2019年06月01日

夜の科学 vol.56 extraーunder the milk moon(2019年5月25日 @ 南青山 月見ル君想フ)【ライブ後記】

南青山 月見ル君想フでのソロデビュー10周年のお祭りからあっという間に1週間が過ぎてしまいました。まあとにかく、ここ数年で一番ヘトヘトになった2日間でした。バンド編成のソロとGOMES THE HITMANの2DAYSというのは意識の切り替えがあるがゆえに、意外と疲れないものなのだなあと今さら認識したのです。当初ソロ黎明期のメンバー構成で10年前によくやっていた月見ルでささやかな振り返りを、と思っていたものがあっという間に満席になってしまって2DAYSに、それならばガラッと内容も変えようということで追加公演が2DAYSの初日となったこの日。

佐々木真里さんは『home sweet home』のレコーディングがきっかけでご一緒するようになり、近作では欠かすことのできない心強い鍵盤奏者。スガシカオさんやゴスペラーズのサポート、そして本田美奈子 with WILD CATSであり、ふたりのK.O.以外全員女性という幻のフリッパーズ構成メンバーでもあったというすごい人なのです。そして近藤研二さんは2015年以来公私にわたり親しくさせていただいている親戚の兄ちゃん的存在。学生時代からハイポジを聴いていた僕に「将来こういうふうになるよ」と教えてあげたい。そして立花綾香は二十歳の頃から知る妹分であり愛弟子、ついにメジャーデビューが決まって一旦コーラスを卒業するという舞台がこの日となりました。ライブは僕ひとりの弾き語りからスタート。「点と線」という曲は2000年代中盤に誰のためでもバンドのためでもなく日記のように書いた歌。ソロ活動の原点だったかもしれない。「夏の日の幻」は極めて個人的なポイント・オブ・ビューを突き詰めた歌だから弾き語りが相応しい曲。

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月見ルの大きな月を背負って歌うとき、実際に僕からはその月が見えないけれど、気配を感じるというか、そこに月があるのが、お客さんの顔を見ているとわかる。真里さん、近藤さん、綾香、そして今回の2日間の屋台骨を支えてくれたベースの伊藤健太全員揃って演奏するのは「blue moon skyline」。この日のためにあるような歌。「気分」は真里さんが演奏を熱望した曲、数年ぶりに合奏した。僕の作品のなかでは珍しい淡々としたムーディーな歌だけれど、ソロを始めたころというのはこういう誰に向けるでもない歌をたくさん作っていた。そして真里さんのピアノに誘われて「月あかりのナイトスイミング」、スケールの大きな歌になったなあ…と思う。

そして近藤さんにスポットライトを当てて、初めて一緒に作った「ポチの子守唄」を。僕が作った言葉とメロディを近藤さんが室内楽のような重層的な歌に昇華してくれた。「僕たちはまるで揺れる舟の上」というところで泣きそうになって音程が揺れた。この歌を歌うと時間が巻き戻る、とても大切な1曲。「猫町オーケストラ」は綾香と僕と近藤さんの3声のハーモニーがばっちりだった。この曲も2002年頃書いた、たくさんの時間を経た曲。この日猫の歌が多めだったのは必然。

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近藤さんとふたりのコーナーではまずEテレ0655おはようソング「第2の人生」を演奏。いまだにどこへ行っても「わあ」と楽しい反応のあるこの歌、素晴らしい縁をいただいたなあと嬉しい。近藤さんとこの曲を演奏するとき2番の「靴下」のくだりはギターの伴奏がふたりとも自由になって毎回面白い。そして僕が作詞、近藤さんが作曲を担当した共作曲「猫のふりをして」もふたりで2度目の演奏。猫好きには理解してもらえるかもしれないけれど、普通に考えたらどうかしている歌。そして10分の休憩を挟んで後半へ。

立花綾香とふたりのステージ。彼女がシンガーソングライターを目指して上京した時から話を聞いたりご飯を食べたり、一緒にデモを作ったりしてきたけれど、結局綾香は自分のやりたいことをつらぬいて現在地点までたどり着いたことを僕はよく知っているから7年かけて手に入れたメジャーデビューの切符を自分のことのように嬉しく思う。最初の頃にふたりで作ったデモは当時未発表だった「セレナーデ」だったから、この曲をふたりで。腹から声出てたな、綾香。ずっとコーラスしてもらって感謝してます。ありがとう。

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そして真里さんとふたりでのパートへ。終演後たくさん好評をいただいたのがピアノと歌の2曲でした。「星降る街」は僕がつたないピアノで初めて作ったピアノ曲。昔はピアノ弾き語りにトライしたりしていたけれど最近はぱったりやらなくなってしまった。真里さんは僕のわがままを具現化してくれるミューズのような人。こういうふうに弾きたい、というピアノを弾いてくれる。「些細なことのように」は真里さんにアレンジしてもらった曲。これも「ナイトスイミング」同様にギターの弾き語りではなし得ないスケール感を抱かせてくれました。

近藤さんと綾香が加わって「小さな巣をつくるように暮らすこと」。この曲には終盤会場のお客さんのコーラスも合わさって美しく響いた。ベースイトケンが「日向の猫」を演奏するのは去年の猫町フェス以来か、この曲でもラララのコーラスが祈りのように響いて感動しました。皆さんのハンドクラップで軽快にロックする「太陽と満月」は2DAYSどちらの日も演奏した曲。スタジオやステージの音合わせの最初にセッションすることが多い曲で本編終了。

アンコールで2013年以降急速に親しくなった盟友 高橋徹也がゲストとして登場。「これお祝いに」とR.E.M.のベスト盤のアナログをサプライズ、「な!来月発売のはずなのに!」と僕。この日僕が会場入りしたときに着ていたTシャツが偶然このレコードの柄だったり、休憩の時間に流したのがこのアルバムにも収録されている「Nightswimming」だったという偶然もありました(翌週のタカテツさんのライブではお返しにCDとパンダのお煎餅をお返ししました)。「幸せの風が吹くさ」と「my favorite things」を一緒に演奏、特に「my favorite things」では僕のボーカル、タカテツさんのハーモニー、そこに綾香がオクターブユニゾンで乗っかってくるという、これまでに聴いたことのないアンサンブルに心が震えた。なんだかすごい時間だったな。

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最後は新曲「セラヴィとレリビー」、この曲も2公演とも演奏しました。2日間のセットリストで重複したのは「太陽と満月」と「セラヴィとレリビー」のみ。それだけ今の自分にとってこの曲が大切だということかもしれません。ふと思ったのは「Imagine」と「Let it Be」を合わせたみたいな曲にしたいなということ。夢想かもしれないけれど、そんなふうに感じたのです。この日はドラムレスの演奏だったけど、最初から最後まで足りないピースがなかったように思えたのが不思議。とても充実した2時間強のステージ。

この日から発売になった『pilgrim/home sweet home』アニバーサリーエディション2枚組、終演後にたくさんの握手とサインを。たくさんの方に手にしてもらえてとても嬉しいです。ご来場ありがとうございました。

Posted by monolog at 21:23│Comments(2)
この記事へのコメント
本当に素敵な夜でした。
「夏の幻」はぜひ生で聴いてみたい!と思っていたので、歌い始められた時に鳥肌が立ちました。やはり弾き語りの方がメロディが胸に染みます。
「星降る街」では真理さんのピアノがぐっと空を拡げ、星空が見えるかのようで、その中に山田さんの歌が響き、まるで別空間にいるようでした。
「太陽と満月」「my favorite things」のハーモニーは素晴らしく、全て本当に楽しかった。

山田さんの記念ライブだったけれど、私も素敵な誕生日を過ごさせていただきました(*^_^*)
ありがとうございました
Posted by みーや at 2019年06月03日 00:08
とても素敵な2日間でした。
毎日聴いている曲を生で聴くことが出来て感動しました。
最近にファンになったので『pilgrim/home sweet home』を聴くのは初めてです。
本当に素敵な曲ばかり・・・
ライブ後記 として曲についてのエピソードを読めるブログもとっても嬉しいです。

ピアノの弾き語り、是非きいてみたいです。
今後やる予定はあるでしょうか?
いつか見られると良いです。

ソロ10周年、おめでとうございます♪
今後の活動も楽しみにしています。


Posted by すこーん at 2019年06月03日 00:31