2023年07月05日

ゴメスの名はゴメス vol.2 “after the long vacation/出発”(2023年7月1日 @ 吉祥寺 スターパインズカフェ)【ライブ後記】

ついにやってきたこの日、と全部の回で思うんだろうな、「ゴメスの名はゴメス」と銘打ったアニバーサリーライブはすべて特別なもの。2回目の今回はメジャーデビューの年である1999年に発表した3作品『neon, strobe and flashlight』「rain song ep」『weekend』を全曲演奏する夜となりました。客席はオールスタンディング、ステージからの景色がいつもと全然違う。みんなが近い。僕は白いシャツにジーンズ、帽子で『weekend』のブックレットのなかの写真をセルフオマージュ、手には双眼鏡と当時と同じペーパーバックを。

1曲目は「光と水の関係」、最高のオープナー。ギターで最初のコードを弾くときの気持ちはなんとも言えない。青い海を目の前にした崖っぷちから飛び込む、みたいな覚悟もいる。疾走感しかないこの歌は3分半ちょっとで終わり、続いて「長期休暇の夜」…、のはずがトラブル発生、演奏中断。演奏的問題と機材的問題のアッサンブラージュ、こんなこと今までなかったから、相当力んでたのかもしれないな。トラブルシューティング中もみんなニコニコしてくれて、本当みんな優しいと思いました。

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何事もなかったかのように仕切り直し、もう一回1曲目からやり直すという、心の強さみたいなものを30年かけて手に入れた気がします。「光と水の関係」を2回演奏したステージは最初で最後になるでしょう。「長期休暇の夜」も駆け抜けて「ストロボ」で飛び跳ねる。この冒頭3曲はとても象徴的で『weekend』的。息を落ち着かせて「何もない人」、このへんでようやくリラックスできたかなと思う。

時間を少し戻して「rain song ep」楽曲へ。「スティーブン・ダフィー的スクラップブック」はインディー時代の楽曲のフレーズをパッチワークにして過ぎた日の風景を想う歌だけれど、そこから四半世紀近く経てまた違う景色が立ち上がってくる。「down the river to the sea」の詩情を口ずさみ20代の頃の感性を眩しく感じる。真夏の引力に抗おうとしている(今はなすすべもないことを知っている)。『neon, strobe ...』楽曲で秋の季節へ。「アップダイク追記」のニヒリズムも今の僕にはもうなくなってしまったかもしれず、絶望の淵とか「憧れが諦めに」とか言いながら虎視眈々と空を睨む若者の姿をそこに見つける。「夕暮れ田舎町」のロマンティシズムも照れくさいほど。

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再び『weekend』に戻って「猫のいた暮らし」。ポチに出会う前、猫と暮らしていない僕が書いた曲。いったいなんのことを歌っているのか、夏のバンガローとはなにか、ずっと意味を探していたけれど、きっとこれは時間の流れについて考察した歌だ、と最近思うようになった。堀越須藤の合作インスト「ready for lab」をインタールードにして、「お別れの手紙」「train song」という“手紙組曲”とでも呼びたい2曲を続けて。

書き下ろしの新曲「レモンティーと手紙」は、「お別れの手紙」「train song」に続く手紙の歌にしようと思って書き始めた。前回から堀越メンバーがギターを弾くようになったのでそのギターで弾いてもらうフレーズがまずできあがって、1ヶ月かけて歌詞とメロディを書いた曲、評判がよくて嬉しく安堵。またやりたいし、もっと大きな曲になる気がします。みんなで練習してて誰かが(僕自身だったか)「50歳の作る新曲じゃないよね、これ」って言った。「saturday song」もギターアレンジに。まさに24年目の週末っていう感じ。「余韻」もさらにいろいろなピースが噛み合ってきて、早くレコーディングしたくなる。未来の事を考えるのって楽しい。

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時間とともにどんどん残り少なくなっていく“週末”、「ready for love」「週末の太陽」で本編終了。アンコールの冒頭、メジャーデビュー時から2001年「饒舌スタッカート」までバンドに在籍した旧メンバー高森哲也さん(Drums)からの手紙を紹介した。本当は一緒に演奏してほしかったんだけど、仕事のスケジュールが許さず、脱退してからドラムをまったく叩いていないという高森さんに無理強いするのも違うと思った。とても真面目で彼らしい手紙で(何が書いてあったかは内緒なのさ)、そこに高森さんはいなかったけれど彼が遺したものは確実に、あった。

前回のライブで「tsubomi」は演奏してしまったので当初セットリストから外れていたのだけど、当日急遽「やっぱやろう!」ということになってギタレレと合唱だけの、小さな「tsubomi」。これが個人的にはすごく良かった。4人とも歌う響きがGOMES THE HITMANらしくてぐっときました。思い出を塗り替える「新しい季節」は高森さんに捧げて。前回演奏しなかった「雨の夜と月の光」で大団円。客席みんな飛び跳ねてて壮観。いわゆる「4つ打ち」のダンスチューンって本当に踊るために作用するのだなと確信しました。超楽しかったな。

心強いサポートのスタッフ、スターパインズカフェの皆さん、そしてメンバー、友だち、ご来場いただいたお客さんすべてに心から感謝。

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次回ライブは夏休みの最後の日曜日、8月27日(日)。『cobblestone』を核とした“まちづくり三部作”を全部演奏する夜となります。先行発売のチケットもたくさん購入していただき嬉しいです。一般発売は7月8日(土)から。詳細は追って。物販で好評だった新グッズたちがオフィシャル通販STOREで受注受付始まっています。こちらもぜひ記念に。

Posted by monolog at 08:19│Comments(0)