練馬マンションブルース
先日車でどこかからどこかへ移動するときカーナビに大ウソをつかれて遠回りをすることになった。通過点は練馬で、そこはまさに僕が大学3、4年と社会人になって1年ちょっとのあいだ3年間住んだ街だった。
西武池袋線の練馬駅が昔とまったく違う立派なものになってしまったのであの頃とは街の様子も変わっている。環七からちょっと入った道は混雑していて、だから左右の街並をゆっくり眺める余裕があって、焼き鳥屋とかパン屋とか生活雑貨屋とか見覚えのある店もたくさんそのままの姿で残っている。
ぼんやり歩くと隣駅の中村橋やとしまえんに辿り着くような、保坂和志の「プレーンソング」の舞台に近い場所にマンションはある。
「体がおぼえている」としか言いようのない反応で僕は見慣れた角をきゅーっと曲がり、だいたい7年とか8年ぶりにかつて住んでたマンションの前に車をよせた。意外にも外観の印象は昔と同じ。住み始めた当時は新築のマンションでまっさらな201号室は角部屋で他の部屋より窓が多かった。オートロック式で、しかしものすごく狭いワンルームマンションで、インディー時代の「GOMES THE HITMAN in arpeggio」「down the river to the sea」に入ってる曲のほとんどはこのマンションに住んでる頃に作った。
ユニットバスの自然エコーを利用して宅録し“Bathroom Recording co.”(今は
Key堀越サイトに名残がのこるのみ)とレーベルみたいな名前をつけたのもここだったし、「in arpeggio」に入ってる寒々しく荒々しい「寒い夜だよ」の自宅デモはここで録られたテイクであり、クレジットにもそう表記されている。
道路に面した僕が住んでた201号室は当然誰かが住んでいて、洗濯物が揺れたりしていた。ここは僕が暮らしてた頃より近所にコンビニも増え道も広くきれいになって住みやすそうだが、当時も図書館が歩いて30秒の距離にあり文教地区の恩恵を最大限に利用していた記憶がある。
そうこうしてるうちに、僕の社会人時代(AD時代)早朝5時にいねむり運転で突っ込んでこの近所のバス停を激しく破壊したことも思い出した。融通の利かないカーナビのせいでちょっとセンチメンタルな、そっと優しい気持ちで過去を振り返るような、そういう夜になった。
※マンションブルースシリーズ→
池袋マンションブルース
Posted by monolog at 19:01│
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関係ないですが、最近詩を書き始めました。
この歳になってみると、自分が影響を受けてきた景色やアーティストを強く感じ、
どうしても好きなフレーズや描写に寄っていってしまう。
そこからどういう風に自分なりの距離と味をつけていくか、というのが難しいですね。
作曲もそうなのでしょうか。
ただ、なにか詩を作っていると、そこに曲と言えるほどまではいかない、メロディーが鳴り出す、というのは分かってきました。
もっと好きなものや立ち止まりたいものに目を向けなくっちゃあな。と思うのです。