昨年末に決めたこの日のライブ、『slo-mo replay』という作品にはまだその頃名前がなく、曲数も定まらず、本当に春のツアーがレコ発ツアーになるかどうかは五分五分っていう感じだったから、前の週の名古屋、京都、神戸の旅から繋がって吉祥寺にCDを持って辿り着けたことが本当に嬉しかった。この公演は唯一ライブ配信での中継があったのでライブのオープニング映像を前の日に作った。それがこれ。自分自身の高揚するテンションが観ているみんなにも伝染すればいいなと思ってワクワクしながら作ったのです。

オープニングのBGMは須藤さんに頼んで「スプリングフェア(remix)」というのを急ごしらえしてもらった。その音を聴きながらステージへ。ツアーファイナルは「センチメンタル・ジャーニー」から。20数年前もこの曲からライブが始まることが多かった。続く「tsubomi」はメジャーデビュー時に再録したので今回のプロジェクトの対象からは外れたけれど紛うことなくインディー時代の核となる曲だったからこのツアーでは毎回演奏した歌。先週のラジオをみんなで録ったときに須藤さんが「遅れてきた青春」の完成版は録った音を適当な音量で再生してみたらもうそれでGOMES THE HITMANだった、という話が印象的だった。ライブで演奏しても同じようなことを僕も感じる。京都神戸そして東京と演奏した「keep on rockin'」、歌うのがとても楽しかった。“スローモーリプレイ”はこの歌から引いてきた言葉。
DISC1の秋冬から春のモードに対して、DISC2の夏感いっぱいの歌たちはきっとこれからの季節にすごくよく似合う。僕は今年四半世紀前に書いた歌たちをカーステで大きな音で鳴らしながら海へ行くことを楽しみにしているし、真夏のライブで汗いっぱいになりながらあの頃夢想した風景をリアルに感じながら演奏することを心待ちにしている。「believe in magic in summertime?」から始まるパートはまさに「夏支度の最中」という感じだった。「青年船に乗る」では日本ギタポ界のマイケル・ムーア監督登場。




タイちゃんを迎えて「魔法があれば」。四半世紀前の楽曲群のなかにポーンと最近作の歌が登場、しかし地続きの道を淡々と歩いてきた感覚がある。ずっと見えない魔法について歌っているのだ、僕は。時間軸はまた25年前に巻き戻って「オレンジ〜真実」へ。再レコーディングして一番しかるべき形にトランスフォームした歌だと思っていて、ライブで演奏するときの気持ちも昔よりクリアになった。「レモンひときれ」も「coffee」もこの10年はアコースティックギターで演奏するのが当たり前の歌だったけれど、四半世紀前は楽器を持ち替えしたりしないでひとつのステージを一本のエレキギターでやってたのを思い出して、今回のツアーはアコギも車に積んであったけれど結局 MartinのエレキF-55だけしか使わなかった。これは個人的にはとても象徴的な出来事。
1998年「溶けて死ぬのさ」から2019年「houston」へと続く爆音パート、そこから「手と手、影と影」の流れが僕にとってのハイライトだっただろうか。「手と手」の感触が確実に変わったツアーだった。かけちがったボタン、傷つけたり気付いたり、目に見えない感情を想像することをやめないこと。想像とは創造でもある。REIMAGINEすることが『slo-mo replay』のコンセプトだったけれど、「手と手」まで再創造するとは思わなかった。



告白的なMCから山田と堀越ふたりによる「会えないかな」。配信アーカイブを観たら他の3人のメンバーがちょこんとステージ袖に座って演奏を観ていたことに気付いた。僕とともに最古参のオリジナルメンバー堀越和子。来年で結成から30年になるのだな。本編の最後は「ブックエンドのテーマ」。この流れは毎回感慨深かった。さんざん20代前半に作った歌を歌った締めくくりに歌う同窓ソング。毎回本当に心から思うのです、みんなが元気でそして幸せでありますように、と。
アンコールからはさらにゆるく大学生的なサークル感が増大していく。「スプリングフェア」ではお客さんにステージ上の写真を撮影してもらう試み。公式LINEにたくさんの写真をありがとうございました。このブログの記事ではすべて野口耕一郎くんが撮ってくれた客観的で素敵な写真を掲げた(感謝!)。「僕はネオアコで人生を語る」は本当だったら出ないはずの、キー限界の音があるんだけど何故かステージ上ではスーッと歌えるから不思議。


フィナーレは「雨の夜と月の光」、のはずだったのが鳴り止まない拍手に予定になかったダブルアンコール。ステージ裏で「どうする?なにやる?」とわちゃわちゃして「饒舌スタッカート」に。演奏も歌もめちゃくちゃ。でも超楽しかったよね。ステージ上の左右に置いてあったお立ち台に僕もタイちゃんも登ってギターソロ。大人げない。「饒舌スタッカート」って不思議な曲で、リハーサルで練習することもそんなになくて、ひとりでいるときにギター奏でたり鼻歌を歌ったりすることもない。ただお客さんが目の前にいるときにだけ本気で力の限りに演奏する曲。そんな曲が最後に残っててよかったなと思う。SPRING FAIR TOUR、病気も事故もなく、すべて完走。各地でお世話になった皆さん、ご来場いただいた皆さん、配信で参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました。メンバーみんな、タイちゃんにも心から感謝を。
昨晩ツイキャスで配信したライブアーカイブを鑑賞しながらしゃべったりコメントしたりする試みは瞬発力と思いつきだけで敢行したものだったけれど、思いのほか充実したものになりました。スターパインズカフェ公演のアーカイブ視聴期間はもう終わってしまいましたがツイキャスのアーカイブを本日いっぱいくらい公開しておきたいと思います。3時間もあるんだけど、堀越さんが登場する 1:06:00 頃、高田タイスケくんが登場する 1:23:30 頃、けっちゃんが登場する 2:18:50 あたり、そして最後に再び堀越三登場の 2:32:10 くらいをつまんで観てもらうだけでも面白いかもしれません。いつもなら話さないような興味深い話をしています。ツイキャスのアーカイブはこちらからご覧ください。
3月はずっと楽しかった。春のツアーがようやくすべて終了した感じがします。またすぐに会いましょう。