久しぶりにもほどがあるけれど、彼のLINEアカウントが「宮下(どん底)」なのが気になって「なんなん?どん底って(ひどい暮らしをしてるのか?)」と問うと、「あ、おれ22歳のときから新宿のどん底っていう飲み屋で働いてます」との答え。衝撃の事実。どん底はレコード会社の人に連れていってもらって以来僕の大好きなお店で、いつかの年はバンドの新年会もここでやった。高校卒業以来会っていない宮下とずっとニアミスしていたことになる。「どん底、行く。今日行く!」と開店時間の17時にお店を訪ね、実に31年ぶりの再会。いろんなことを忘れていて、些細なことを憶えている。そして少しずつ欠けた記憶が蘇っていく感じ。1990年代からずっとお互い東京の街で暮らしながらも一度も交わることのなかった僕と宮下。「でも若くて何者でもなかった頃には知り合いに会いたくなかったよね」という意見で一致する。風の噂レベルでしか僕が音楽を生業にしてることを知らなかった彼、かかっていたお店のBGMをU2から『新しい青の時代』にしてくれたけれど、僕の歌をどう思っただろうか。
「お会計を」という頃に宮下が「LINEグループの名前見てて正直おまえだけ“会いたい”と思ったんだよ」と言った。照れるじゃん、バカ。50歳になる年の再会、またいつでも会えるっていうのが嬉しい。今度は誰をどん底に誘おうかと考えているところ。

