2015年07月19日

夜の科学 −for the loved one(2015年7月18日@ 名古屋 揚輝荘)【SETLIST】


2015年7月18日(土)@ 名古屋 揚輝荘 多目的室
夜の科学 in 名古屋 −for the loved one


1.my favorite things
2.猫町オーケストラ
3.太陽と満月

4.夏の日の幻
5.長期休暇の夜
6.一角獣と新しいホライズン

7.ポチの子守唄
8.些細なことのように
9.ブックエンドのテーマ(新曲)
10.lucky star(新曲)

11.small good things
12.hanalee

EN
13.ハミングバード

  

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2015年07月08日

3ヶ月連続で『the loved one』発売記念インストア・フリーライブが決定しました




いよいよ発売になった『the loved one』へたくさんの反響をいただいています。初めてのCD『GOMES THE HITMAN in arpeggio』作ってから今年で18年になりますがいつになってもそわそわしてしまう、それがCD発売日です。そんな昨日、近藤研二さんのお宅へお邪魔し「ポチの子守唄」のギターの弾き方を教えてもらいました。弾き語りでひとりでも演奏できるようになりたかったので習得できて嬉しかった!なんと今月から3ヶ月連続でインストアフリーライブが決定しました。いつもと違う空間で偶然の出会いや再会がありますように。もちろん皆さんにも変わらぬ応援とサポートをお願いしたいと思います。

湘南T-SITEは「本屋とテーマに即した30の個性豊かな ショップがシームレスに繋がり湘南らしいライフ スタイルを提案する文化複合施設」です。代官山蔦屋の倍の面積があるそうで、一度もまだ行ったことがないのでとても楽しみ。「ポチの子守唄」をアレンジしてくださった近藤さんとの“quilico(キリコ)”スタイル、イトケンさんも招いてトリオ編成で演奏するつもりです。8月はタワー渋谷はいつもお世話になる4階のイベントスペースで。夏休みの最後の週末、たくさんの人が来てくれたら嬉しいな。9月は地元吉祥寺の名店ココナッツディスク。10数年普通にレコードを漁りにいくお店でのイベントができるなんて思ってもいませんでした。ayU tokiOとの共演というスペシャルな企画。わくわくします。



2015年7月24日(金)@ 湘南T-SITE1号館2階湘南ラウンジ
ツタプレpresents “山田稔明 with 近藤研二”フリーライブ&サイン会

19:30- /観覧無料
*近藤研二、itoken両氏を迎えてトリオ編成での演奏を予定
山田稔明インタビューもあわせてお楽しみください

湘南T-SITE
〒 251-0043
神奈川県藤沢市辻堂元町6丁目20番-1


2015年8月29日(土)@ タワーレコード渋谷店4階イベントスペース
“山田稔明『the loved one』発売記念インストアイベント”

18:00-/観覧無料
サイン会参加券配布店舗:渋谷、新宿、池袋、秋葉原、横浜ビブレ店の5店舗

タワーレコード渋谷店
〒150-0041東京都渋谷区神南1-22-14


2015年9月18日(金)@ ココナッツディスク 吉祥寺店
“山田稔明/ayU tokiO インストアライブ”

21:00-/観覧無料
山田が個人的に10年以上通う地元レコードショップでのイベントが決定。
ayU tokiOとの共催、詳細は追ってお知らせします。

ココナッツディスク吉祥寺店
〒180-0024武蔵野市吉祥寺本町2-22-4

  
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2015年07月07日

本日発売!山田稔明『the loved one』|「ポチの子守唄」によせて(近藤研二氏コメント)



いよいよ本日は山田稔明ニューアルバム『the loved one』の発売日です。七夕を発売日に選ぶのは2013年の『新しい青の時代』以来、昨年の『緑の時代』に続いて3年目です。昨日タワーレコードの渋谷店に一足早く挨拶に行きましたが、ポチの写真と一緒にCDが展開されていて嬉しかったです。ぜひ皆さんのお近くのCDショップで手にしてみてください(ステッカーの特典が付く店舗があります)。そして、もし見つからなかったり売り切れたりしていたら皆さんのよく通る声で「山田稔明の『the loved one』が欲しいのですが」と店員さんに話しかけてください。そのアクションがサムシングニューに繋がります。解き放たれた『the loved one』をどうかよろしくお願いします。

今日は先月の先行レコ発ライブで演奏した「ポチの子守唄」を公開します。近藤研二さんの編曲によってこの歌は鼻歌サイズのフォークソングからささやかな室内楽へと昇華しました。ステージ上からは涙ぐむお客さんの姿が何人も目に入って、僕も高ぶる気持ちを抑えるのが大変でした。愛猫ポチがいよいよ具合が悪くなったのが満月の晩、そして生まれ変わりのようなポチ実がうちの家族になった日も満月だった。この歌を歌うたびに僕はあの夜にもこの夜にもタイムスリップするのです。近藤さんからいただいたコメントもあわせて。





「ポチの子守唄」について

山田さんと僕は昨年、同じ季節に愛猫を亡くし、それが縁で知り合った。
しばらくして「この曲はぜひ近藤さんと一緒に」と手渡されたデモが『ポチの子守唄』。
深呼吸をしてからそのボーカルトラックのみをア・カペラで聴いた。
思ったよりテンポがよく明るい。彼の歌声を聴きながらそのフレーズの隙間に、
我が愛猫マルオへの思いが溢れては染みこんでいくのを抑えられなかった。
自分は編曲家である前にただの猫好き。ポチの一周忌に捧げられるこのアルバムは、
カラフルなジャケットを含め、一貫して前向きで力強い。
そこにセンチメンタルな響きを付加してしまったことは仕事としては少しまずかったかもしれない。
でもタイトル『the loved one』にかけ大目にみてほしい。猫愛は存分に出せたと思う。

近藤研二



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2015年07月06日

新作から「太陽と満月」を公開しました |『the loved one』によせて(高野寛氏コメント)

山田稔明『the loved one』の全国発売が明日7月7日に迫りました。本日はいわゆる店着日(フラゲ日)、夕方くらいから店頭に並ぶでしょうか。全国各地のタワーレコード、HMV、ディスクユニオン、新星堂、武蔵小山のペット・サウンズ・レコードにもCDがすでに発送されています(流通のブリッジINCに感謝!)。もし皆さんのお近くのCDショップに『the loved one』がなかったら声を大にして「山田稔明の『the loved one』(GTHC-0007)を探しているのですが」と店員さんにお伝え下さい。Amazonの発送も始まるのでしょう。CDを手に入れたらぜひ小さな声で(しかしよく通るきれいな日本語で)感想をつぶやいてください(#thelovedone)。

ラジオでのオンエア以外では初めて、新作からの楽曲を公開しました。



高野寛さんのギターをフィーチャーした「太陽と満月」です。ドラムは13年ぶりのソロアルバムも完成したitokenさんが自身のイトケンスタジオで録音、オルガンは佐々木真里さんのスタジオmでそれぞれ録音してメールでやりとり。海老沼崇史くんは僕のポチスタジオでベースを録音し、僕はアコギとエレキでリズムを刻みました。エンジニアの手塚雅夫さんはジャック・ジョンソンの1st『Brushfire Fairytales』を意識したのではないか?といいうのが僕の憶測。2013年に初演した歌がいくつものステージを経てついに完成しました。

高野さんは春のある日に僕の家にやってきて、魔法のように手際よく数トラックの分散和音の爪弾きを1964年製のFenderストラトキャスターで、そして「これ弾いてみていい?」と僕の1965年製Harmonyのギターを抱えてカラッと乾いたソロを重ねてくれました。50年前に作られたギターと小さくて高性能な最新機材での自宅録音、とても2015年的な感じがしました。キラキラした彩りを加筆してくださった高野さんに大きな感謝を。

高野さんから届いたコメントを掲載します。




『the loved one』によせて

アーティストの心には、だいたいたくさんの穴があいているものだ。
その穴を埋めるために、彼らは詞を書いたり絵を描いたり曲を作ったり歌ったりするのだ。
愛猫を失ったアーティストの心に空いた穴はどれほど大きかったことだろう。
でも、その穴が大きければ大きいほど、それを埋めるための力は輝きを増してゆく。
一聴するとやわらかなこの六編の歌に刻み込まれた確かな想いは、
きっと僕やあなたの心を震わせるのだろう。

高野寛



  
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2015年07月01日

1年ぶりの京都でのライブが決定しました!《the loved one tour 2015》


そうだ京都いこう、というときのBGMは「my favorite things」、去年は3月の「retrospective 15+5」ツアー、そしてポチが旅立った直後の7月に悲しみを分けあってくれた京都。今回のライブはずっとお世話になっている中目黒Traveler's Factoryのキャラバン “BOOKSTORE TOUR”にまぜてもらうことになりました。毎年恒例のTraveler's Summer Festivalが東京で8月1日に決まっていましたが、今年は京都とあわせて2ヶ所でオリジナルノート付きのライブの開催となります。恵文社一乗寺店はご存知のとおり本や雑誌、CD、食器や雑貨までありとあらゆる楽しい物が並ぶ本屋ですが、そこで「僕のお気に入り」を並べて愛を捧げた歌たちを歌えることが嬉しいです。

下の写真は昨年春の恵文社一乗寺店COTTAGEでのイベントで行ったウクレレワークショップの様子。普段のライブハウスやカフェとは一味違うライブが展開される会場ですが、今年はアンプを使わないほぼ生音のライブで親密な空間を作ろうと思います。そしてなにより毎年好評のオリジナルトラベラーズノート(これまでのノートの画像を下に)、今年は『the loved one』発売を記念してイラストレーター大塚いちおさんのアートワークを配したリフィルを入場者皆さんにプレゼントします。こちらも楽しみにしていてください。今年これから関西へは何度も足を運びたいと思っていますが、その最初がこの京都恵文社一乗寺店での演奏になります。三連休の真ん中、ぜひ遠くから近くからお越しください。お申込みはこちらから。

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2015年7月19日(日)@ 京都 恵文社一乗寺店 COTTAGE
Traveler’s Factory × 山田稔明
“夜の科学 in 京都ーfor the loved one”

18:00開場/18:30開演
入場料3500円(アアルトコーヒーのアイスコーヒーとオリジナルトラベラーズノート付き)

毎年夏に開催してきたトラベラーズファクトリーとのコラボイベント、
今年は京都と東京の2ヶ所で行うことになりました。毎回大好評の
オリジナルトラベラーズノート付きのライブを関西でも!

オフィシャルサイトRESERVEにて予約受付中!

恵文社一乗寺店 COTTAGE
〒606-8184 京都市左京区一乗寺払殿町10
恵文社一乗寺店 南側
TEL 075-711-5919  
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1年4ヶ月ぶりの名古屋でのライブが決定しました!《the loved one tour 2015》



新作アルバム『the loved one』発売を記念したライブを東京以外の街でも。まずは名古屋での1年4ヶ月ぶりのライブが決定しました。前回の名古屋は去年3月、「retrospective15+5」と銘打ったツアーでした。ここ数年は名古屋陶磁器会館という昭和初期に建てられたモダンな雰囲気の会場で、お昼に始まって夕方に終わるライブを行ってきましたが、今回新しい会場を見つけました。揚輝荘という、大正から昭和初期にかけて松坂屋の初代社長15代伊藤次郎左衛門祐民によって構築された別荘だそうです。もともと演奏会や舞踏会に使われたと思われる「多目的室」の写真(上の写真は舞台ですね)を見て、ここでやったら面白い!と思いました。

今回のライブは夕方に開場開演します。お昼のライブが続いた名古屋ではお子さん連れなど独特な客層が印象的だったのですが、今回の初めての試みにたくさんの東海地方の皆さまに足を運んでいただければまた新しい《次》に繋がります。昨年夏にポチが亡くなった後は気落ちして足が重く、ついにぞ名古屋で歌うことができなかったのでその分もあわせて。名古屋はこういう趣きのある会場が多くてわくわくします。ライブまであと3週間、お早めのご予約をお薦めします。予約申込はこちらから。



山田稔明『the loved one』発売記念ライブ
2015年7月18日(土)@ 名古屋 揚輝荘(多目的室)
“夜の科学 in 名古屋ーfor the loved one”

出演者:山田稔明
17:15開場/17:45開演/料金:3,000円

1年4ヶ月ぶりの名古屋公演は初めての会場での演奏会となります。
揚輝荘は大正時代から郊外別荘として華麗な社交が行われた有形文化財、
数々の演奏会やダンスパーティーが繰り広げられたであろうフロアで新しい歌を。
「揚輝荘」の名はこの地が月見の名所だったことに由来するそうです。
名古屋で夜の時間のライブをするのは本当に久しぶりのこと、楽しみです。

オフィシャルサイトRESERVEにて予約受付中!

揚輝荘 多目的室多目的室
〒464-0057 名古屋市千種区法王町2丁目5番地17(南園)
*地下鉄東山線「覚王山」下車、1番出口から北に徒歩約10分
※揚輝荘に駐車場はありません。公共交通機関をご利用ください。  
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2015年06月25日

『the loved one』に寄せて ー高橋徹也氏コメント

ここ数年もっとも僕が共感と畏怖の念を抱くシンガーソングライター高橋徹也さんから『the loved one』にコメントをいただきました。ポチが女の子だったことを告げると「ええ!?」とものすごく驚いた顔をして、その日ずっと恐縮しきりだったタカテツさんの姿に優しさを感じた。ここに転載するのはあえて最初の、「ポチくん」バージョンのテキスト。タカテツさんには「ポチくん」と呼んでもらうほうがむしろ心地良い。7月3日のバンド編成2マンも楽しみ。現在入場予約受付中です。



『the loved one』に寄せて


実は、山田稔明をよく知らない。

十年以上前に一度だけイベントで共演したっきり、
再会したのはついこの間、二年前の夏。
それもやはり同じくイベントの場だった。

彼が変わったのか、僕が変わったのか、その辺りは定かではないが、
彼が素晴らしい曲を作って、歌っていることに心から驚いた。
同じ音楽家としてショックだったと言ってもいい。
それからは自然と親交を深め、今も良い刺激を受け続けている。

残念ながらこの作品の主役、猫のポチくんのことも、実はよく知らない。
もっと言えば猫を意識するようになったのも山田くんと再会してからのこと。
ただ、そんな山田&猫の新参者でも、この六篇のストーリーから
ポチくんの生命を読み取ることはできる。

果たして自分に愛する何かを想って一枚のアルバムを作ることが出来るだろうか。
彼は見事にやってのけた。それは思っている以上にすごいことなのではないだろうか。

僕は今、山田稔明をもっと知りたいと思う。優しいギターが紡ぎ出す、新しい音楽を。


追伸:イギー・ポップをやる時は俺の許可を取ってくれよなー(笑)


2015年 初夏 高橋徹也





2015年7月3日(金)@ 吉祥寺 スターパインズカフェ
“猫とコヨーテのオーケストラ”

出演:山田稔明 / 高橋徹也

[山田稔明(vo/g)安宅浩司(g etc.)五十嵐祐輔(g etc.)海老沼崇史(b)上野洋(flute etc.)]
[高橋徹也(vo/g)鹿島達也(b)佐藤友亮(key)脇山広介(dr)]

OPEN18:30/START19:00
前売3,000円/当日3,500円(ともに1ドリンク代別途)

山田稔明が近年最も共感するSSW高橋徹也氏との念願の
バンド編成2マンが決定しました!
オフィシャルサイトにて入場予約受け付け中!

吉祥寺 スターパインズカフェ
TEL 0422-23-2251
武蔵野市吉祥寺本町1-20-16 B1  
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2015年06月23日

愛するものへのまなざしー『the loved one』に寄せて(文・五十嵐祐輔氏)

夜の科学オーケストラのメンバーであり、インストゥルメンタル・ユニットfishing with johnを主催する五十嵐祐輔くん。美文家の彼にプレスリリース用のライナーノーツ(レコードショップや媒体向けの資料)を書いてもらったのですが、その文章が端的に『the loved one』のなりたちを説明した素晴らしいものだったので、ここに全文を公開します(フライヤーには抜粋を掲載)。




愛するものへのまなざしー『the loved one』に寄せて

 山田稔明の新しいレコード「the loved one」は愛するものへのまっすぐなまなざしが眩しいほどに溢れたアルバムです。そのまなざしの先にいるのはポチという名前の猫、その愛猫ポチの寝そべる日向、その日向の差し込むあたたかい家、そこで続いていく暮らし、暮らしにまつわるささやかだけど大切なこと。彼はこれまでも日常の機微を手のひらに掬い上げ歌にしてきましたが、そこの中心にはいつもポチという名前の猫がいました。そのポチが天国へ旅立ってちょうど1年、「ポチに捧げるラブソング集」として丁寧に紡がれた本作が私たちの手元に届きました。このアルバムは山田稔明からポチへの贈り物であると同時に、ポチを亡くした哀しみを共有した私たちへの贈り物でもあり、彼と同じく身近に愛するものを持ちながら暮らす私たちの「慈しむ気持ち」を肯定し力強く背中を押してくれる作品集です。

 2001年リリースのGOMES THE HITMANのシングル「饒舌スタッカート」のジャケット写真撮影で出会って以来、13年に渡り彼の大切なパートナーとして共に暮らしてきた愛猫ポチが天国へ旅立ったのは昨年の6月のことでした。彼のポチへの溺愛ぶりは彼のブログやSNSで目にされ、様々な楽曲に登場するミューズとして耳にされ、写真絵本「ひなたのねこ」やポストカードなどのグッズとして手にされ、ファンの方々の間でポチはアイドル的存在として愛され、山田稔明を語る上で欠かせない存在でした。彼がライブのMCで毎回のようにおどけながら語る「たぶん世界で1番可愛い猫なんじゃないかな」宣言には彼の溢れて零れ落ちてしまうほどの愛情が見えて、耳にする度に「ポチは幸せな子だなあ」とこちらも笑みが零れたものです。

そんな彼の精神の一部でもあったポチを亡くした喪失感を思うと今でも心が痛みますが、この1年彼は休むことなくステージに立ち続け、歌い続けて前に進んで行きました。連日の不眠の看病の渦中に生まれた「ポチの子守唄」は勿論、過去に書かれたポチへの歌も亡き後さらに響きを深いものへと変え、聞く者の心を打ちました。夜の科学オーケストラ全員とお客さんでポチを見送った追悼ライブの神聖な雰囲気は今でも強く印象に残っています。

 そんなポチへ捧げられた今作『the loved one』はしかし暗く深刻なムードでは決してなく、むしろ軽快でポップな仕上がりになっています。その背景には彼の側に現れた新しいミューズ、ポチ実の存在が大きいのかもしれません。ポチが亡くなって2ヶ月後のある日、彼の家の庭に突如ポチそっくりの野良猫が現れ、その子を保護して家族の仲間入りをするという奇跡のような物語が彼に訪れました。ポチの生まれ変わりかと見紛うその子はポチ実と名付けられ、その後山田家の日向で喉をゴロゴロと鳴らすようになりました。この新しい家族の存在がアルバム全体のムードをより日向の方向へ導いたのかもしれません。

 隅々までポチ愛に満ちた本作では「好き!」と大声で宣言したり、「好きだよ」とそっと耳元で囁いたり、「好きなんだよなあ」と呟いてみたり、実にたくさんの好きが歌声から滲み出ており(彼の故郷の言葉では「好いとーよ」になるのでしょうか)、そのそれぞれの「好き」に元気が出たり、切なくて泣きそうになったり、優しい気持ちになったり、聴きながら大いに感情が揺さぶられたのですが、最終的には自分も身近な愛すべき存在への気持ちをまっすぐに向けて暮らしを紡いでいきたくなりました。

 今作はお馴染み夜の科学オーケストラの面々の力強いサポートに加え、猫が縁で交流が生まれユニットを組むまでに至った近藤研二さんによるサウンドプロデュース、近年ライブでも共演している高野寛さんによる熱い客演など聴きどころも満載の充実作となっています。特に近藤さんの手による「ポチの子守唄」の死者を優しく悼むような繊細で美しいアレンジは自身も猫を亡くした経験を持つ者としての最大限の慈しみが感じられ、深く胸に沁み入りました。

 本作を手に取ったみなさんにはぜひ大きな音で或いはささやかな音で、家の中で仕事場で車の中で青空の下で暮らしの中で、雨の日や曇りの日や嵐の日にもこの愛に満ちた歌々をたくさん鳴らし、耳を傾けていただきたく思います。日向に降り注ぐ光のような「好き」を浴びて私たちの日々はより確かに豊かに感じられることでしょう。

『the loved one』はそんな光に満ち溢れたレコードです。

五十嵐祐輔(fishing with john/夜の科学オーケストラ)
  
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2015年06月22日

“for the loved one”ーレコ発「夜の科学vol.47」ライブ後記



先週末のレコ発“夜の科学”を振り返ります。梅雨の晴れ間の気持ちのいい日になって嬉しかった。午後、会場入り。恵比寿天窓switchでのバンド編成は昨年12月以来半年ぶり。ステージに最大8人が乗り、ウッドベースやグランドピアノなどスペースを必要とする楽器も多いのでパズルのように最善の立ち位置を決めるところからスタート。ああでもないこうでもないとトライを繰り返し、結果としてとても賑やかな、文字通りオーケストラのような布陣となりました。リハーサルでやった「ポチの子守唄」が息を飲むような美しさで「これが本番だったらよかったね」「誰か今の録音してなかったかな」と口々に。ギリギリまで練習して開場、満員御礼のなか開演。

大塚いちおさんによる『the loved one』のジャケットアートワークのアニメーション、登場BGMには「サウンド・オブ・ミュージック」のなかの名曲「私のお気に入り」カーペンターズのバージョンを流しました。4カウントから始まった「my favorite things」はバンドサウンドでの初めてのお披露目。この歌はぜひサビの「ああ」の追いかけコーラスをお客さんみんなにやってほしいと思いました(実際に声に出しても心の声でも結構です)。アルバム曲順通りに次は「太陽と満月」。この歌はとても自由に毎回わくわくしながら演奏できる歌。安宅くんは高野さんが弾いたギターを踏まえたプレイを。

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「home sweet home」と「猫町オーケストラ」をマンドリンの音が繋ぐ。旧譜と新譜の歌が時間を越えて並ぶセットリストが僕は大好きだ。そして『新しい青の時代』楽曲を3曲続けて。演奏を重ねてどんどん大きく変容していくのを体感してとてもわくわくした。「平凡な毎日の暮らし」のイトケンさんのドラムとエビちゃんのベースに背中を押された。そして、この日の特別ゲスト近藤研二さんを呼び込んでステージ上は8人編成に。まずはキンクスのカバー「Phenomenal Cat」をポチに捧げて。原曲のイントロにあるフルート(メロトロン)の踊るようなフレーズを上野くんと安宅くんが完コピしてくれた。演奏するのが楽しくてあっという間に終ってしまう歌。

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そして近藤さん作曲の「ねむれねこねこ」と近藤さん編曲「ポチの子守唄」を。僕は楽器を持たず歌に専念。リハーサルからバンドアレンジに関しての近藤さんのメンバーへのディレクションも素晴らしく、もうひとつの窓が開いて新しい風が入ったような感覚がありました。これが「ポチの子守唄」完成バージョン初お披露目。ステージ上からは泣いている人の姿も見えました(もらい泣きしないようにすぐ目をそらしました)。楽器編成も近かったので「ねむれねこねこ」と「ポチの子守唄」は親戚同士みたいだなと思った。マルオとポチみたい。

近藤さんのガットギターの爪弾きから始まった「予感」。近藤さんに一緒にどうですか?と提案したら「大好きな曲です」と即答が返ってきました。上野くんのフルートと安宅くんのクラリネット、五十嵐くんの鉄弦と近藤さんのナイロン弦のコントラスト、新しい季節の予感を感じるような演奏でした。綾香のピアノに誘われて「些細なことのように」と「月あかりのナイトスイミング」、終演後にその2曲を続けて演奏したのがとても良かった、と言ってくれた人がいましたが、僕も演奏しながらこの2曲の関係性について考えていたところでした。「small good things」で夜明けを待ちながら本編終了。

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アンコールの最初に「hanalee」。この曲は僕がウクレレを練習しているうちにできた歌。リハーサルで「せっかくだから」と急遽近藤さんがウクレレで参加することになった。もうすぐこの歌ができて10年になるけれどもいつ演奏しても僕をどこかへ導いてくれる曲。そして3拍子と4拍子を間違ってやりなおしとなった「日向の猫」は、しかし、8人編成と会場のコーラスでこれまでに聴いたことのないような音の広がりでこの日のクライマックスとなりました。最後の最後は「ハミングバード」で大団円。前日の長時間リハーサルから本番終了までぎゅっと凝縮した音楽の時間でした。この日を境にポチに捧げた『the loved one』は皆さんの『the loved one』になりました。果てのないような握手とサイン。たくさんCDを買ってくれてありがとうございます。気持ちのこもったアンケートもメンバーみんなで読みました。

次回は7月3日吉祥寺スターパインズカフェでの高橋徹也さんとの共演、バンド編成ライブが控えていますのでそれをレコ発ライブ第2弾と設定したいと思います。今週25日(木)木場でのイベント、27日(土)鎌倉molnでのイベントでもCD先行販売しますのでぜひこちらも。ライブ明けて昨日は通販プレオーダー分の発送を行いました。楽しみにしている皆さんにはそわそわさせてしまいますが、CD到着までもう少しだけお待ちください。全国発売は7月7日の七夕から。できたてほやほやの『the loved one』をどうかよろしくお願いします。


  
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2015年06月21日

夜の科学 vol.47ーfor the loved one(2015年6月20日 @ 恵比寿天窓switch)【SETLIST】



2015年6月20日 @ 恵比寿 天窓switch
“夜の科学 vol.47ーfor the loved one”


1.my favorite things(the loved one)
2.太陽と満月(the loved one)
3.ココロ/コトバ(緑の時代)

4.home sweet home(home sweet home)
5.猫町オーケストラ(the loved one)

6.光と水の新しい関係(新しい青の時代)
7.平凡な毎日の暮らし(新しい青の時代)
8.光の葡萄(新しい青の時代)

9.Phenomenal Cat(The Kinks カバー)
10.ねむれねこねこ(Eテレ2355おやすみソングカバー:近藤研二作曲)
11.ポチの子守唄(the loved one)
12.予感(新しい青の時代)

13.些細なことのように(the loved one)
14.月あかりのナイトスイミング(新しい青の時代)
15.small good things(the loved one)

EN
16.hanalee(home sweet home)
17.日向の猫(新しい青の時代)
18.ハミングバード(新しい青の時代)


山田稔明 with 夜の科学オーケストラ
itoken、安宅浩司、五十嵐祐輔、上野洋、海老沼崇史、立花綾香
ゲスト:近藤研二(M9-12、M16-17)  
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2015年06月16日

猫町オーケストラ(山田稔明『the loved one』全曲解説6)



7月7日発売の『the loved one』収録曲の全曲解説。アルバムのクロージングトラックは「猫町オーケストラ」です。これは10年以上前に書いた古い歌なのだけど、個人的に大好きなので定期的に年に数回はステージで演奏してきた。GOMES THE HITMANの定例イベントのタイトルになり(イベントスタートと同じ時期に書いたはず)、2003年のシングル「夜明けまで」の購入特典ディスクに弾き語りバージョンの「猫町オーケストラ」が収録されたこともあるが、GTHで演奏したことはなく、バンドアレンジでの録音もコンピレーションアルバム『猫と音楽の休日』のために初めてのトライとなった。

萩原朔太郎の「猫町」に触発された歌詞は《猫》そのものの視線から描かれたものなので《猫》という単語自体が登場しない。「風邪をひいてた痩せっぽちの彼は」という歌詞は、はじめ「痩せっぽちのクロは」だったのを書きかえた。「猫がこんな哲学的な物思いをしているだろうか」と疑問を呈した友だちがいたけれど、意外と猫はいろんなことを考えているのだと思うのです、あの小さな頭と大きな瞳で。

今年2月オーディオインターフェイスを新調した自宅スタジオでの最初の録音。ギターやマンドリン、ベース、ドラムプログラミングなどの楽器を僕が多重録音し、ピアノとオルガンをsugarbeansくんに託した。コンピCDで共同作業をしたシンガーソングライターのkainatsuちゃんがコーラスを快く引き受けてくれた。このとき彼女はご懐妊中で、その歌声には母性のようなものを確かに感じる。サビ前のハンドクラップ2発はkainatsuちゃんと録音した「てまひま〜うたた猫のテーマ〜」で録音した手拍子をサンプリングした。エンジニア手塚さんには参考音源としてR.E.M.の「Electrolite」を聴いてもらった(バンジョーの印象をマンドリンで出したかった)。コンピレーションCDではオープニングトラックに選ばれたが、今回『the loved one』のクロージングを飾るべく、アルバム用にリミックス。見事なエピローグになりました。

すべての楽曲について解説しました。次回からは『the loved one』に寄せられたコメントを紹介したいと思います。



yamada_the loved one_S 山田稔明/the loved one
 2015年6月19日発売(全国流通開始7月7日)
 GTHC-0007 定価2000円(税別)

 1.my favorite things
 2.太陽と満月
 3.ポチの子守唄
 4.些細なことのように
 5.small good things
 6.猫町オーケストラ(album mix)

 『the loved one』プレオーダーはこちらから。  
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2015年06月13日

small good things(山田稔明『the loved one』全曲解説5)

来月発売になる新作『the loved one』収録曲についての解説を続けます。古い資料を調べてみると、僕は2009年の春に「small good things」のメロディをある家電メーカーのエアコンのCMコンペのために書いたようだ(そして採用されることはなかった)。「ささやかだけど大切なこと」という仮タイトルがついていたが、それはレイモンド・カーヴァー著「ささやかだけど、役に立つこと」から引いたものだろう。昨年秋にこの人懐っこいメロディをHDDの底で見つけて、歌詞を推敲していたら《今》の気持ちにフィットする歌に生まれ変わった。僕はもう何年もこの歌のことを忘れていたのだ。

ステージで何度か歌っているうちにどんどんこの歌がポチへのラブレターみたいな気がしてきて、『the loved one』に収録することになった。最初ランタンを消して聞こえてくるのは《コヨーテの声》だった歌詞、舞台はアメリカの荒野か砂漠だったのが、それがリアリティを持って半径数メートルの風景になり、聞こえてくるのは《猫の声》に変わる。その猫の声は庭に現れた仔猫ポチ実が発したものなのかもしれない。

レコーディングでは安宅くんにマンドリンを弾いてもらって珍しく僕は歪んだエレキを。真里さんのピアノとアコーディオンが心地よいメロディを奏でてくれる。立花綾香嬢のコーラスもいい。「夜明けを待っているのさ」ではなく「待っているのだ」にしたのは僕の力強い意思表明の証。手塚さんに参考として聴いてもらったのはTHE HOOTERSのCD。これは僕がお小遣いを工面して中学生のときに初めて買った洋楽のCDだった。時間を越えて完成した「small good things」、まるで昨日書いた歌みたいに新鮮だ。「些細なことのように」のピアノが鳴り止んでこの歌が流れてくると僕はすっと立ち上がって、光と風を呼びこむ新しい窓を開けなければ、という気分になる。

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yamada_the loved one_S 山田稔明/the loved one
 2015年6月19日発売(全国流通開始7月7日)
 GTHC-0007 定価2000円(税別)

 1.my favorite things
 2.太陽と満月
 3.ポチの子守唄
 4.些細なことのように
 5.small good things
 6.猫町オーケストラ(album mix)

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2015年06月11日

些細なことのように(山田稔明『the loved one』全曲解説4)

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「些細なことのように」は2010年の夏に書いて9月にステージで初演した歌。『新しい青の時代』に収録された「光と水の新しい関係」や「平凡な毎日の暮らし」と同じ時期に書かれたということになる。当然『新しい青の時代』収録候補曲だったのが、「なんだかしっくりしない」という漠然とした理由で外されたのだった。この曲を歌うと感動の波が客席から寄せてくるのも知っていたし、大きなテーマを持った大切な曲だということもわかっていたが、この歌を自分のものにするのに東日本大震災とポチの旅立ちを経験することが必要だった。大きなテーマがとても身近なものに変わり、そしてまた大きな愛の歌になったような気がします。

「月あかりのナイトスイミング」「日向の猫」でも手腕を発揮してくれた佐々木真里さんにアレンジを依頼。エンジニア手塚さんが提案したサウンドサンプルはランディ・ニューマンの「Every Time It Rains」だった。スタジオでのセッションでピアノ、アコギ、エレキ、ベース、ドラムのベーシックトラックを録音し、安宅くんのペダルスティールが泣き、僕のブルースハープがため息を吐く。真里さんの施したストリングスはさざめきのようにせり上がってきて、ピアノは優しく語りかける言葉のよう。sugarbeansくんのドラムとエビちゃんのベースはあくまで淡々と鼓動を刻む。完成するまでに5年かかった。もうこれ以外にない、というシンプルで完璧な歌になりました。

下の写真は1年前の今日のポチの顔。病院の診察台の上で、「ポチちゃんは騒がず暴れず、本当にえらい猫ですね」と言われているところ。僕は何もかもずっと憶えてる。





yamada_the loved one_S 山田稔明/the loved one
 2015年6月19日発売(全国流通開始7月7日)
 GTHC-0007 定価2000円(税別)

 1.my favorite things
 2.太陽と満月
 3.ポチの子守唄
 4.些細なことのように
 5.small good things
 6.猫町オーケストラ(album mix)

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2015年06月08日

ポチの子守唄(山田稔明『the loved one』全曲解説3)



7月7日に発売になる山田稔明『the loved one』全曲解説の3曲目は「ポチの子守唄」。ポチとは僕が2001年から13年暮らしを共にした愛猫、三毛猫の雌である。1年前の6月最初の2週間、僕はとても詳細な看病日記を書いているのだけど、1年前の今日はいよいよポチの具合が悪いほうに折り返すタイミングの頃。吐き気がひどいポチの首の下に左手をまわし、右手で背中を撫でながら夜が明けるのを待つ夜の連続。満月の晩を境にどんどん容態が深刻になっていったポチと僕にとって夜は忌み嫌うべき時間帯でした。その不安をなだめるように僕はポチのために歌を歌ってあげました。

両手でポチを介抱しながら話しかけるように歌ったその旋律はやがて一定のリズムを持ち、言葉がついてきて、3バースの歌になった。ポチがいなくなった後でその小さな歌に僕は「ポチの子守唄」というタイトルをつけてステージで歌うようになりました。2ヶ月違いで同じ空の下で(文字通り数百メートル離れたご近所で)愛猫マルオを亡くした近藤研二さんとの縁がつながって、この歌のアレンジをお願いすることになるのは必然だったのかもしれません。僕のボーカルトラックのメロディだけを聴いてコードとフレーズで肉付けされた「ポチの子守唄」はささやかなフォークソングから立体的な室内楽に昇華したのです。

2月頃から編曲作業が始まった「ポチの子守唄」は3月のモナレコードでの「ひなたのねこ」展で初お披露目(写真下)、5月に入って近藤さんのガットギター、上野洋くんのフルート、海老沼崇史くんのウッドベース、安宅浩司くんのペダルスティール、そして最後にイトケンさんのグロッケンシュピールとパーカッションが加わって完成します。イトケンさんは僕の留守中のポチのお世話をずっとお願いした恩人。近藤さんのギターも魂が奏でるような静かに熱を持った音。歌入れをするときも木々や葉っぱのさざめきや風の匂い、紫陽花が揺れる庭が見えるような感覚がありました。ポチと向き合って捧げた歌ですが、これが世に出てすべての愛すべき対象へ届くような普遍的な歌になったら嬉しいなと思います。

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yamada_the loved one_S 山田稔明/the loved one
 2015年6月19日発売(全国流通開始7月7日)
 GTHC-0007 定価2000円(税別)

 1.my favorite things
 2.太陽と満月
 3.ポチの子守唄
 4.些細なことのように
 5.small good things
 6.猫町オーケストラ(album mix)

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2015年06月05日

太陽と満月(山田稔明『the loved one』全曲解説2)



7月7日に全国発売となる山田稔明『the loved one』の全曲を解説する連載の2回目は「太陽と満月」です。これは2013年の3月に書いた曲。当時数回に渡り行っていた「はじめてのソングライティング」というセミナーの3回目で初披露した曲。D/A/Bm/Gという4つのコードの繰り返しで簡単に歌は作れる、という話の流れで、「そこに自分が好きなものとかいつも思っていることを忍ばせれば、それがソングライティングだ」と、それらしいことを言った気がする。このセミナーに参加した方はプロトタイプの「太陽と満月」音源を聴いたことがあるかもしれない。

それから大サビを付け足した「太陽と満月」はライブの定番曲となり、コード進行が簡単なこともあり共演者とのセッション曲としてよく演奏されるようになる。2014年3月の共演時、高野寛さんがこの歌に投げ入れたアルペジオがとても新鮮で忘れられず、1年後の今年もギターソロに唸った。そしてステージでの《夢》の話から転じて今回高野さんにレコーディングでギターを弾いてもらうことが実現した、言わば夢の続きのセッション。その日の記録はここに記してあるが、優しい先輩からいろんなことを教わった日として僕の記憶に記録されるだろうな。高野さんが重ねた数本のギタートラックがこの曲の色合いを決定づけました。

ポチが一番お世話になったのはいつも留守を見てくれたイトケンさん。「ポチに捧げるようなイトケンさんらしいビートを」と託すと、生ドラムの躍動感と打ち込みの面白さとを兼ね添えた、今までにないようなドラムトラックを提供してくれた。ドラムを受け取ってすぐハックルベリーフィンたけ兄に借りたFenderジャズベースでひとり数時間格闘した真夜中、「やっぱりこの曲エビちゃんが弾いたほうがいいと思うんだ」と翌日に呼び出して海老沼崇史くんに屋台骨をまとめてもらったのでこの曲はライブでの雰囲気をありありと湛えている。僕はジャック・ジョンソンの気分でアコギとエレキを。真里さんには「曲について詳しく知らないセッションミュージシャンがふらっとやってきてコード譜だけを見て陽気に弾いたオルガン」をリクエストした。

結果、太陽の光が空気中の水分に乱反射するような、満月の光が海の底の水泡に映り込むような、そんなキラキラとした「太陽と満月」ができあがりました。そう、こういうふうになりたかった、というような。



yamada_the loved one_S 山田稔明/the loved one
 2015年6月19日発売(全国流通開始7月7日)
 GTHC-0007 定価2000円(税別)

 1.my favorite things
 2.太陽と満月
 3.ポチの子守唄
 4.些細なことのように
 5.small good things
 6.猫町オーケストラ(album mix)

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2015年06月04日

my favorite things(山田稔明『the loved one』全曲解説1)

7月7日に全国発売になる山田稔明『the loved one』収録曲についていろいろ書いてみたいと思います。まずオープニングトラックの「my favorite things」。ライブで数年演奏して形が整ったところでレコーディングする、というパターンが多かった近年のなかでは珍しく、これは今年に入って書いたできたての歌。しばらく作曲モードになかった僕でしたが、年頭の目標に「新しい曲のことを一日一回考える」というルールを作り、その勢いで1月1日にこの歌の最初のモチーフを書きました。

2月の下北沢leteで初めて演奏したときは「THE ONE I LOVE」という仮題で紹介されましたが、これはR.E.M.の代表曲から引用した曲名、そしてその頃の有力なアルバムタイトル案でもありました。2度目のライブ演奏時から「my favorite things」という曲名が定着し、これは当然「サウンド・オブ・ミュージック」の「私のお気に入り」の山田稔明版を標榜したものです。アルペジオの爪弾きで作られたフォークソングは(個人的なイギー・ポップ・ブームを経て)駆け出すようなモータウンビートが並走していくことになります。

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2月から3月にかけてデモを何パターンも作って悩みつくし、レコーディングはまずベーシックセッションが4月中旬に都内で行われました。メンバーは安宅浩司くん、佐々木真里さん、海老沼崇史くん、sugarbeansくん。sugarくんにそして自宅ポチスタジオでの安宅くんと膝をあわせてあれこれギターダビング。真里さんも自宅スタジオでウーリッツアーとオルガンをダビングしました。そしてひたすらコーラスの多重録音…。ミックスに一番時間がかかったのがこの曲だったかもしれませんが、齢40を越えてこんなにポップな曲を作り出せたことがとても嬉しいです。オープニングを飾るのに相応しい歌になりました。

再生ボタンを押してこの歌が流れてきたときにみんなどんなふうに思うかな、と今からわくわくします。



yamada_the loved one_S 山田稔明/the loved one
 2015年6月19日発売(全国流通開始7月7日)
 GTHC-0007 定価2000円(税別)

 1.my favorite things
 2.太陽と満月
 3.ポチの子守唄
 4.些細なことのように
 5.small good things
 6.猫町オーケストラ(album mix)

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2015年06月03日

山田稔明『the loved one』内容詳細公開!(ジャケット画像あり)

4月1日にリリースが発表された『the loved one』は曲名と曲順、仮のアートワークが示されたまま時が過ぎ、季節は春を越えてもう梅雨。いよいよ山田稔明『新しい青の時代』以来2年ぶりの新録アルバムの内容を詳しくお伝えしたいと思います(デッドラインぎりぎりまで作業してしまい各所にご迷惑おかけしております)。まずはパッケージ、イラストレーター大塚いちお氏の手によるジャケットもここに公開します。今回のCDも紙ジャケット仕様の装丁になります。大塚いちおさんにリクエストしたのはカラフルで心躍るような表紙。愛猫ポチの一周忌にあわせて捧げられた作品ですが、しんみりとしたものや、意味深でシリアスなものにはしたくなかったのです。裏ジャケもブックレットも盤面もすべてが愛しいのです。早く皆さんに手にしてほしいなあと思います。

yamada_the loved one_S

そして改めて楽曲と曲順。

山田稔明/the loved one
2015年6月19日発売(全国流通開始7月7日)
GTHC-0007 定価2000円(税別)

1.my favorite things
2.太陽と満月
3.ポチの子守唄
4.些細なことのように
5.small good things
6.猫町オーケストラ(album mix)


これしかない、という流れと楽曲になりました。日が落ちてまた新しい朝が来るような。「my favorite things」は一番最近書かれた歌、「太陽と満月」は2013年に初演、「些細なことのように」は2010年に書かれた歌。「small good things」も古い歌ですがポチが亡くなったあとに歌詞を書きなおして2015年の歌になりました。「猫町オーケストラ」は4月にリリースされたVA『猫と音楽の休日』で初出した歌ですが、このアルバムのためにミックスを変えています。「ポチの子守唄」はまさに去年の今頃、ポチの看病をしながら口ずさんだメロディです。トータル・プロデュースは山田稔明、僕自身。しかしアルバム制作開始時からずっと、すべての楽曲のミックスを担当していただいたエンジニアの手塚雅夫さんとキーボードの佐々木真里さんとともにアレンジや録り方など幾度となくミーティングを重ねたので、お二人は共同プロデューサーと言えます。

レコーディングは4月から行われ、前述の真里さん、イトケンさん、安宅浩司くん、海老沼崇史くん、上野洋くん、sugarbeans佐藤くん、立花綾香、といつもステージを手伝ってくれる心強い面々との作業になりました(「猫町オーケストラ」には猫友だちのkainatsuちゃんがコーラスを吹き込んでくれました)。あわせてここ数年の親交から客演が実現した高野寛さん(“夢”のようでした!)、まさに愛猫同士が引き合って結びつけてくれた近藤研二さんのアレンジによる楽曲、と非常にバラエティに富んだ内容になりました。うちでレコーディングしたら近藤さんのお宅におじゃましてコーヒーブレイク(と猫)というのがこの春定番の風景になりしびれるタイトなスケジュールにも笑顔が絶えず、近藤モイくんにも大きな感謝の気持ちを贈らなければなりません。ポチ実にもたくさんの来客で苦労かけたね。

収録楽曲それぞれについてはこれからレコ発ライブまでに1曲ずつ紹介していけたらと思います。語るべきことがたくさんあるのでら、またハンドメイドジン「MONOLOG」に詳細なレコーディング日記を綴るつもりです。たくさんの音楽家の才能が今まで作ったことのないようなレコードを具現化させてくれました。ちょうど同じ時期に新作レコーディングを行っていた高橋徹也さんも同じようなことを語っていましたが、自分が書いた曲を書いた僕本人よりも深く咀嚼し理解して、上手に演奏してくれる仲間の姿を見て感動しました。


参加ミュージシャン:安宅浩司(guitars, pedal steel, mandolin on M-1、M-2、M-3、M-4、M-5)、イトケン(drums, percussions on M-2、M-3)、上野洋(flute on M-3)、海老沼崇史(bass on M-1、M-2、M-3、M-4、M-5)、kainatsu(chorus on M-6)、近藤研二(arrangement, guitar, organ on M-3)、佐々木真里(arrangement, keyboards on M-1、M-2、M-4、M-5)、sugarbeans(drums on M-1、M-4、M-5 keyboards on M-6)、高野寛(guitars on M-2)、立花綾香(chorus on M-5)(50音順)

all songs written, produced by 山田稔明


次回は「M-1 my favorite things」についての解説を。

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