐ逃げてしまうのだけど、やっぱり元気でいてくれたことが嬉しい。それで思い出したのが多分ポチ実の父親だったはずの茶白の猫で、この茶白(チミパパと呼ぶ)はポチが元気だったころに一回だけうちの庭の塀の上を悠然と歩き去った。ご近所情報によるとチミパパは数年前にお向かいの家の庭で亡くなっていたのを発見されている。ポチ実の姉妹のチミオ(最初オスだと思われていたのが女の子だった)とサビ子という猫のことも忘れない。このあたりの猫騒動のおかげで僕はご近所に親しくする知り合いがとても増えた。

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近藤さんちのモイとウニ、お隣にはノアちゃんというベンガル猫とマルプー犬のリルくんがいて、お向かいにはマコちゃんというキジ猫がいる。少し歩くとミルちゃんという猫がいて、この猫はポチ実によく似ているからチミママと関係があるのかもしれない。ポチ実は今でも人見知りで内弁慶だけれども、この猫町には交わったり交わらなかったりする軌道のようなものがあって、それは小さな宇宙のようなものを構成している。どこの猫もかわいいし、みんなが元気で長生きすればいいなあと毎日思うのです。この冬もうちの庭にチミママ用の小屋を作ってあげた。電気アンカの低い温度で温めてアルミの断熱材を敷き詰めて快適、二日に一日はその小屋から眠そうに出てきてあくびをして伸びるチミママを眺める朝に出会う。

ポチ実は僕の布団に一度か二度まさぐり入ってきたのだけど、やっぱり自分の寝床で寝るようになった。今年は暖冬なのだろうな、と思う。そして、今日もポチ実を見てかわいいなあ…と思う。きっと明日も明後日もそうなのだろう。猫は平和であり、正義である。なんと自由で美しい生き物だろうか、と毎日毎日、目がさめるたびに思うのだ。カレンダーをめくるように。

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<猫騒動まとめ>

初秋の猫騒動(はじまり)
初秋の猫騒動(続報)
初秋の猫騒動(4日目)
初秋の猫騒動(5日目)
初秋の猫騒動(6日目)
初秋の猫騒動(7日目〜1stシーズンの終わり)

秋の猫騒動 セカンドシーズン(1)
秋の猫騒動 セカンドシーズン(2)
秋の猫騒動 セカンドシーズン(3)
秋の猫騒動 セカンドシーズン(4)
秋の猫騒動 セカンドシーズン(5)
秋の猫騒動 セカンドシーズン(6)
秋の猫騒動 セカンドシーズン(7)
秋の猫騒動 セカンドシーズン(8)
秋の猫騒動 セカンドシーズン(9)
秋の猫騒動 セカンドシーズン(10)/2ndシーズンの終わり

秋の猫騒動 サード・シーズン(1)― ポチ実登場から1ヶ月目の朝
秋の猫騒動 サード・シーズン(2)
秋の猫騒動 サード・シーズン(3)
秋の猫騒動 サード・シーズン(4)
秋の猫騒動 サード・シーズン(5)
秋の猫騒動 サード・シーズン(6)
秋の猫騒動 サード・シーズン(7)ポチ実の弟…?
秋の猫騒動 サード・シーズン(8)いりこがつなぐ縁
秋の猫騒動 サード・シーズン(9)チミオは弟ではなく妹だった…!
秋の猫騒動 サード・シーズン(10)3rdシーズンの終わり

猫騒動 4thシーズン(1)新しい季節のはじまり
猫騒動 4thシーズン(2)2014年の猫騒動
猫騒動 4thシーズン(3)ポチ実の“home sweet home”
猫騒動 4thシーズン(4)ポチ実の“home sweet home”
猫騒動 4thシーズン(5)ポチ実の“回復雑記”
猫騒動 4thシーズン(6)続・ポチ実の“回復雑記”
猫騒動 4thシーズン(7)猫返し神社 巡礼”
猫騒動 4thシーズン(8)いい猫 わるい猫 ふつうの猫”
猫騒動 4thシーズン(9)猫の町内会”
猫騒動 4thシーズン(10)生活の残り香|4thシーズンの終わり”
猫騒動 4thシーズン(extra)チミママの建もの探訪”

猫騒動 5thシーズン(1)新しい季節、春のスケッチ”
猫騒動 5thシーズン(2)出会いと別れの春”
猫騒動 5thシーズン(3)猫がやってきたヤァ!ヤァ!ヤァ!”
猫騒動 5thシーズン(4)初めての夏が来る”
猫騒動 5thシーズン(5)ポチの一周忌”
猫騒動 5thシーズン(6)ようこそ後輩”
猫騒動 5thシーズン(7)リアル猫町オーケストラ”
猫騒動 5thシーズン(8)季節をひとまわり”
猫騒動 5thシーズン(9)ポチそっくりの猫登場から1年…”
猫騒動 5thシーズン(10)ポチ実がうちの猫になって1年/5thシーズンの終わり”

猫騒動 6thシーズン(1)猫とまた新しい生活”
猫騒動 6thシーズン(2)ダライラマ先生に報告”
猫騒動 6thシーズン(3)チミママが帰ってきて地域猫に”
猫騒動 6thシーズン(4)チミママ、その後”
猫騒動 6thシーズン(5)お隣のノアちゃんと来なくなったチミママ
猫騒動 6thシーズン(6)ポチの三回忌、ポチ実の2歳の誕生日
猫騒動 6thシーズン(7)初めての邂逅、チミモイ記念日
猫騒動 6thシーズン(8)2年目のポチ実記念日
猫騒動 6thシーズン(9)チミママが帰ってきた!
猫騒動 6thシーズン(10)チミママその後

猫騒動 7thシーズン(1)ネコミュニケーション
猫騒動 7thシーズン(2)新しい季節はなんども
猫騒動 7thシーズン(3)猫町の夏物語
猫騒動 7thシーズン(4)ポチと紫陽花の季節
猫騒動 7thシーズン(5)ポチ実3歳の誕生日
猫騒動 7thシーズン(6)夏がやってきた
猫騒動 7thシーズン(7)9月2日はポチ実記念日
猫騒動 7thシーズン(8)毎日が記念日
猫騒動 7thシーズン(9)暮れの元気なご挨拶
猫騒動 7thシーズン(10)猫町の大雪、チミママのシェルター

猫騒動 8thシーズン(1)鳴り終わらない猫町ラプソディ|エッセイ集発売から1周年
猫騒動 8thシーズン(2)ダライラマ先生の眩しい眼光
猫騒動 8thシーズン(3)降っても晴れても紫陽花の庭
猫騒動 8thシーズン(5)9月は実りの月

「なんということでもない、ポチ実の話」

Posted by monolog at 18:38│Comments(0)