

ザ・カスタネッツ牧野元さんとの1年4ヶ月ぶりのワンマンはライブ数日前の我が家での練習から始まっていた…。何時に来るのかわからない元さんを部屋の掃除をしながら待つ。14時に来るかと思ったら来なくて、ふと窓の外を見たらそこに缶ビールと刺身と白身魚のフライを持った元さんがいた。時計を見たら16時だった。そこから真面目に3時間練習して、しかしそこから5時間くらいお酒を飲んだのだ。いわゆる痛飲というやつだ。どうやって帰したかわからない僕、どうやって帰ったかわからない元さん、酒瓶並ぶ机の上にはとても大事なはずの歌詞ファイルが忘れ去られていた。
という流れで、下北沢入りしたライブ当日、どんな練習をしたかを再確認するところから始まり、曲順をふたりで決めていく。前回同様ふたりともステージに出ずっぱりの、それぞれ代わる代わる歌って、コーラスをつけたり見守ったりするスタイル。スリリングだけど、とても楽しい。これを一緒にできる歌うたいというのはなかなかいない。「元さん、『ムーンパレス』やらないなら僕歌っていいですか?」「お、じゃあおれ『星に輪ゴムを』カバーしようかな」みたいな流れで始まるライブ。
できたばかりのCD『baby driver e.p.』を痛飲した日に渡したところだったのに、元さんは多分ちゃんと聴いてくれていて、パッパッパラと歌を添えてくれた。そういうところが信用できるのだ。「サテライト」も好きな歌だと言ってもらえて嬉しい。カスタネッツの「猫を待つ」は僕の大好きな歌だ。実際元さんは猫みたいな人。「君を想う」という曲にハーモニーをつけようと思って伺ううちに聴き入ってしまって曲が終わる。


カバーコーナーでまず選んだのは友部正人さんの名曲「一本道」。一節ずつ交代で歌う。僕は初めてこの曲をカバーしたが、歌うのがとても難しかった。フィッシュマンズのカバー選びも難航して、練習のときには「誰かをさがそう」「RUNNING MAN」「あの娘が眠ってる」と思いつくだけ二人で歌ったけれど、結局「ひこうき」になった。エレファントカシマシの「四月の風」も元さんの提案、僕も大好きな歌だったので今回初めてカバーできてよかった。「浮き草」というふたりで作った歌、もう書いてから10数年経つだろうか、でも絶対忘れない歌。いつか音源にしたい。
嵐が来る直前のざわざわした下北沢、それでも終わるのが寂しいくらい楽しいライブ。最後の最後に予定になかった「トンネルぬけて」を。風が騒ぐ夜はうちへ帰りたくないよ、という言葉は少なくとも僕の気持ちを代弁していた。ご来場のみなさんの心の声も同じだったらいいな、と思う。元さんが病気して、僕も病気をして、いろんなやりとりを経たあとでの合流だったので、いつにも増して生意気でとても饒舌になってしまいましたが、僕は元さんと2人のステージが大好きです。また来年も。