僕にとっての山田稔明ソロ作品初体験は『新しい青の時代』でした。それからありがたい事に、ライブアルバムやGOMES THE HITMANの新譜まで御本人から直接手渡され、毎度、驚きと感動が届く僕の
ライブラリですが、『緑の時代』はまだ手元になくて発売から少し時間を置くかたちで、つい先日開始されたサブスクリプション配信で聴かせていただきました。なんとすべての工程をひとりで作り上げたという今作。まず再生して始めに思うのは声の安心感と包容力。サウンドはアコースティックで瑞々しく、心地よい素朴さもあり、楽器の手触りが直に感じられるようなとても優しいアルバムという印象。ひとりの演奏だからグルーヴの粒が緻密なまでに揃ってる。そしてメロディとコードの絡みがどの作品も美しい。
僕は山田さんを作詞家としてもすごく尊敬していて、サトミツ&ザ・トイレッツ(一緒に携わっている課外活動バンド)でもその制作過程を目の当たりにしたからより凄みを感じる。いつだったか御本人が「曲作りって作詞の事だと思ってるから」と言ってたのが強く残っています。文学的でありながらリズミカルな音価を持った言葉選びは目視せずとも入ってくるし、ちゃんと僕の人生ともリンクする。なかには小学生の頃に書いた詩にインスパイアされた曲もあるというから、早熟とも言える感性と奥行きには脱帽です。
曲として生み出された時期は様々だという全11曲。丁寧に紡がれた音世界に目を凝らしていたら、あっという間に過ぎていった3分半の集合体。リピートされて再び流れ出した1曲目に、僕にとっての「点と点」はどんな「線」になったのだろうと思いを馳せると、心に残ったその余韻は、やはり「緑色」でした。
伊藤俊吾(キンモクセイ)

山田稔明『緑の時代』を各種サブスクリプションサービスで聴く