佐野元春 & The Coyote Band「WHERE ARE YOU NOW」ツアーのファイナル公演を観た。最初から最後まで素晴らしくて、音楽とはこんなに心を動かすものなのだなと感動した。先月は小沢健二「So kakkoii 宇宙 Shows」ツアーを福岡と東京で観ることもできて、大きいホールで光とサウンドに包まれる興奮、忘れていた感覚を思い出した。そこにまだ戻ってこないのは聴衆の歓声だけ。
佐野元春がコヨーテバンドを従えて歌う歌が僕は大好きなのだけど、この日は往年の名曲から最新アルバムの歌まで時を超えたセットリスト。そのなかでも「SOMEDAY」の言葉、フレーズのひとつひとつが、意識がぐらぐらするくらいリアルに響いて驚いた。全然懐メロなんかではない瑞々しさがあった。『ザ・ソングライターズ』という、24人のソングライターとの対談番組「佐野元春のザ・ソングライターズ」のインタビューをまとめた分厚い書籍のなかで、佐野元春は小田和正との会話のなかで「『SOMEDAY』は人生の明るい部分だけを見て、いつかきっと良いことが起こるはず、という歌ではない。SOMEDAY、いつかきっと、という言葉の裏にはそれと同じくらいの絶望や悲しみが貼り付いていて、それを3分か4分かで歌えたらと思った」という旨の発言をしている。ステキなことはステキだと無邪気に笑える心がスキさ、という歌詞をこの歳になって涙ぐみながら聴くとは。音楽って普遍だけど世に連れるし、心持ちによって違って聞こえる。
思えば僕は(僕らは)子供の頃からずっと、大人になってもずっと、「いつかきっと」って思いながら日々を過ごしている。だからあきらめずにはいられない。まごころとか、信じる心とか、そういう形のないいろいろを。いつまでも。