2024年03月23日

32年前の春のこと

3月ももうすぐ終わる。新しい季節に移りゆく、新生活への準備期間だ。今から32年前の3月、僕は高校を卒業して何者でもなく、大学受験もあらかた失敗して4月からは浪人生になる覚悟をしていたのだけど、3月後半になって試験後期日程の発表があって、絶対受からないと思っていた東京外国語大学英米語学科に合格した。めちゃくちゃびっくりしたし、母親は泣いた。二次試験での漫画「サザエさん」の4コマが記載されて「何が面白いのか英語で説明しなさい」という問題にひたすらしつこく書き綴ったのが認められたことになる。あと、小論文と。

しかし「え、おれ来月から東京にいくと?どがんしたらいいと?」と我に帰ったのが32年前の今頃のことで、どこに住むのか、荷物はどうするのか、いつ旅立つのかを数日のうちに決めないといけなくて、バタバタと奔走。下宿先は母親が知り合いから聞いてきた学生寮に決まった。西武新宿線の下落合駅からすぐのところにある学生会館に付属する学生寮、そこに住む学生の半数以上は外国からの留学生だった。うちから送ったのは布団とCDラジカセ、それ以外はカバンに入るだけの本とCD。4月に入って入学式の2日前に佐賀を発った。福岡空港行きの高速バス乗り場まで母が送ってくれて、手を振ってまた泣いていて、今度は僕もバスが走りだしたあとで少し泣いた。

果たして、たどり着いた学生寮は六帖のワンルーム、バス・トイレは共同と聞いていたが、畳を6枚縦につないだみたいな細長いにも程がある部屋だった。初めての一人暮らしだが、うなぎの寝床ってまさにこのことだ。小さな備え付けのベッドで眠れぬ夜が明けて、洗面所に行くとイスラム教国家からの留学生が右手だけで顔を洗っていた(左手は不浄の手なのだと知る)。大学まで行くのに下落合駅から西武線に乗ろうと思ったら満員電車だったので、ひとつ待とうと思ったら次も満員電車だった。次の日から僕はJR高田馬場駅までのひと駅を徒歩で移動することになる。巣鴨からキャンパスへの道、染井霊園で初めて見るソメイヨシノの荒々しい美しさに感動した。不安しかなかった32年前の4月。ホームシックにもなって、5月の連休に僕は早速帰省したりするんだけど、あの頃の気持ちは懐かしいなと思う。外国で暮らすことになったらまた感じるのかな。その学生寮には2年いた。今はもう取り壊されていて存在しないけれど、春になるといつも思い出す。

新生活を迎える皆さん、今の不安な気持ちもいつか懐かしいものになるから大丈夫です。

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Posted by monolog at 23:39│Comments(3)
この記事へのコメント
桜の荒々しい美しさていいですね。今年ももうそろそろでしょうか。
Posted by けう at 2024年03月24日 10:54
同じ年の4月、私も大学進学のために飛行機で東京に降り立ち、故郷ではまだまだ咲かない桜が満開になっているのを、モノレールの車窓から眺めました。まったく知らない街で暮らしてゆくのだ。高揚感の底に小さくはない不安を感じながら、慣れない電車を乗り継いでいった日をよく憶えています。32年経ってまた全然違う街に暮らしながら迎える春。山田さんの歌をいっぱい聴きながら、背筋を伸ばして新しい季節を探そうと思います。
Posted by みずたま at 2024年03月24日 12:37
ゴメス初期の頃の作品を初めて聴いた時に、妙正川との、水分を含んで静かな町の夜が浮かんできたのですが、模範解答から大きく外れていなくて安心&納得しました。

コードも言葉も選ばれて、並べて、作りこまれてしまって、まるで文章の多い絵本を、ちゃんと読んでる?と迫ってくるような音楽とは距離を置いてしまいがちで…

だから
バッジはいつも同じ子。あのチミちゃん
Posted by にゃん at 2024年03月28日 22:18