2019年12月21日

GOMES THE HITMAN『memori』各曲解説「夢の終わりまで」

昨日はお昼にJFN系「simple styleーオヒルノオト」に生出演、「baby driver」の弾き語りもありました。TOKYO FMでは「ブックエンドのテーマ」が流れて、今朝早い大阪FM802の「SATURDAY AMUSIC ISLAND」ではコメントと「魔法があれば」がオンエアされました。アルバム発売が近づき、WEB記事の校正確認があったり、いよいよザワザワしてきた感覚があります。10月に発売した先行シングル「baby driver e.p.」にはPLECTRUM高田タイスケくんとセッションした「夢の終わりまで」が収録されていますが、アルバム本編には異なるバージョンで登場します。今日の「各曲解説」はその「夢の終わりまで」です。

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<GOMES THE HITMAN『memori』各曲解説>

M-1:metro vox prelude
オープニングトラック「metro vox prelude」はメンバーとスタッフ以外まだ誰も聴いたことがない曲です。「metro」とはここでは地下鉄のことではなく、ギリシャ語「metron(=測る)」から引いてきた言葉。ちなみにメトロノームの名称は「metron(=測る)」と「nomos(=制限する)」に由来します。「vox」はラテン語で「声」。僕は中学生のときにこのラテン語をU2のボノが自らを「「ボノ・ヴォックス・オブ・オコンネル・ストリート(Bono Vox of O'Connell Street)」と名乗っていたエピソードをきっかけに知りました(Bono Voxは良い声の意味)。クリスマスイブの真夜中に初めてみなさんが耳にするであろう「metro vox prelude」は『memori』というアルバムの、文字通り「序章」。

M-2:baby driver
2017年の秋に初めてインドネシアのバリ島を旅した。自分が南の島でぼんやりプールに浮いていることが信じられなかったけれど、とにかく忙しく働いてくたびれた僕には、ただただ休養するためのバカンスが必要だったのだ。小さなギターを持っていったので気が向いたら鼻歌を歌った(夜は暗くなったら寝てたのでだいたいお昼に)。エヴァンさんという現地の男性がドライバーとなって僕をいろんなところへ連れていってくれたが、英語の通じない彼とのドライブにドキドキひやひやしてばかりの状況が可笑しくて、それが「baby driver」になった。バリ滞在中に録ったボイスメモ(baby driver voice-memo)があって、それはAメロからBメロまでだいたい完成している。帰国した後あっという間に簡単に全体像ができあがった曲だった。直感的に「わあ、これはすごく、なんというか、GOMES THE HITMANだ」と思って、デモテープも作らずにメンバーに聞かせて、すぐライブで演奏した。直感は間違ってなかった。

M-3:毎日のポートフォリオ
記憶が正しければ「毎日のポートフォリオ」は2009年、あるいはもっと昔に書いた曲だ。WILCOの『BEING THERE』や『SUMMERTEETH』、彼らがビリー・ブラッグとやったレコードが好きで、そんな感じの曲を想定して作った。だから当時一人で作ったデモにはバンジョーとホーンセクションが入っていた。2010年頃よく弾き語りで演奏していたのだけど、ここ数年また僕のなかで曲が生き生きと蘇ってきて、バンドで演奏してみたくなった曲。こういう8ビートの歌はGOMES THE HITMANには意外と少ないから、ライブで演奏するのも新鮮で楽しい。ポートフォリオとは書類をファイルするケースのこと。僕らは毎日、見て、聞いて、感じて、思ったいろいろな物事を心のフォルダにパシャっと保存しながら生きていて、ときどき振り返るし、また歩き出す。暮らしのアンセム。

M-4:魔法があれば
「魔法があれば」もかなり古い曲で、2010年頃にはすでに弾き語りのライブで演奏していた。とにかく歌詞が思い通りにうまく書けていて、曲調もポップだったからずっとレコーディングしたかったのだけど、なぜか僕自身が頑なに「これはGOMES THE HITMANの曲だ」と思い込んでいたためソロ作には収録しなかった。今回のレコーディングで共同プロデューサーとしてPLECTRUM高田タイスケくんに加わってもらったのは、それこそ“ギターポップの魔法”をかけてほしかったから。「そばにいるだけで声なき声で/通じあえる魔法があれば」というのは「たとえば心が目に映る答えならば」を言い換えたフレーズであり、僕の中でこの曲は「手と手、影と影」から繋がっている。

M-5:夢の終わりまで *NEW
『memori』に収録されたなかでもっとも古い曲。2004年に書いた曲だからもう15年も昔。若いロックバンドへの楽曲提供を依頼されたプロジェクトのなかで「夢の終わりまで」の原型ができたのだけど「これは自分で歌うべき曲」と感じて、もう1曲別の曲を書きなおした(それは人気アニメのオープニングソングになった)。『ripple』リリース時のツアーでもセットリストに組み込まれていたから、僕のなかには次のアルバムの核となる曲と考えていたはずで、それでも完成形が見えないまま月日が進む。今年初夏に行われた、高田タイスケのディレクションによるセッションではドリーミーで洗練されたポップスに昇華されたが(先行シングル『baby driver e.p.』収録)、アルバム制作過程の土壇場で2004年デモに極めて近い形でメンバー4人だけで再録音、アルバムにはそのバージョンが収録される。30歳だった自分自身の初期衝動を信じてみたかったのだ。

Posted by monolog at 09:21│Comments(0)