この映画を観終わったあと、積ん読の山に紛れていたミランダ・ジュライの『あなたを選んでくれるもの』を手にとった。ミランダ・ジュライはマイク・ミルズのパートナーで、二人の間に生まれた子供との会話がきっかけで『C'MON C'MON』の発想を得たそうだが、映画のなかでホアキン演じるラジオジャーナリストが子供たちにインタビューするのに対して、ミランダ・ジュライの書籍のなかでは彼女がインタビュイーに選んだのは「フリーペーパーに売買広告を出す市井の人々」だった。これが読み始めると面白くてしかたない。彼らが売りに出すものは、革ジャン、おたまじゃくし、ベンガル猫の仔、見ず知らずの家族のアルバムなど。そのほとんどがパソコンを所有していない、ということも示唆的というかなんというか。さらには彼らのなかには性転換中の者、インドの同胞を支援する人、ギリシャからの移民、ドロップアウトした高校生男子、足首にGPSを付けられた罪を償っている途中の者などなど、アメリカの片隅で、ひとりひとりがそれぞれ違う、人生にまつわる強烈な物語がインタビューから浮かび上がる。
映画『C'MON C'MON』を観た友人と「子どもってこんなにしっかりしたこと話すかな?」とか「自分が子どもの頃にインタビューされたとしてあんなふうに想いを語れるだろうか」という議論をしたけれど、観劇からしばらく経った今になって思うのは(そしてミランダ・ジュライの本を読んで感じることは)大人も子どもも誰も彼も他者に聞いてほしいメッセージがある、ということで、会話の尊さを再確認させてくれたという意味で『C'MON C'MON』と『あなたを選んでくれるもの』は我々の意識を更新させる、レコードのA面とB面みたいな、表裏一体の意義深い作品だ。とても胸を打たれた。

